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月を知ろう

月に関する研究発表
パネルディスカッション第3部「月旅行」


No. 11 2001年04月11日【水】22:05 園山 実
コーディネーターの園山です。

会場の方から月旅行の夢にかかわる以下の発言をいただきました。

地球と同じように月も地点によって楽しみ方が異なるという大変興味深いご発言です。そういう観点で月を見つめ直してみると、「既存の月面データやSELENEのカメラデータなどを使って、観光地になりそうなところをあらかじめ探し出しておく」という課題も浮き彫りになってきます。

夢を現実にするための課題にまで言及していただき、本当にありがとうございます。

> パネルディスカッションの内容、楽しく拝見しております。
> 月に旅行に行く! 確かに、楽しそうですね。
> 楽しい旅行といえば、観光旅行になります。
> 月に行く動機として、資源採掘や科学探査なども重要だと思いますが、
> どこかの時点ではやはり、我々でも行けるような観光旅行などを
> 考えなければならないと思います。
> では、月でどのような地点が観光地域になるかを、ざっと考えてみました。
>
> (1) 遺跡
> アポロ宇宙船の着陸場所や、旧ソ連のルナなど。
> 主に表側になるかと思います。
> また、ロケットや司令船(だったか)が登記されて、
> それが月面に衝突してできたクレーターや、
> ルナープロスペクター(や、将来的にはルナーA)の衝突跡なども、
> 遺跡になるでしょうね。
>
> (2) 自然景観
> 雄大なクレーターや月面の山脈などは、
> 確かに人をひきつけると思います。
> しかし、地面に降りたときのことを考えると、
> あまりに大きなクレーターは、
> かえって景色が単調過ぎて人気がないかもしれません。
> そこそこの大きさのクレーター(せいぜい、直径10kmくらいとか)
> なら、人気が出るかもしれません。
> また、溶岩流や溶岩ドームなどの起伏に富んだ地形や、
> 月面で最も低いところや最も高い山なども
> 人気のスポットになると思います。
>
> (3) 地球をみる
> 地球を眺めるところとして月面で特に決まったところはないと思います。
> もちろん、裏側だと厳しいかもしれませんが。
> ただ、たとえば「地球と何か」を一緒に映し込んだり、
> 地球を長くみられるところなどがもしあるとすれば、
> そういった地点は絶好の観光スポットになると思います。
> 同じ意味で、
> たとえば月の裏側で天文台などを作って星空をみるという場合でも、
> 何らかの適したスポットなどがあるのかもしれません。
>
> 「観光資源」という言い方もありますが、観光の目的地についても、
> 積極的に開発していく必要があると思います。
> また、既存の月面データやSELENEのカメラデータなどを使って、
> 観光地になりそうなところをあらかじめ探し出しておく、
> なんていうこともできるのではないでしょうか。

No. 12 2001年04月13日【金】11:33 今村 雄一郎
月開発は、以前松浦さんが発言されたように、どのようなプロセスをもって、行うかが非常に大切になってくるのではないでしょうか。

アンケートでも非常にたくさんの方々が月へ行きたいと望まれ、またNASAやNASDAでも月基地構想が発表されているにもかかわらず、いまだこれらは夢物語です。
この状況を打破するのが、最初でしょう。

まず、第一に我々人類は月に一度降り立っていると言うことを再認識し、月をより、身近に感じるべきではないでしょうか。

そのひとつの手段として、ローバーレースはおもしろいアイデアだと思います。また、月にカメラを設置して24時間インターネットで月の画像をダウンロードできるというのもいいかもしれません。

このような「夢」の力と、また、多くの人がそれを身近に感じることで、月への第一歩を踏みしめられるのだと思います。

そして、次のステップとして、よりオープンな形で月開発ミッションを開始すべきでしょう。
具体的に、どのようなステップや形式をとるのか。そして、どのような規模のものをみんなが望んでいるのか。
このような場では、今回のようなパネルディスカッションが意味をなしてくるかもしれません。

No. 13 2001年04月14日【土】15:02 松浦 晋也
夢を見ることは大切だ、という発言をしたので。その次のことをちょっと。

以下、かなりトバしますので、ついてきてくださいね。

 夢は夢です。実現してなんぼです。夢が貴重なのは、それが行動を産み、最後には成果となって、また新しい夢の源泉となるからなんですね。全ての始まり。

 逆に言えば行動に結びつかない夢は、「夢」ですらない。

 行動には金も時間も技術も手練手管も必要です。敵も出てきます。場合によっちゃ他人の夢を踏みつぶす必要も出てくるかも知れない。

 さあどうする。

 最初の南極越冬隊を指揮した西堀栄三郎が、日本人として最初に南極に行った白瀬矗について以下のようなエピソードを書き残しています。
 白瀬は、日露戦争後、南極に行こうとしたけれども、誰も理解せずお金も出さなかったのです。その時彼を助けたのは大隈重信でした。
 西堀は、夢の実現には白瀬のような先導者だけではダメで、大隈のような「大物」が必要だと指摘します。ドンっと背中を叩いて押し出す役目の人ですね。

