メッセンジャー トピックス
2007年2月21日 16:00更新
写真のキャプションは以下の通りです。
Photo: NASA, JHU/APL, CIW
水星地殻をみるための装置の準備 (2007年2月20日)
氷が水星の地殻に存在するのか、また、存在するとしたらどのような形でなのかを調べることは、メッセンジャー探査機の水星についての誕生と進化を調べる上でも大きな課題の1つです。今月、機器に携わるジョンズホプキンス大学応用物理学研究所(JHUAPL)の技術者たちは、水星の地殻の謎を調べるための装置の1つである、中性子スペクトロメータの電源をONにしました。
中性子スペクトロメータは、探査機が水星に近づく際、地殻の最上数十センチメートルの組成のデータを集め、その数とエネルギー量を測定します。また、ガンマ線スペクトロメータと共に、ガンマ線−中性子スペクトロメータ(GRNS)を構成します。
中性子スペクトロメータが調べるのは、高速中性子、熱外中性子(epithermal neutron)、そして熱中性子で、これらが水星の表面から宇宙線によって放出される量を調べます。高速中性子は、ストレートに水星から飛び出してきます。ほかの中性子はいろいろな物質に衝突してから、地殻を抜け出てきます。もし、中性子が小さな分子(例えば、水素)と衝突したとすると、エネルギーを失い、低速中性子となって検出されます。そこで、熱中性子と熱外中性子の比をとることによって、水星全球にわたって、水らしき物質(水素原子として)やほかの物質の存在を検出することができます。
バックグラウンドノイズを差し引く
メッセンジャー計画の機器科学者である、応用物理学研究所のエドガー・ローズ(Edgar Rhodes)氏によると、現在の中性子スペクトロメータの校正作業は、「もっとも注目すべき領域の中性子スペクトルが機器の測定領域の中に入るように、6月5日の2回目の金星フライバイの前に、電気的な限界値や電圧などを微調整している。」ということです。
宇宙では、探査機は定常的にありとあらゆる方向から、銀河系宇宙線や、超新星などを起源とすると思われる高エネルギー荷電粒子にさらされています。このことを説明しているのは、GRNSの機器技術者であるジョン・ゴールドステン(John Goldsten)氏です。
「地上では、こういった宇宙線から我々を守ってくれるのは大気である。しかし、真空の宇宙空間では、こういった宇宙線はまともに宇宙線の物質に衝突し、原子核を破壊し、高エネルギー中性子を放射する。こういう高エネルギー中性子は、今度は別の原子と衝突し、低エネルギー中性子やガンマ線を作り出してしまう。こういう中性子による信号は、中性子スペクトロメータにとっても深刻なノイズとなり、惑星の近くにいるうちに信号全体の値から『差し引いてやる』必要がある。結局、値としては惑星全体の値で、我々が調べようとしている探査機の値ではないのだ。」(ゴールドステン氏)
さらにややこしいことに、この探査機によって引き起こされるノイズは、時間と共に蓄積されてくるのです。「従って、定期的に観測することによって、適切な解析と科学的なデータの解釈をしなければならないのだ。」(ゴールドステン氏)
太陽起源の中性子を捜して
中性子スペクトロメータは、メッセンジャーの飛行中ほとんど電源がONの状態になります。6月に予定されている2回目の金星フライバイのときだけでなく、2008年、2009年の水星フライバイ、そして2011年の水星到着(周回)時まで、ずっと電源が入っています。
中性子スペクトロメータは消費電力の少ない装置で、探査中ほぼずっと電源をONにできます。「この機械のユニークな特性を活かして、内惑星へ向かう途中中性子スペクトロメータでずっとデータを取り続けたいと思う。この種類の装置ではいまだに探査されていない領域だ。」(ゴールドステン氏)
「太陽のフレアの際に太陽からやってくるエネルギーを帯びた中性子は、とりわけ、それを生み出す太陽活動のメカニズムを解明しようとする物理学者にとって科学的に興味深いものだろう。太陽放射の中性子というのは非常に観測しにくいのだ。なぜなら、この粒子は不安定で、約10分で崩壊してしまうからだ。従って、崩壊する前に、いちばん勢いのある(高速な)粒子だけが地球に届くことになり、それは非常に数少ないものなのだ。しかし、メッセンジャーが太陽に近づき、金星の軌道の内側に入れば、太陽起源の中性子を観測する可能性は大幅に高くなる。崩壊する前に我々が捕まえる可能性があるからだ。」
水星までの長旅の途中に中性子スペクトロメータを動かすもう1つの理由は、宇宙でももっともエネルギッシュな現象といわれているガンマ線バーストを捉える、惑星間ネットワークを構築することにあります。このガンマ線バーストは事前に時間や場所を予測することができず、大量のガンマ線を突然発するという現象です。
