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月を知ろう

月に関する研究発表
パネルディスカッション第3部「月旅行」


No. 16 2001年04月16日【月】10:26 パトリック・コリンズ
月面が観光地になることは夢だけではなくて、実現することができます。30年前に月面旅行が無事にできたので、月面旅行ビジネスを設立すれための問題点が技術ではなくて、コスト・ダウンだけでしょう。

しかし、非常に残念ですが、世界中の政府の宇宙局が毎年3兆円を使っているのに航空産業のような軌道までの宇宙旅行サービスを実現するために使う予算はゼロです。宇宙局の責任者が「商業化」という言葉を使うのに彼らの宇宙活動から生まれる新しいビジネスがありません。その代わりに、宇宙局の赤字ばかりの使い捨てロケットや誰も利用したくない宇宙ステーションやすでに過剰供給の観測衛星や経済的な価値がない火星探査の計画などの活動の利潤率はマイナス100%に近いです。

1998年にNasaやAIAAや経団連などが宇宙活動の商業化として宇宙旅行が一番大きいビジネスになると述べている報告を出版していたがそれを実現するために何もしていなくて、「宇宙旅行拒否政策」を実行しています。

しかし、毎年に使われている3兆円の数パーセントだけを本気で乗客用再使用型ロケットの開発に使えば、約10年後で軌道上旅行サービスが始まって、今後20年ぐらいで月面旅行サービスも可能になるでしょう。

日本経済の50年ぶりに大変な不況を「新産業不足不況」と呼べばよいでしょうが政府の宇宙活動が経済の回復に貢献していません。

宇宙旅行の可能性がだんだん米航空局のFAAに受け入れられているので、宇宙乗客用安全基準などをすでに準備しています。宇宙産業が適当に改革して、航空産業と協力すれば軌道までの宇宙旅行も月面旅行も実現することができます。

そうしたら、20世紀中ゼロから毎年約100兆円まで成長してきた航空産業のように、宇宙旅行産業は21世紀中に何千万人の価値が高い仕事になって、社会の資産を多いに増やす。

No. 17 2001年04月16日【月】14:09 園山 実
コーディネーターの園山です。

パネラーの皆様、沢山の熱いお言葉をいただき、ありがとうございました。

「月旅行の夢を現実に近づけるために必要なこと」という大変難しいテーマでしたが、こうして皆様と語っているだけでも夢が現実に近づいてくるような気がしました。

今村さんや松浦さんのお話を伺っていると、「夢」という言葉を使っていたこと自体、少し違っていたかもしれないと感じました。
「月旅行」は「夢」ではなく、私達の大きな「目標」と捉えた方がしっくりくるような気が今はしています。

大きな「目標」に向けて必要なことについて、まずは皆様から挙げていただいたキーワードを下に掲げてみます。

  • 競争と協調(国家、組織、個人)
  • お金
  • 国民の団結
  • 指導力のある(器の大きい)人物
  • まずは手を動かすこと
皆様からのご発言にありました通り、これらのキーワードは一見夢のように思える大きな目標に向かっていくためにはどれも必要不可欠なものだと思います。そして、これらの大前提になるのはやはり「気持ち」であり、夢を思い描く気持ちのみならず、「やってみよう」と思う気持ちがこれらの全ての要素を支えています。
まず、競争の根底にあるのは「やってやろう」という気持ちであり、その気持ちをお互いに尊重し合うことが協調に繋がるのだと思います。相手に頼ることや他人任せにすることが協調ではないことは松浦さんのご発言にもあった通りです。
そして、お金を出すのにも気持ちは不可欠です。気持ちが一つになって団結は生まれるものですし、指導力のある人物が世論により創り出される面も多分にあると思います。
まずは手を動かすというのも当然気持ちがなくては始まりません。

では、どうすればこの「気持ち」が養われるのでしょうか?

先日、「月探査プロジェクト」をテーマとして20代の社会人に講義をする機会に恵まれ、そのイントロで3つの質問をしました。
問1)日本の衛星が月に行ったことがあるか?
問2)LUNAR-Aとは?
問3)SELENEとは?

