春山@NASDA 月研です。
月の極の氷について、2,3コメントしたいと思います。
● 極の氷は水素?
最近出た論文に、
「月の極には、氷があるのではなく、化学的に捕獲された水素がある(濃集している)のであろう」
というものがあります。
(L.V. Starukhina and Y.G. Shkuratov, ICARUS, 585-587, 2000)
永久陰の水素は、太陽風が直接吹き付け(その後移動して永久陰にとらえられ)たものではなく、月が地球の磁気圏の反太陽側に入ったときに、太陽風の水素粒子が、地球の磁力線を通して月の極に打ち込まれたものであろう、というものです。
個人的には、(研究をする者の立場としては)そこそこ説得有る話だな、と思います。
ただ、一方でそれだとつまらないなぁ、と思うこともありますが。
● SELENEで極の氷の存在は分かるのか。
SELENE搭載機器であるガンマ線分光計ですと、結論から言うと、水があるのか水素があるのかの判別は基本的に不可能です。
ガンマ線分光計は、化学結合をみるものではありません。「水素があれば水があると見て良かろう」と仮定して、水の存在を論じる、ということです。
ルナープロスペクターのガンマ線分光計より感度は格段によくなり様々な科学的成果が期待できますが、水の存在を断定できるかどうか、となると、仮定が必要です。
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