「ガンマ線バーストを地上と同時に離れた衛星で捉えることは、バースト起きた方向の三角測量に役立つ。そうすれば観測所は強力な望遠鏡をその方向に向け、ガンマ線バーストの「残り火」を見ることができる。さらに、恒星が爆発し、ブラックホールへと変わる現象や、巨大な中性子星の衝突といった現象を記録することもできる。このスペクトロメータは中性子の検出に最適化されているので、ガンマ線は普段は背景雑音程度の量である。これが突如急激に増加することで、ガンマ線バーストのモニターに使える。ガンマ線バーストは通常1日1つ程度検出されているが、1つとして同じようなものはない。ミリ秒程度で終わるものもあれば、数分間も続くものもある。」(ゴールドステン氏)
技術的な観点から言えば、GRNSは探査機の遠隔操作によって、制御や値のセットがいろいろとできる、非常に柔軟な装置です。「この柔軟性は、地上でガンマ線バーストの環境をシミュレーションしにくいときに効果を発揮する。飛行中のデータは通常、我々が小さな変化を加えつつ繰り返し分析されて結果を得る。そして長期にわたるデータについては、例えば金星フライバイの前といった大きなイベントの前に、最終設定により解析される。」
統計コーナー 打ち上げから931日が経過しました。メッセンジャーは地球から2億6120万キロのところを飛行中です。この距離では、光の速度で地球から探査機まで14分31秒かかります。
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この間のトピックスは準備中です
金星スイングバイに向けて速度調整 (2006年2月24日14:00)
メッセンジャーは、2月23日(アメリカ東部標準時)、約2分間をかけて軌道を修正し、速度を秒速1.4メートルほど調整しました。これによって、探査機は今年10月24日に予定されている金星スイングバイに向けて、軌道へと乗ったことになります。
これまでの軌道修正には、メッセンジャーに搭載されている17個のスラスター(小型ロケット)を使用しましたが、今回は探査機のB面と呼ばれる面についている4つのスラスターを使用しました。
軌道変更の指令は、アメリカ・メリーランド州にある、ジョンズホプキンス大学応用物理学研究所にある、メッセンジャーの司令室から送られました。
軌道変更開始時点で、メッセンジャーは地球から2億1200万キロ離れたところを、太陽を基準として時速109698キロで飛行しています。
12月の軌道変更に向けての準備 (2005年11月11日)
新しいソフトウェアを探査機へ無事アップロードしたあと、ジョンズホプキンス大学のメッセンジャー管制官は、12月に行われる軌道変更に向けての準備を始めています。探査機搭載の2液式スラスターを、はじめて作動させることになります。
新しいソフトウェアでは、探査機の制御、またコマンドとデータの扱いに関する不具合が解消されています。「こういったバグが打ち上げ後に見つかるというのはごく普通のことだ」と、メッセンジャーの探査運用責任者のマーク・ホルドリッジ (Mark Holdridge)氏は述べています。例えば、打ち上げ後しばらくしてから、探査機は地球捕捉モード(地球方向を向くモード)に入っていましたが、しばらくしてから最低限のセーフモード(安全を確保するモード)に入り、探査機の回転がゆっくりになってしまいました。結局その原因は探査機のソフトウェアにあることがわかり、慣性計測装置(IMU)のデータの一部に特に問題があることが判明しました。
「問題の解決方法はわかるが、解決には時間がかかるのだ。」とホルドリッジ氏は述べています。「探査機が飛行している際に新しいソフトウェアを送り込むのはちょっと巧妙なやり方が必要なんだ。飛行制御システムについての修正によって、12月に予定されている軌道修正の精度が向上するだろう。」
ソフトウェアのアップロードに続いて、探査チームでは次の主要イベントに向けて2つのテストを行いました。1つは、IMUの再校正です。「このような定期的なメンテナンスを、我々は大体6カ月おきに行い、また大きなイベントの前にも行っている。ちょうど今、我々は飛行制御システムが次の軌道変更の際のコマンド送信でうまく動作するよう、地上テストを行っているところだ。」(ホルドリッジ氏)。
メッセンジャーでは、今回を含めて5回の軌道変更が予定されており、探査機の水星到着に役立てることになっています。今回の軌道変更では、太陽に対する探査機のスピードを下げ、2006年10月に予定されている金星フライバイの時刻合わせを行うことになります。
金星軌道を通過 (2005年11月11日)
2005年11月7日に、メッセンジャー探査機は金星軌道の内側に入りました。金星は探査機から約8600万キロメートル離れており、太陽からの距離は約1億70万キロです。地球からの距離は約4870万キロです。
