どうも.久々に登場の金森です.
月での水の利用方法につきましては,基本的には出村さんが書かれたようなことになりますね.
すなわち,大きく分けると生命維持と工業利用ということになります.
ただし,水をそのまま水として利用することもできるのですが,それをさらに電気分解して,酸素と水素の形にした方が,より使い勝手が良くなります.
ご存じのように,酸素は我々の呼吸に欠かせないものですし,またロケットの燃料(酸化剤)として利用することもできるからです.一方,水素はいわゆる還元剤として利用することができるので,例えば月の鉱物(酸化物)をこの水素で還元する(酸素を抜き出してしまう)ことによって,金属などを取り出すことができるようになります.
これをするためには,もちろん水を電気分解する装置が必要になりますが,使い勝手を考えるとこのような装置が月にあっても良いのではないかと思います....ともう一つ,ご存じの方も多いと思いますが,酸素,水素,水とくれば燃料電池を思い浮かべる人もいるでしょう.
このように,水があると様々なことができると期待されます.
...が,その水が月にあると嬉しいか,ということになると,単純には喜べないのです.
その理由の一つは,月で水を活用する段階では,水以外の物資もたくさん必要になるからです.例えば炭素や窒素,その他の精密部品(月で作れないようなもの)などがあります.地球から水を運ばなくて良いことが大きなメリットであることは間違いないのですが,水だけあれば良いということではないのです.いずれにしても多くの物資を地球から運ばなければならない状況は,大きく変わらないのではないかと思われます.
また,永久影にある非常に低温の氷をどのようにして取り出すか,という問題もあります.そのような低温下で,ある程度長期的に稼働する装置を作ることは,現状の技術では結構厳しいのではないかと思います.これに関しては,今後の開発に期待しましょう.
もう一つの理由は,月の極地で水が採れたとして,それを使いたい場所まで運ぶことも大変ですよね.例えば地上で考えると,北極で氷を採りそれを運んで来て日本で使うというような状況もあり得るだろうということです.地上では交通網も発達していますから,水を長距離運ぶことはそんなに難しいことではありませんが,月ではどうなんでしょう.もちろん,基地を極地に近いところに建設すれば良いのですが,そうとは限らないでしょうし...
以上のように資源利用の観点から考えると,実は月の極地に氷があったとしても,単純に「嬉しい!」とまでは喜べないのです(水を差すようですみません). |