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月を知ろう

月に関する研究発表
パネルディスカッション第3部「月旅行」


No. 14 2001年04月15日【日】19:31 今村 雄一郎
まず、松浦さんの発言にコメントを付けていきたいと思います。
>  「自分の判断で競争を行い、自分で責任を取る」システムですね。
> 栄光も悲惨も自分がかぶってこそ、
> 面白く新天地に乗り出せるというものでしょう。

こういうスタイルはあまり、日本にはないですが、もし、優秀な人材がいるのであれば、これほど、有効な手段はないではないでしょうか。
ものごとというのは、競い合って、大きく進歩するものだと思います。これまでの宇宙開発もここまでやってこれたのは、米ソの競争や日本のアメリカに対する挑戦などなど、ではないでしょうか。

これからの時代、国際協力が進むであろう中、どのような方法で、競争原理を使うかというと企業間競争、そして個人やそのプロジェクトチームでの競争になるのではないでしょうか。
その意味では、松浦さんの手段は様々に転用でき、すばらしいアイデアだと思います。

そして、強い求心力をもった政治家と、その人を支える国民が一致団結することで、日本としても大きく前進できるでしょうね。
大隈や、J・F・ケネディのような人物はもう、日本には生まれないのでしょうか・・・。
だいたい、宇宙開発が非常に多くのお金を使っているという指摘がありますが、いくつかの公共土木事業を中止すれば、簡単にその予算ぐらいは出るわけですし、駐日アメリカ軍への思いやり予算のほうが、日本の宇宙開発の予算より、余裕で多いわけですし。
何にお金を使うかだけなんですけどねえ。

>  アポロ11号の着陸地点に降ろして
> アームストロング船長の足跡を竹箒で消しちまえってわけです。
> 星条旗を引っこ抜ければなお良し。

アメリカに協調する政策ばかりが必要なわけではないですよね。
どのように、戦いながら、時には、協調しながら、そして、各国スキルアップをしていくか。日本だけではないでしょうか。盲目的に対米協調主義に走っているのは。

最後に自分の考えをまとめますと、
月開発は、もう十分行える時期にきています。日本一国でも十分可能なはずです。

では、どのように進めていくのか。
国民一丸になって、推し進めていければ、それでいいのです。
当時のケネディー大統領が全米を興奮の渦に巻き込んだように。

うまくやれば、手順を踏んで、流れをつくりさえすれば、仮に、NASDAが対月プロジェクトを発表したら、国内が話題騒然になるかもしれません。

いい成果をだすには競争原理を最大限に生かせばいいわけで、政府が民間への援助を行ってもいいでしょう。逆にひとつに機関に様々な企業の総力を結集してもいいですね。そして、国民にノリがあれば、きっと、すばらしい月旅行へと向かっていけるとおもいます。

みなさんの「夢」とパワーでぜひ、月旅行を実現へと大きく進めていきたいですね。
時代は21世紀。「夢」が現実になる世紀ではないでしょうか!?
そう思いながら、いち国民として、これからの宇宙開発を見守っていきたいと思います。

Some men see things as they are and say, why.
I dream things that never were and say, why not.  R.F.Kennedy


「ある人々は現実を見て言う。なぜだ、と。
私は不可能な夢を見る。そして言う。やってみようと ロバート・F・ケネディー」

訳:落合信彦

No. 15 2001年04月15日【日】23:17 松浦 晋也
 松浦です。これが最後の発言となりますね。

>> こういうスタイルはあまり、日本にはないですが、
>> もし、優秀な人材がいるのであれば、これほど、
>> 有効な手段はないではないでしょうか。

 人材はいます。私の知る限りでも数人。あるいは「こいつ野放図に育てたら楽しそうだぞ」という若手も。

 プロジェクトリーダーの見分け方は、「手が動くこと」です。これは「手からの発想ができる」と言ってもいいかもしれません。

 日常生活で、例えば自転車のタイヤがパンクした、というような時に、すぐに自転車屋に持っていかずに、「まてよ、自分で直してみよう」と考えて、泥沼にはまったりもするけれども、でも結果としたパンク修復技術を会得する――そういうタイプです。

 あるいは、自ら半田付けをしてゲルマニウムラジオを作った経験がある、さらに言えば高感度をめざしで自分でコイルを巻いたことがあるならなお良いですね。

 ルアーフィッシングのルアーを自分で作る奴でもいい。石と見たら叩き割って破断面を観察せずにはおれない博物学指向でもいい、研究者ならば、ない実験装置は発注せずに自分で作ってしまうとか、アリモノは改造してしまうとか――とにかく実世界と「手」でもって関わる指向と能力を持つという条件を満たした人間から選抜していけば、必ず素晴らしい人材を見つけられるはずです。

