スマート1 探査の概要
スマート1(スマート・ワン)は、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が行う、初の月探査計画です。"SMART" とは "Small Missions for Advanced Research Technology"の略で、進んだテクノロジーを利用した、小型のミッションを行うための技術開発を目指しています。
スマート1は、アメリカが1994年に打ち上げたクレメンタイン探査機と同じように、技術開発を主な目的として月に向かう計画です。この探査計画の最大の特徴は、電気推進を利用しているということです。
電気推進とは、イオン化させた燃料(キセノンなどの気体がよく使われます)を電気的に加速させ、噴射することで推進するシステムです。長い時間をかけると非常に大きな加速度を得ることができるため、将来の惑星探査で使うことが期待されているため、技術開発も盛んに進められています。例えば日本の小惑星探査機「はやぶさ」も、電気推進を利用して小惑星に向かいます。
スマート1探査機は、大きさがたった370kgしかない、非常に小さな衛星です。また、科学探査のための機器の重さはたった20kg弱しかありません。この機器の中には、カラーCCDカメラ、X線スペクトロメータ、月表層の赤外線スペクトル探査装置などが搭載されています。小さな装置ではありますが、これらによって月表面を観測することにより、月の表面の元素組成や鉱物組成などを調べる予定です。
スマート1は2003年9月27日に打ち上げられました。本来は2002年10月に打ち上げられる予定でしたが、ロケット(アリアン5)の打ち上げが延期された影響で、遅れてしまいました。
打ち上げられた後は、スイングバイ技術と電気推進を使って徐々に地球からの高度を上げ、月に近づいていきました。そして、2004年11月16日(日本時間)に、月の軌道に入りました。2005年2月に月の観測軌道に入り、各種観測を行いました。探査期間は延長され、2006年夏まで、約1年半にわたって探査を行いました。そして、2006年9月3日、月面に衝突して探査を終了しました。
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