地球スイングバイ時の写真 (2005年8月30日16:00)
8月2日に行われたメッセンジャーの地球スイングバイの際、カメラの性能確認などを兼ねて、地球の撮像が行われました(そういえば、日本の小惑星探査機「 はやぶさ」も、同様に地球スイングバイのときに地球撮像をしましたね)。これらの撮像によって、カメラが意図した通りの動作を行っていることが確認されました。
なにはともあれ写真をみてみましょう。1枚目の写真は、南米付近を撮影したものです。ほぼ同じ角度から地球を撮影していますが、右は赤色を中心とした3フィルターの画像の合成写真、左はほぼ自然色に近い形で合成したものです。撮影時点での地球との距離は約10万キロです。雲の間からは南アメリカの様子がくっきりと写っており、アンデス山脈やチチカカ湖までみえています。
次の写真では、地球に5万5000キロメートルまで近づいて撮影しています。雲が多いのですが、そのすき間からガラパゴス諸島がみえています。細かくみると、島1つ1つを判別できるほど高解像度の写真になっていますので、クリックして大きな画像で島の捜索にチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。
さらに、地球から離れながら撮影した写真をつなぎ合わせて作成した 映像も公開されています。この映像は合計358枚の写真から作成されたもので、もっとも接近している(映像のいちばん最初)距離が地球から65000キロ、もっとも離れた(映像の最後)距離が435000キロとなっています。
メッセンジャーの副機器科学者であるルイーズ・プロクター (Louise Prockter)氏はこう述べています。「今回の写真で、海に覆われ、雲が浮かぶ地球という惑星と、昼間では表面で鉛が溶けているほどの高温にさらされる水星との違いが明らかになった。しかし、水星も極地域では、長期にわたってクレーター内に氷が存在することが分かっている。水星については知るべきことがたくさんあるが、なぜこの『隣人』ともいえる惑星が地球と大幅に違ってしまったのか(全体組成や地史などの点で)は特に知るべきものの1つだろう。スイングバイの際に行ったカメラテストの結果は順調で、これらの機器により、水星の秘密を解き明かせるだろう。」
地球スイングバイ無事成功! (2005年8月7日15:00)
メッセンジャー探査機は、8月2日午後3時13分(アメリカ現地時間。日本時間では8月3日午前4時13分))、地球スイングバイに無事成功しました。ジョンズホプキンス大学の応用物理学研究所の探査機担当者によれば、探査機の状態は正常であるとのことです。地球への最接近距離は23747キロメートル、ほぼモンゴル中央部上空だったとのことです。
この地球スイングバイによって探査機は大きく軌道を変え、太陽からの軌道の平均距離が約3000万キロ太陽に近づきます。そして、来年には金星とのスイングバイが控えています。
地球スイングバイのテスト良好 (2005年7月8日15:00)
8月2日に予定されている地球スイングバイに向けて、メッセンジャーの運用チームは、6月28日に機器コマンドと探査機のテストを行い、良好に終了しました。今回の地球スイングバイの後、探査機は金星に向かって飛行します。そして、金星スイングバイは2006年10月に予定されています。
テストでは、メッセンジャーに搭載されている太陽光遮蔽板の180度回転や、5時間40分にわたる機器(磁力計、水星大気・表面組成スペクトロメータ、水星撮像システム)の動作が行われました。その後、太陽光遮蔽板は、もう一度180度回転して、元の太陽光を遮蔽する方向に戻りました。
今回の「リハーサル」に基づいて、実際に衛星を運用しているジョンズホプキンス大学の応用物理学研究所では、地球スイングバイの手順に若干の修正を加えて、本番を迎えることになります。これから数週間かけて、運用チームでは実際の地球スイングバイに向けてコマンド作りやシミュレーションなどを行っていきます。
メッセンジャーは、現在地球から約1000万キロのところを飛行しており、速度は時速109704キロメートルです。
地球スイングバイに向けて (2005年6月28日12:00)
前の記事にもありますように、メッセンジャーの地球スイングバイが、今年の8月2日に予定されています。それに向けて、6月23日に小規模な軌道修正が行われました。
衛星搭載のスラスタ(小型ロケット)の噴射は174秒続き、衛星を約秒速1.1メートル減速させました。この時点でメッセンジャーは地球から1430万キロの距離にあり、太陽の周りを時速110720キロで周回しています。
今回の軌道修正は、打ち上げから4回目にあたります。軌道修正の結果、メッセンジャーは予定された軌道を順調に飛行しており、8月2日には、モンゴル上空2347キロメートルのところを通過する予定です。なお、軌道をさらに正確にするために、7月末に軌道修正を行う可能性もあります。
