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マーズ・エクスプレス トピックス

2004年7〜9月

マリネリス峡谷のオフィール谷 (2004年9月29日15:40)
エオス谷の平面画像 マリネリス峡谷北部にある、オフィール谷 (Ophir Chasma) の写真が送られてきました。この写真の中心部は経度288度、緯度は南緯4度。解像度は1ピクセルあたり36メートルとなります。
マリネリス峡谷は、火星でももっとも目立つ地形の1つです。これまで数多くの探査によって写真が撮影されてきましたが、その成因などについてはまだ謎が多く秘められた場所でもあります。長さが4000キロメートル、幅が最大240キロ、そして高さが最大6.5キロにも及ぶという大峡谷は、その峡谷そのものだけではなく、そこにつながっている支流の谷(Chasma)も含めた複雑な谷の系を構成しています。この谷の成因としては、水による浸食とテクトニック(地質学的)な要因の両方が考えられます。
写真は左が北となっています。左側(北側)にある鋭い崖は、5000メートルほどの高度差があります。崖があまりにも鋭いのと、堆積物がおそらくもろいためか、各所で崖崩れが起こっていて、その崩れた物質が最大70キロほど谷の方向(南側、つまり写真右側)へ流れているのが、写真からもわかります。
一方、南側(写真の右側)には、「カオス地形」という領域が広がっています。右側の、谷が開けてくらい物質が広がっている地域がそれです。このカオス地形は、多角形状の堆積物などで特徴づけられます。
カオス地形は火星でしばしばみられる地形ですが、その成因は、水が流れてできたものであると考えられています。洪水のような大量に一気に流れた水の流れにより形成されたと考えられていて、この谷でもおそらく、そのようなことが起きたのではないでしょうか。そのような現象としては、地下にあった水が一気に放出されたことによる土石流のような岩の流れが考えられます。
オフィール谷の立体画像左の写真は、オフィール谷を東から西へとみた方向で合成した立体写真です。平原地形と谷地形との対比がよく分かります。
ESAの記事へ (英語)

マリネリス峡谷のエオス谷 (2004年9月29日15:00)
※原文は8月30日付の記事です。

マリネリス峡谷の一部、エオス谷 (Eos Chasma) の写真が送られてきました。
エオス谷の平面画像 写真の中心部は、経度322度、緯度は南緯11度、解像度は1ピクセルあたり80メートルです。
一見すると浅い谷のようにみえますが、写真右側にみえる平原と下の谷部分は、5000メートルもの高度差があります。この「高度差がわかる」というのが、マーズ・エクスプレス搭載の高精度ステレオカメラの持ち味です。 画面左側が北になります。右側の高い方の平原にはいくつかの衝突クレーターの跡がみえます。東西(写真では上下)に亀裂が走っていて、恐らくは断層ではないかと思われます。谷のどちらの方向に水が流れたのか、この画面からだとなかなかはっきりとはわかりませんが、恐らくは南西方向(写真右下)から北東方向(写真左上)に向けて流れたのではないかと思われます。
この谷の北の方に行きますと、谷の中に鋭い峰がいくつかみえてきます。高さは1000メートルくらいあります。南の方(写真左下側)はどちらかというと平らな谷になっているのがわかります。特に、南側の谷の斜面には、少なくとも2段階の「段」があるのがわかります。何らかの段階的な浸食作用があったのでしょうか。

エオス谷の立体画像 上の画像をもとに、エオス谷の立体画像が作成されました。高度は4倍に強調されています。上で述べた鋭い峰や、2段の谷の斜面などが、こうしてみるとよく分かります。また他にも意外に深いというのがおわかりいただけるでしょう。
ESAの記事へ (英語)

タウマシア領域のソリス平原 (2004年9月27日15:00)
ソリス平原の3次元ステレオ画像 火星のタウマシア領域 (Thaumasia region) にあるソリス平原 (Solis Planum) の写真が公開されました。
このあたりは、位置としてはソリス平原の南側にあり、経度271度、緯度は南緯約33度になります。
手前にみえる断崖は、浸食されたクレーター跡です。このクレーターの直径は約53キロメートル、断崖の高さは800メートルほどになります。また、右手奥側にもより新しいクレーターがあるのがわかります。
ソリス平原の3次元ステレオ画像 左の写真は、上の写真を真上から捉えたもので、よりクレーターどうしの位置関係を把握しやすいかと思います。写真の中央左下側にあるクレーターが浸食されたクレーター、中央から右下側にある比較的新しい(崩れていない)クレーターが、上の写真にある右上のクレーターになります。
また、平面の写真の左上にみえる青白いものは、地表面近くのもやと思われます。
高くなっているところの左端には、円状の台地のような場所があります。さしわたしが約15キロのほどのこの台地は、古いクレーターが堆積物で埋まったもので、周囲が浸食されたあとも残ったと考えられます。
また、平面には3方向に走る地溝がみえます。かなり複雑な大地の力が、この地域にかかったことが伺えます。
ソリス平原の3次元ステレオ画像 左の写真は、上の写真の視点を逆にしてみてみたものです。新しいクレーターの脇を走る地溝の様子がよく分かります。
ESAの記事へ (英語)

