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月探査機
ルナー・リコネサンス・オービター/エルクロス
探査の概要

■アメリカ、ふたたび月へ戻る

2004年1月、アメリカは新たな宇宙政策を発表しました。この中では、アメリカはふたたび月を目指すこと、そして2020年(当初は2018年)をめどに、再び人間を月に送り込むこと、さらに、時期は明確にしなかったものの、その後有人火星探査を実行し、火星にはじめて人を送ることを目標にするなど、きわめて野心的な内容が盛り込まれていました。
この新たな宇宙政策(新宇宙政策…VSE: Vision for Space Exploration)に基づき、NASAでは新たな月探査計画を策定、そのための最初の段階として、月を詳細に調査する探査機の打ち上げを決定しました。これが、LRO(エル・アール・オー…ルナー・リコネサンス・オービター: Lunar Reconnaissance Orbiter、直訳すると「月偵察周回機」)です。
さらに2006年になり、月の氷の存在についてのさらなる調査を目的として、月表面に探査機を衝突させ、その舞い上がるちりなどを観測するという探査が新たに加わりました。これは、LCROSS(エルクロス: Lunar Crater Observation and Sensing Satellite…日本語に直訳すると「月クレーター観測衛星」)と名付けられました。
両者は1つのロケットで打ち上げられ、月に到着したあとそれぞれに分かれて観測を始めます。LROは定常観測1年が予定されており、状況がよければ観測期間は延長されます。LCROSSは月到着後4ヶ月後をめどに、月の極地域に衝突することになります。

■LRO…月表面の超高解像度データを求めて

LROは、科学目的というよりは、まさに新宇宙政策でうたわれている「月への有人飛行」のために、月表面をくまなく高解像度で調べ上げるということを目指しています。
このLROの目玉ともいえるべき装置が、LROカメラ(LROC)です。このカメラは、解像度50センチというこれまでの月カメラをはるかに上回る性能を持ち、月表面をくまなく調べ、将来の有人月探査で適切な着陸地点がどこにあるかを調べ上げることを目的としています。
また、LROに搭載されている機器には、放射線に関する測定装置がありますが、これらは、将来人類が月周辺の空間に到達した際、人間に与える放射線の影響を推定するための基礎的なデータを得る役割を果たします。
また、中性子測定装置のように、月の表面にあるとされる水(氷)の存在を探すための装置も含まれています。この装置を使い、将来の月面基地構築の際、エネルギー源や生活源として必要となる水の存在の有無、そして(あるとすれば)その量を確かめることになります。
このように、LROは科学目的というよりは、将来の人間による月着陸を目指し、必要かつ詳細なデータを取得するために設計された探査機であるということが、大きな特徴です。もちろん、これら詳細なデータは、月の科学のためにも大いに役に立つでしょう。

■LCROSS…月の極地域に氷を求めて

LCROSSは、月に到着後LRO本体と分かれ、月を回る非常に長い楕円軌道に入ります。その後数ヶ月(約4ヶ月)かけて軌道を安定させて、最終的に衝突するための場所を狙えるようにします。そして、選定された衝突地点へ向けて降下していきます。この際、LCROSS本体と、ロケットの一部はくっついたままで周回から衝突までを過ごします。
衝突の際、LCROSS本体とロケットを合わせた重量は約2.3トンにも達します。この物体が秒速2.5キロメートル(時速約9000キロメートル。マッハで表すと約7.5)で月表面に衝突するというのですから、その衝撃は大変なものになると思われます。
実際、衝突によって立ち上るちりの高さは約10キロと見積もられており、放出される物質は350トン、形成されるクレーターは直径が約20メートル、深さが4メートルにもなると推定されています。
この際、放出された物質の中には、もし水(氷)が混じっていれば、水蒸気が含まれるはずです。地球上の天文台でこのちりのスペクトルを観測することで、実際に水(氷)が月の表面に存在するのかどうか、また月の表面にどのような物質があるのかを詳細に調べることができます。
これまで、ルナープロスペクタースマート1かぐやが月表面に衝突した際に、舞い上がるちりの観測が同様に行われましたが、探査機の重量が小さかった関係もあり、あまり芳しい結果は得られていません。今回は大重量の装置が高速で激突することで、かつて彗星に衝突したディープインパクト探査機のような華々しい結果が得られることが期待されています。

■人間が月へ戻る日を目指して

LRO/LCROSSによる探査データ、さらには「かぐや」をはじめとした最近の衛星の探査などを加え、膨大な月探査データが集まりつつあります。これらは科学的な面での貢献だけではなく、将来の有人月探査の基礎データとしてもきわめて有用です。
有人月探査計画はまだ各国で基礎検討の段階にありますが、2010年代以降、検討が本格化してくると考えられます。その意味でも、LRO/LCROSS探査は、月周回という「探査の第1段階」のまとめとしての大きな意味を持っているといえるでしょう。
そして、2010年代に各国が検討を行っている月着陸・ローバ探査には、これら周回衛星が取得したデータが活用されるでしょう。このようなデータの積み重ねが、将来大きな実を結ぶことになると思われます。



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