問1については私の講義に参加した約25名全員が「ない」と答えました。
問2は誰一人として答えられませんでした。
問3はわずか1名が「知っている」として、その概要を説明してくれました。

宇宙を専門にした人は恐らくいなかったと思いますが、その大半は理科系の大学の出身者でした。

本当に悲しい結果です。

しかしこれが紛れもない現実なのです。我々がエポックメイキングだと信じ込んでいる国家の宇宙開発プロジェクトの多くは若い人に知られていないのです。この問題を若年層の不勉強のせいにしたのでは何も始まりません。私はこの原因を「知られていない」のではなく、むしろ「知らせていない」からだと認識すべきだと思っています。

私は常々、宇宙開発プロジェクトの広報に、もっとお金をかけてほしいと願っています。「ひてん」が月に行っても、「はごろも」を分離しても、その事実が国民に浸透していなければ、その波及効果は極めて小さなものでしかありません。
数十億から数百億のお金を投じてその成果を堪能できるのがプロジェクト関係者や科学者だけというのはあまりに勿体ない話です。
月を見上げたとき、フルネリウスに日本の衛星が落っこちていることを知っているか知らないかでは、そこに生じる「気持ち」に天と地ほどの差があると思うのです。
確かに、アポロから30年が経過した今日、月に行くという行動そのものは、もはや驚くべきことではありません。また、LUNAR-AやSELENEの本当の凄さを知るためには、センサや惑星科学についてのある程度の知識が必要になることも事実です。
それでも、それをなるべく易しく国民に周知していくこと、あるいは、国民が広く興味を持てるもの(例えば、先進的なデザインや月の映像をリアルタイムに送信する装置など)を積極的に取り込んでいくことが求められると思います。その費用はプロジェクトにかかる費用とは別にしっかり確保すべきだと思います。それは、プロジェクトの成果を国民が等しく享受するためになくてはならないお金なのです。

インターネットが普及し、興味をもてば何でも自分で調べられる時代であることは確かです。しかしながら、情報が氾濫している今日、「興味をもってもらう」ことそのものがとても難しくなってきていることもまた事実です。
「興味を持ってもらう」ためには、人間のエモーショナルな部分に働きかける要素も必要だと思います。限られたリソースの中で無駄を出さないことが最優先される発想も重要ですが、一見無駄と思えるものに、人間の気持ちが込められることも多いはずで、それは決して本当の無駄ではないのです。
そういう意味で、ポータルサイトでも紹介されているFTBのカラーリングなどはとてもアグレッシブな取り組みだと思います。同様に、筑波大学の学生さんたちによる仮想月開発プロジェクトの作品も大変興味深いものであり、個々の作品にちりばめられている情緒的要素に学べる点も少なくありません。
銀河鉄道999が汽車であることに妙に納得してしまった感覚は、まさに私達の根底にある極めて感情的な部分が将来の夢に常に融合していることの現れだと思います。
そういう意味で、将来の月探査や月開発といったプロジェクトではほんの少しでもこの「エモーショナルな部分」を刺激する何かがあればと願っています。

宇宙開発、特に、月や惑星といったフロンティアを対象としたプロジェクトの推進の原動力は人間の感情に他ならないというのが、このパネルディスカッションに参加していただいた方々の共通の感覚といえそうです。
失敗で国民が悔しがるくらいの気持ちが醸成されないことには、例えそれが成功しても、国民にとっての本当の成功とは言えないのかもしれません。

このパネルディスカッションを訪れて下さった皆様がほんの少しでも月への気持ちを高めてくれたとしたら、私達にとってこれ程嬉しいことはありません。

以上、まとめになっていないところもありますが、本パネルディスカッションはこれで終了とさせていただきたいと思います。
パネラーの皆様はもちろん、このパネルディスカッションを見守り、発言をして下さった会場の方々、本パネルディスカッションを支えて下さった関係者の方々に心より御礼を申し上げたいと思います。

本当にありがとうございました。

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