火星に水蒸気とメタンの濃集域がみつかる (2004年9月24日12:50)
マーズ・エクスプレスに搭載された全球フーリエスペクトロメータ(PFS)のデータにより、火星の一部に水蒸気やメタンが集まった領域があり、それらが重なり合っていることがわかってきました。
火星の水蒸気の濃集度 PFSの観測によると、火星大気中の10〜15キロメートルほどの高さの領域には、水蒸気がよく混ざり、均一に分布している領域があるようです。ところが、表面に近いところの中には、水蒸気が他の地域に比べて2〜3倍も集まっている場所があるようです。これらは赤道に近いところで、アラビア平原、エリシウム平原、そしてアルカディア・メムノニア地域の3ヶ所です。
図は、水蒸気の濃度を示しています。青ほど少なく、緑色ほど多いのですが、赤道地域付近に黄色から緑色の領域があることがわかります。
また、PFSに寄る調査により、火星大気中にはメタンは一様に分布しておらず、何ヶ所かに集中していることがわかりました。観測チームによると、その集中域は、上の水蒸気が集まっている場所と重なっているそうです。こうしてみると、水蒸気とメタンの起源は同じで、地下の氷である可能性が出てきます。
なぜ水蒸気がこの領域に集中しているのか、またメタンと集中域が一致しているのか、これを説明する仮説として、地熱が考えられています。地下のやや深い部分で、地熱で暖められた氷やその他の成分がだんだん表面に上がってくるものの、表面が冷たいため、そこで凍ってしまうというものです。いずれにせよ、もう少し詳細な観測が待たれるところです。

オリンポス山を囲む急崖と地滑り跡 (2004年8月6日16:30)
オリンポス山を囲む急崖と地滑り跡 火星最大の火山、いや太陽系最大の火山といってよい、オリンポス山の写真です。
オリンポス山は、そのまわりに急な崖があります。今回の写真は、その山を取り囲む急な崖を立体写真で撮影したものです。撮影場所はオリンポス山西側の山腹にあたり、解像度は1ピクセルあたり約25メートルとなります。
この急な崖の高さは実に7000メートルにものぼります。ちなみに、オリンポス山自体の高さは26000メートルという、想像を絶する高さです。
この崖の西側にある平原には、白い点のような模様が広がっています。これもまた、以前のトピックスでご紹介した「オーレオール」(aureole)と呼ばれる地形でして、何かが堆積した跡のようにみえます。
オリンポス山全景 ちなみに、こちらの写真は、マーズ・グローバル・サーベイヤに搭載されたレーザ高度計(MOLA)によるデータから合成された、火星のオリンポス山全体の写真です。急な崖で山全体が囲まれている様子がよく分かります。
よくみると、山の周辺に、ちょうど花びらのように山のような地形がみえますが、これがまさにオーレーオールです。
この成因についてはいろいろな説がありますが、最も有力な説としては地滑りが考えられています。また、氷河によってものが運ばれたような動きもみえることから、氷河の影響もあったと考えられています。いずれにしていもいまだ結論は出ていません。
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火星のメラス谷の立体写真 (2004年8月6日16:00)
メラス谷 以前のトピックスでもご紹介しました、マリネリス峡谷の南側にあるメラス谷 (Melas Chasma) ですが、今度は別角度から撮影した立体写真が公開されました。
解像度は1ピクセルあたり約30メートルで、場所としてはメラス谷の南端部分にあたります。南側には高さ500メートルにも達する急ながけもあり、そこから広がる盆地上の地形の先には、今度は山脈が広がっています。
その山腹には地層のようなものもみえます。特に明るい物質は、何らかの堆積物の可能性がありますが、どのようなものなのかはわかっていません。
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底に割れ目を持つクレーター (2004年7月28日15:50)
底に割れ目を持つクレーター 左の写真は、マーズ・エクスプレスに搭載された高精度ステレオカメラが今年の1月に撮影した、マリネリス峡谷の近くにあるクレーターの写真です。解像度は1ピクセルあたり12メートルと、相当高いものです。
峡谷の北側にあるこのクレーターは直径が27.5キロメートル。深さは800メートルほどと推定されています。どうしてこのように底に割れ目が走っているのかはわかりませんが、こういった割れ目はよく、溶岩が冷えるときや粘土が乾いていくとき、あるいは凍った地面などでみることができます。氷、あるいは火山活動などの作用に、何らかの関係があるのかも知れません。
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火星の風食地形 (2004年7月24日19:30)
火星の風食地形 まるで大きな鋤が火星の大地を引きずったかのように、平行に伸びる溝。これは実は、風によってできた地形なのです。
この地形は、風による浸食地形(風食地形)で、特に「ヤルダン地形」(Yardangs)と呼ばれます。地球上でも、砂漠地域などでみることができる地形です。
この地形が撮影された場所はオリンポス山の近くで、写真の解像度は1ピクセルあたり約20メートルになります。
ゆるく積もった砂が風によって吹き飛ばされて、地面の岩などを削ることによって、このような地形が生じます。風が常に同じような方向に吹き続ければ、その方向に沿って浸食が進むことになります。この平行な溝は、このようにして生じたと思われています。
写真の中には浸食を受けていない地域がありますが、これは、風の力でも浸食することができないほど固い岩が露出している地域だと考えられます。
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ヘラス盆地北縁の写真 (2004年7月24日19:20)
ヘラス盆地北縁 火星でもっとも大きな盆地であるヘラス盆地 (Hellas Basin) の北側の縁の写真が送られてきました。この写真の解像度は1ピクセルあたり約18メートルです。
ヘラス盆地は火星の南半球にあり、直径はおよそ2300キロにも及びます。衝突クレーターと考えられていますが、おそらく太陽系でも最大級の衝突クレーターといってよいでしょう。
この写真では、衝突クレーターの縁が、北西方向に走る窪地によってあたかも切り裂かれているようにみえます。また、いくつか小さなクレーターなどもみてとれます。
この、北西方向に伸びる細長い窪地は、おそらく風による浸食作用で作られたものと考えられますが、水による浸食作用でできたと思われるような地形もみられます。
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マリネリス峡谷内のメラス谷の写真 (2004年7月24日19:00)
メラス谷 左の写真は、火星のマリネリス峡谷の中央部付近にある、メラス谷 (Melas Chasma) という地形を撮影したものです。解像度は1ピクセルあたり約16メートルとなっています。
撮影された地域は、メラス谷の南縁あたりとなっています。このあたりの地形を調べることは、マリネリス峡谷の地質的な成り立ちを解く鍵になります。写真の中には、火山活動によってできたものと思われる地形や、水の作用によってできたとみられる地形などが写っています。しかし、その後の地殻変動や風による侵食などで、表面はだいぶ地形が変化してしまっているようです。
マリネリス峡谷の成り立ちについては、まだまだわからないことが多いようですが、専門家はこれらの写真によって、その成因を、特に地形の形態学的な議論から解き明かそうとしています。

