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月を知ろう

月の雑学
第5話 月がふるさとになる日

月に記された、大いなる足跡の下にあるもの
〜月の科学その2〜
・資源の宝庫、月

月面ローバによる資源サンプル採集想像図 かつては到達するのが精一杯だった月だが、いまでは、人類はその利用の可能性を論じる段階にまできている。では、どのように利用するか。もっとも単純なのは、月に眠る資源を利用するというものだ。月は資源の宝庫なのだ。
 アポロが持ち帰った岩石は、徹底的に分析され、データがまとめられた。それによると、地球上には2,000種類以上もの鉱物が存在するのに対し、月にはせいぜい100種類。これでは「月は資源の宝庫」という意見への反論も聞こえてきそうだ。
 だが、悲観することはない。この「せいぜい100種類」は、かなり有望なのだ。

・エネルギー源としての月

 月の表面に多く見られる鉱物は、カンラン石、斜方輝石、単斜輝石など。聞き慣れない名称だが、もう少し馴染みのある言葉に換えれば岩石名でいうと玄武岩だ。玄武岩の粉末は加熱することでレンガを作ることができる。
 イルメナイトという鉱物も多いが、これはチタンと鉄が結び付いて酸化したものだ。つまりイルメナイトを分離すれば、この2つの鉱物と酸素が手に入るというわけだ。
 月面には、鉄の粒子や直径0.1mm程度のガラス球が豊富に含まれていることもわかっている。磁気や静電気などを利用すれば、純鉄やガラス材が簡単に採取できるのである。
 さらに挙げれば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、シリコン、クロムなどなど。中には、地球に存在するより多くの量が月にあるとされるものもある。
 もっとも、いずれの鉱物資源も一朝一夕に「取り出して使う」というわけにはいかない。採掘が開始されても、当初は品質の低いものしか入手できないはずだ。それでも、初期の月面基地の構造材として利用することは十分に可能と見られている。その基地を基点に、さらに設備の整った工場を作り、そこで生産された素材で基地を広げ……、と月進出のシナリオは続く。月に眠る資源で、月は開発されるのだ。

・月資源の利用可能性

 資源の宝庫としての月以上に期待されているのは、エネルギー源としての月だ。月表面にはヘリウム3が大量に存在していることが判明している。ヘリウム3は、クリーンかつ高効率の発電方法、核融合炉の燃料に用いられる物質であり、1万トンのヘリウム3があれば21世紀の全人類分の電気エネルギーをまかなえるといわれている。
 ヘリウム3は、地球上には自然には存在しない。一方、太陽風が数十億年にもわたって降り注いだ月面には、100万トンものヘリウム3が存在しているといわれているのだ。
 資源難、エネルギー難に悩まされる地球。月は、人類の未来をも左右する存在なのである。


このページは、1997年4月から1998年3月まで宇宙開発事業団(当時)の機関紙「NASDA NEWS」に連載された、「月がふるさとになる日」を移設したものです。記述内容に当時の状況を反映したものがありますが、オリジナル性を重視し、そのまま掲載しています。

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