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月探査機

かぐや 探査の背景

■月は古来より身近な天体
夜空に輝く、大きな天体、月。
古来より、人類は月を暦として利用したり、信仰の対象として崇めたり、あるいは神になぞらえて神話の対象とするなど、もっとも身近な天体として親しんできました。日本においても、「竹取物語」をはじめとして、さまざまな文学作品に月が登場します。
ヨーロッパ中世で科学的な考え方が芽生え、ガリレオなどの科学者が活躍した際にも、天文学的な対象として最初に目標となったのが月でした。
科学的な思考が取り入れられてからも、月には我々と似た人が住んでいる、あるいは空気があり水もある、といった考え方は広く受け入れられました。
最初の本格的なSF小説といわれる作品は、フランスの作家ジュール・ベルヌの「月世界旅行」です。ここでも目標は月であり、科学的な考え方が一般的になっても、人類の月への興味は減るどころかますます強まっていることが分かります。
20世紀になり、ロケットという手段が確立されてからは、月は到達目標として真っ先に選ばれました。近代的なロケット技術の基礎を築いたフォン・ブラウン博士も、最終的にロケットで到達したい目標は月でした。

■アポロ計画でも解けないなぞ
宇宙開発において、その目標が月探査に据えられることは、このような背景を考えるとごく自然なことでした。
1957年、旧ソ連がはじめて人工衛星を打ち上げたあと、その次の目標として月への到達が競われました。それも旧ソ連がなしとげました。
技術力で旧ソ連に負けることを恐れたアメリカは、1960年代に、人間を月に送り込む「アポロ計画」を立案。巨大な予算と大量の人員を投入して、計画を押し進めます。そして、1969年、アポロ11号により、人類ははじめて月の大地に降り立つことになります。
アポロ計画では科学的な探査が行われ、また月の石が380キログラム回収されました。この解析によって、月についてさまざまなことがわかってきました。
しかし、月についてのなぞは減るどころか、ますます増えてきました。例えば、アポロが持ち帰った月の石の分析によって、月の石は地球のマントルに似ていることがわかってきました。このことから、月の成因として「巨大衝突説」が唱えられるようになりました。しかし、本当に月の石がマントルに似ているのか、採集場所が限られた月の石からだけでは、科学者は結論を下すことができずにいます。
その他にも、月に発見された磁場の成因や、誕生直後の月の様子、表側と裏側の極端な地形の違いの成因など、月にはまだ分からないことがたくさん残っています。

■そして「ふたたび月へ」
アポロ探査から40年。アポロにより得られたデータだけでは、もはやこれ以上の科学的解析を進めるには不十分といえます。1990年代に行われたクレメンタインルナープロスペクターの探査でも、重要な科学的な成果は上がっていますが、上で述べたような根本的な疑問に答えるためには、まだまだ不十分といえます。
一方、国際宇宙ステーション計画の先にある宇宙開発のシナリオとして、月探査、そして火星探査が現実のものとなってきました。特に、火星探査の中継基地として月を利用することが考えられるようになり、また、国際宇宙ステーションで培った技術を応用して、月に有人の恒久的な基地を設けることが、技術的にも可能になってきました。
科学的、技術的に機は熟し、国際的に、「ふたたび月へ」という気運が高まってきたとき、その先陣を切ったのが、「かぐや」でした。

■探査は続く
「かぐや」の探査は、2007年12月から、2009年6月まで、約1年半にわたって続きました。この間、約10ヶ月の基本探査期間と、その後の延長探査期間に分かれて、詳細な月面の観測を続けました。最終的に、2009年6月11日、月の南極点近くに制御衝突(あらかじめ決められた目標に衝突させること)を行い、探査を終了しました。
取得されたデータの量は延べ約20テラバイトという膨大な量に達しています。これらのデータは1日、いや、1年ではとてもとても解析できる量ではありません。
2009年11月にデータの公開が始まりましたが、その後も解析結果は続々と得られ、論文として発表されています。探査から4年を経過した2013年現在でも、解析は続けられ、新しい成果が出てきています。
「かぐや」のデータは、また国際的にも重要なデータとみなされています。確かに、「かぐや」より解像度が高いデータを取得できるルナー・リコネサンス・オービターも2009年に打ち上げられましたが、高解像度のデータが得られる範囲は限られているため、全休にわたってくまなく高精度であるる「かぐや」のデータは、日本のみならず海外の研究者にとっても有用です。
また、「かぐや」のデータは、月の科学という観点から重要視されるだけではなく、将来の月開発、あるいは次の探査とされている月着陸などにも重要であるとみなされています。例えば、「かぐや」により世界ではじめて発見された月面の穴は、溶岩チューブが将来は月面基地になりうる可能性を示しています。これは、人類がそう遠くない将来、月面に基地を構えるときにも重要な目標地点となるでしょう。
「かぐや」の探査は、その意味でまだまだ続いているのです。


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