メラス谷の3次元立体画像 こちらは、上の画像データなどから合成された、このメラス谷付近の立体画像です。上方に広がる平原と、急な谷、また非常に入り組んだ侵食地形などもみることができます。
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地下探査レーダ高度計のアンテナ展開が延期へ (2004年7月24日18:20)
5月25日のトピックスでもご紹介していましたが、マーズ・エクスプレス周回機に搭載されている地下探査レーダ高度計(MARSIS)のアンテナ展開が、今年後半まで延期されることになりました。従って、この機器を利用した探査も延期されることになります。
このMARSISという機械は、火星表面に向けて電波を発射することで、火星の地下まで透過する電波の反射を調べ、火星の地下、特に氷の存在などを調べる装置です。
アンテナ製造メーカが行った最新の調査結果で、アンテナの展開による振動が予想していた以上に大きいことがわかり、本体への影響を避けるため、4月に予定されていた展開を延期してきましたが、これをさらに延期するものです。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)と製造メーカ、担当の科学者などでは、さらに詳細な解析を行って、展開を行うかどうかの最終判断を下すことにしています。
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マンガラ谷の洪水跡 (2004年7月24日18:10)
火星の赤道付近、タルシス台地の南西部にあるマンガラ谷 (Mangala Valles) の洪水跡の写真が公開されました。
マンガラ谷の洪水跡 この写真で撮影された地域は、マンガラ谷と、ミミオ谷 (Mimio Valles) というところにあたり、これは東西約数百キロメートルにわたって伸びている、マンガラ断層によってできた谷から流れ出た洪水跡のようです。
このような洪水が起きた原因として考えられているのが、地下から地上に向かって伸びてきた岩脈と考えられています。地下からのマグマによって岩脈が地上に近づくと、その熱により、地下の氷が溶けて洪水となり、このような地形が形成されたというものです。ただ、その説が正しいのかどうかはわかりません。
谷の溝に沿って、いわゆる「カオス地形」(chaotic terrain)という地形が広がっていますが、このことが地下に氷があることを示唆しています。このカオス地形は、地下の氷がランダムに溶けて地表が崩れることによってできると考えられています。
また、この洪水跡の大きな谷のまわりには、多くの樹枝状の谷が広がっています。おそらくこれは、雨によってできたのではないかと考えられます。
ESAの記事へ (英語)

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