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マーズ・エクスプロレーション・ローバ
ローバの概要

火星表面を活動中のローバ。(絵をクリックするとより大きな絵が表示されます。大きさ: 192KB)(CG: NASA)

かつて、火星にはマーズ・パスファインダ計画で、ローバ「ソジャーナ」が送り込まれました。今回の「マーズ・エクスプロレーション・ローバ」では、そのときよりも数段の進化を遂げたローバが送り込まれます。


エアバッグを利用した着陸

火星表面に着陸するローバ。エアバッグに守られて、何回もバウンドしながら着陸する(絵をクリックするとより大きな絵が表示されます。大きさ: 82KB)(CG: NASA)

今回のマーズ・エクスプロレーション・ローバでも、かつてのマーズ・パスファインダのときと同様、あるいはヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」の着陸機「ビーグル2」と同じように、エアバッグを利用した着陸が行われます。これは、火星に着陸する前に大きな風船状のエアバッグを膨らませておき、それによって着陸の衝撃を和らげるものです。高速で火星の地表に達したローバは、エアバッグに守られながら10回以上もバウンドし、次第に火星の表面に転がっていきながら着陸します。
火星大気に突入するときには、ローバは「エアロシェル」(aeroshell)と呼ばれる外殻に守られて降下していきます。これにより、大気との摩擦熱が内部のローバに及ぶのを防ぎます。火星大気に突入する際の速度は秒速5.4キロメートルにも達しますが、これを、大気との摩擦、及びパラシュートによって減速し、着陸します。


着陸後、自分で展開し活動へ

着陸機から離れ、活動を開始するローバ(絵をクリックするとより大きな絵が表示されます。大きさ: 82KB)(CG: NASA)

着陸後、ローバは太陽電池パネルを展開し、まず最初にカメラを展開して周辺の風景を撮ります。この後、数日かけて自分自身が正常であることを確認し、すべて正常であることが確認された時点で、いよいよ着陸機から離れて、動き出します。なお、着陸機自体はローバを運ぶためのもので、それが何かのミッションを行うことはありません。
ローバは6輪からなっており、前と後ろの2輪ずつはそれぞれ独立して曲がるようになっています。上部には長さ1.4メートルのロボットアームが装備されており、その先端には岩石研磨装置など、4つの科学機器が装備されています。これにより、岩石を自在に調べることができるようになっています。
ローバの移動速度は最高で秒速5センチですが、下で述べるように、障害物などを避けて走行するために、実際にはもっとゆっくりと走ります。実際には、10秒動いて、その後回りの様子を確かめるために20秒止まる、という繰り返しになるため、移動速度は秒速1センチ程度になります。しかし、動き回れることが重要なのです。そしてこの速度は、マーズ・パスファインダのローバ「ソジャーナ」(最高秒速約1センチ)に比べて数倍も速いものです。
こうして、ローバが活動を開始します。このローバは着陸点の周辺を動き回りながら、各種の科学ミッションを90日間にわたって精力的に行います。もしローバに問題がない場合、ミッションを延長して行うことも計画されています。

高度に自律化された「動く実験室」

火星と地球の間は、1億キロメートル以上も離れています。この世で最も早いものである電波が往復するだけでも、20分以上はかかってしまいます。これでは、地球から指令を送ってローバを動かしていると、危険な場所に差しかかっても指令が間に合わなくなってしまいます。
そのため、ローバは高度に自律化された障害回避プログラムが組み込まれています。コマンドにより、ローバの行き先は地上から指令が出されます。しかしそこへ進む途中では、ローバに搭載されているカメラの画像から、進路に危険なものがあるかどうかを判断し、もし危険なようであれば、それを避けて進むようになっているのです。
こういった高度な機能を達成するため、ローバには精密な「頭脳」…コンピュータが組み込まれています。
ローバに搭載されているコンピュータには128MBものメモリが搭載されており、地球上にあるパソコンとほぼ同等です。メモリ量だけで比較すればマーズ・パスファインダの1000倍にもなります。また、マーズ・パスファインダには8ビットコンピュータ(8085)が搭載されていましたが、マーズ・エクスプロレーション・ローバに搭載されているコンピュータは、32ビットのコンピュータ(PowerPC系の耐放射線型RAD6000チップ)です。
また、危険が発生しても乗り越えられるように、ローバ自体にも工夫がこらされています。ローバは45度まで傾いても大丈夫なように設計されており(実際には30度以上傾かないように制御されます)、車輪の直径である25センチメートル以上の障害物(岩や穴)をも乗り越えられる構造になっています。
関連リンク
ローバのウェブページ (英語)
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