 大隈は白瀬が出発するにあたって「赤道の向こうに行くのだからさぞや暑いだろう。気を付けて」と言ったそうです。西堀は「大物はそれぐらいでいいのだ」と言っています。人物を見込んだら細かいことは構わないということでしょうか。

 西堀自身は、自身が白瀬であり大隈でもあるという希有の人物でしたが、その彼の分析は、月を目指す我々にとってかなり示唆に富んでいると思います。

 白瀬だけではダメで大隈も必要なのです。自分は白瀬になれないと思っても、大隈になることで、月への道を開くこともできるのです。

 だいたい新しいことは、やる理由よりもやらない理由のほうがたくさんつきますし、やらない理由のほうが説得力があるものです。その時に委細構わず「行きなさい」と背中を押せる人間でありたいとは思いませんか。

 もっとも中身のある押し方をしなくてはいけません。白瀬の場合も三宅雪嶺(新聞主筆)とか、押川春浪(小説家)とかのシンパはいましたが、この連中はあおるだけあおってオシマイでした。これはかなり最低に近いと思います。

 今村さんがおっしゃるように、今の日本には月に行きたいという意志はあります。おそらく白瀬もいるでしょう。

 さあ、どうやってドンっと背中を押してやるべきか。

 一つ具体的提案をするなら、NASDAでもISASでもいいですから、プロジェクト・リーダーを3人ほど選んで、それぞれに3年、50億ぐらいをなんの制限も加えずに使わせる、というのはどうでしょう。打ち上げ費用は別としてまとめてH-IIAで打ち上げることにします。リーダーには、人事権をあたえ、必要な人材は自由に引き抜けるようにします。同時に経理担当者と広報担当者を一人ずつ付けます。

 3つの衛星なりペイロードなりに一切制限も目的も付けません。すべてはプロジェクト・リーダーの意志次第です。探査目的などに、バッティングがあってもかまいません。多少のバッティングは冗長性を上げるぐらいに考えればよいでしょう。

 50億じゃなにもできない?だから経理担当をつけるのです。安く済ませ、成果を最大にするためです。さらに広報を通じて一般から寄付をつのるのもアリにします。広報戦略がミッションの成否に関係してくるわけです。

 ミッション終了後、徹底した評価を行います。評価には専門家だけではなく、マスコミ、一般からの評価も加えます。

 もっとも成果を上げたと認定されたリーダーは次の世代の大型探査を担当します。次点は、再起のチャンスを与える意味で次世代の探査機のサブペイロードを担当します。

 最下位のリーダーは…人生ゲームよろしく「貧乏農場」に行ってもらうのが一番いいのですが、というのはともかく、評価で一番欠けているとされた要素の研修をさせるというのはどうでしょう。例えば予算オーバーを起こしたなら経理担当の職場に、広報戦略が失敗したなら広報担当に、機器が壊れたならばその壊れた機器を作ったメーカーに一工員として出向とか。

 これは一回で終わらせるのではなく、何回も実施します。3年で1ターンですが2年おきに次のターンをスタートさせて、重複して実施してもいいでしょう。その過程で人を育てるという意味もあります。

 「自分の判断で競争を行い、自分で責任を取る」システムですね。栄光も悲惨も自分がかぶってこそ、面白く新天地に乗り出せるというものでしょう。間違っても上司は口を出してはいけません。「あいつが口をはさんだせいでミッションは失敗した」という言い訳を与えることになりますから。
 それに、この条件で競うというのは、かなり楽だと思います。F1などではスポンサー集めも自分でやるのですから。

 おそらく「そんな予算は財務省が認めない」という意見がでるでしょう。予算折衝の現場を知っている人ほどそういうでしょうね。でも、そこを乗り越えてこそドンっと背中を押せるわけですね。

 予算要求項目のもっともらしさといかがわしさは、皆さん良くご存じのところでしょう。「国民の税金だからいい加減な支出はできない」といいつつ、既得権益に基づいたいい加減な支出をしているのが今の財務省ですから。
 予算要求には「赤道の向こうは暑いのでクーラーを買います」とか書いて押し通せばいいのです。それができるのが「大物」なんでしょうね。そして自分がそんな大物になることでも、月への道を開くことができるのです。

 さて月になにを送るか。

 宇宙作家クラブのメンバーから出た「ホンダのASIMOの有効な利用法」として、「竹箒と共に月に送る」というのがありました。

 アポロ11号の着陸地点に降ろしてアームストロング船長の足跡を竹箒で消しちまえってわけです。星条旗を引っこ抜ければなお良し。

 熊手を持っていって、着陸船の土台をも含めて風景を見立てて石庭を作るのもいいでしょう。

「そんなことしてアメリカを刺激しないか」
「いいのだ、今のアメリカにソレぐらいの刺激を与えたほうが宇宙開発も進むってもんだろ」

 私としては、やはりレースをやりたいです。月赤道付近での昼夜境界線の移動速度は約時速15km。山あり谷ありだけれども、なんとはなしに達成できそうな速度に思えます。

 温度的に機械設計が楽になる月の朝にローバーを降ろして、太陽と闇から逃げるように一ヶ月で月を一周するというのは、かなり魅力的ですよね。

松浦

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