 「自分は事務屋だから」といって書類を右左している者は真っ先に落ちますね。そういう人材は経理担当につければいいのです。

 時々日本人はダメという人がいますが、私はそうは思いません。今の日本の中枢、永田町と霞が関と一部企業がダメなだけで。
 これらの場所も個人で見ていくと能力のある人はいるのです。つまりダメになっているのは、永田町という場であり霞が関という組織であり、一部の企業文化であり、それらの場の毒気に当てられてしまった人達なのです。

 その根底にあるのは「今日を大過なく過ごせば明日がある」という発想だと思っています。よく官僚が言う「人事のローテーション」(実態は天下り椅子の回しっこ)というのは典型ですね。「なにもしなくても明日がある」と思っているからこそ、天下りを考えるし、天下りは指定席になるし、椅子を仲間内で回しっこしますし。

 冗談じゃない。今日を自分の意志と決断で努力しなければ明日なんかありっこないのです。バブル崩壊で、みんな気が付いたはずなのですが。

 中には官僚の発想で「明日のこの部署を存続させるため、できてもできなくてもいいから組織防衛のための適当な月探査計画を打ち出すんだ」とか言う人も出てくるかもしれない。ここらへん油断ならないところですね。

 責任を取らない月探査ならいりません。

 自分の意志と決断で努力した結果の月探査でないと、自分たちの内側に意欲も湧きませんし力もでませんし、ましてや成功などおぼつかないでしょう。

 未知の世界に出ていくんだから、能力の限りを使い切って、それでも出てくるトラブルを乗り越えて、初めて成功するのです。場合によっちゃ「船は帰ってきたがマゼランはフィリピンで死んだ」という結果も覚悟する必要があるのです。ましてや有人でやる、ということは最後は命を懸けるということに他なりません。

 実はシャトルに日本人飛行士を乗せた時点で、もうすでにNASDAは命を懸けているのですけれどもね。チャレンジャー事故を忘れてはいけません。とはいえ、アメリカのハードで命を失うのと、日本人がボルトを締めた独自ハードで命を失うのは、責任に自ずと大きな差ができます。そのボルトを締める責任に耐えるだけのモチベーションを、誰もが持つ必要があります。

 だから参加メンバーの内的モチベーションをかき立てることは、成功のためには絶対に必要です。

 その意味で人間のやる気を、ほとんど組織的としか言いようのないやり方で殺いでいく霞が関的方法論(予算査定のアルゴリズム)は、なんとしても突き崩す必要があるでしょう。今年予算がこれだけだから来年はこれだけね――実績がないからお金つけられないの――あー政治家の先生が言ったからこんだけつけちゃった――この思考では話にならないでしょう。

 アルゴリズムに従うだけなら人工無能にもできます。

>> 駐日アメリカ軍への思いやり予算のほうが、日本の宇宙開発の予算より、
>> 余裕で多いわけですし。

 私自身は、国際宇宙ステーションの予算は防衛費と同じ「思いやり予算」あるいは湾岸戦争時の支出(誰も感謝しないというオチまでついた)のような「国際貢献費」として宇宙開発予算とは別枠化すべきと思っています。

 栄光も悲惨も自分でかぶるという自己責任原則を徹底するなら、あくまで自分(ここでは日本というのと同義ですが)がイニシアチブをとってこその「宇宙開発予算」でしょう。

 国際宇宙ステーション最大の意義は、国際協調のシンボルとしての大規模プロジェクトということで、最大の問題は責任も成果もアメリカのものになってしまい、日本は無責任(これは責任のとりようがないということ。例えば安全基準などはアメリカ任せにならざるをえない。結果として技術的蓄積が得られない)無成果(これはこれからのがんばり次第ですが)になりかねないということですから。

 で、年間700億円とも言われる日本モジュール運営費の分は月開発に振り向ける…と。年間700億円といったらすごいお金ですよ。アポロ計画から見れば小さい額ですが、アポロ以降のコンピューターや材料の進歩を活かせば、相当なことができるでしょう。

>> みなさんの「夢」とパワーでぜひ、月旅行を実現へと大きく進めて
>>いきたいですね。

 あ、これ違います。「夢」とパワーで月旅行を目指すのは今村さんも含めた僕ら全員です。僕ら全員ができることをしていくのが最初の一歩です。他人がやってくれるわけじゃありません。

 待っていたら月で温泉に入れるようには絶対なりません。

 月で温泉に入りたいと思いつつ、まず手始めに自転車のパンクを直すところからでも始めないと。

 …落ちたかな。あまりオチになってないような気がしますが…

 こういう精神、僕らはずっと持ち続けていたはずんです。あの「スーダラ節」のクレージーキャッツですら「大冒険」で歌っていたでしょ。

 石油掘り当て大金持ちに
 やってできないことはない
 まず手始めに
 ちょっと百円貸してくれ


って。

 あくまで主体は僕らにあるのです。ということで、最後の発言とします。ありがとうございました。

松浦

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