メッセンジャー、地球と月を捉える (2005年6月2日16:30)
メッセンジャーの最終目的地は水星ですが、そこに近づく速力を得るため、いくつかの天体に接近して、その重力を利用して加速する、「スイングバイ」といわれる航法を使います。最初のスイングバイは今年の8月2日、地球へ2347キロメートルまで近づく予定です。
約2ヶ月後に迫ったスイングバイを前に、メッセンジャーに搭載されたカメラが、地球と月を捉えました。これは、探査機に搭載された水星撮像システムのテストで撮影されたものです。撮影は5月11日、狭角カメラで撮影されました。
このとき、探査機から地球までの距離は2960万キロメートルもありましたが、写真では南北アメリカの雲の帯が明瞭にみえています。月はさらに地球から約40万キロ離れてあります。(写真キャプション: JPL/APL)
写真の中に月が写っているというのは撮像チームにとっても意外だったようです。この水星撮像カメラの主任研究者であるエドワード・ホーキンス三世博士は、「写真を引き伸ばしてみたら、小さな物体があった。あとになってそれが月だと分かった。」と語っています。
打ち上げ以来、水星撮像カメラは400回以上にわたってテストを重ねていますが、ほとんどは星や暗黒、あるいはカメラの恒星のためのターゲットでした。水星撮像カメラの主席研究者のルイーズ・プロクター (Louise M. Prockter) 博士は、「チームは意気盛んだ。なにしろ、この写真ははじめて撮った『本物の』写真だからだ。それに、地球に近づくにつれて、ますますよくなっていく。」と語っています。
スイングバイは、今年の8月2日に予定されています。このときも水星撮像カメラは写真を撮るほか、水星レーザ高度計は、装置確認のため、NASAゴダード宇宙センターからのレーザ光を受け止める予定です。
8月2日の地球スイングバイでは、もっとも地球に近いところは北方アジアになる予定です。小さな望遠鏡を持っている人であれば、日本やユーラシア大陸、アフリカなどから、近づいてくる探査機を観測できるかも知れません。
衛星点検を精力的に実施中 (2005年4月30日20:40)
メッセンジャーの運用チーム、及び衛星担当チームは、衛星の科学機器の点検作業を続けています。そして、数週間後に行われる予定の追加の機器運用に向けての準備を進めています。
この数週間にわたって、 エネルギー粒子・プラズマスペクトロメータ(EPPS)の点検が行われました。4月8日にはEPPSに組み込まれている高速撮像プラズマスペクトロメータ(FIPS)という装置の試験を2日間かけて終了しました。運用チームは、装置の電圧を慎重に少しずつ上げて、最高電圧にまで達しました。また、同様の試験を、EPPSのエネルギー粒子スペクトロメータについても行いました。こちらの方は4月13日に終了し、さらにX線スペクトロメータの試験を4月14日に無事終えました。
全体的に探査機は順調に運用されています。4月中には、 ガンマ線・中性子スペクトロメータ(GRNS)と 水星大気・表面組成スペクトロメータの試験が予定されています。
4月15日現在、メッセンジャー探査機は地球から3730万キロメートル離れたところを飛行しています。地球から探査機まで信号が届くのに2分4秒かかります。探査機の太陽に対する速度は時速115662キロメートルに達しています。
衛星反転試験と磁力計ブーム展開 (2005年3月10日15:00)
メッセンジャーは、いま太陽光の遮蔽板を太陽に向け、また磁力計のブームを展開して飛行しています。
3月8日の午前11時47分(アメリカ東部現地時間)、地上からのコマンド指令により、衛星は姿勢を180度反転させ、遮蔽板が太陽方向に向くようになりました。その1時間後、磁力計のブームが、30分ほどかけて3.6メートルにわたって展開されました。
衛星の本体は金属でできています。その影響を避けるために、衛星に搭載された磁力計は本体からできるだけ離す必要があります。そのため、長い棒(ブーム)の先に磁力計をつけることが探査機では一般的なのです。
なお、メッセンジャーは3月8日現在、地球から4700万キロメートル離れたところを飛行しています。速度は時速112374キロメートルです。
衛星反転試験 (2005年3月10日14:00)
衛星の姿勢を反転させ、太陽光の遮蔽板を太陽に向ける試験が、3月8日に行われます。そのために運用チームでの検討が進められています。
この衛星の姿勢の反転が終わりますと、メッセンジャーは磁力計を搭載したブーム(棒)を伸ばしていくことになります。
2月15日には、旅程の距離が4億8000万キロに達しました。これでも、水星までの飛行距離は74億キロもあるというのですから、旅はまだ始まったばかりということになります。
3月2日現在、メッセンジャーは地球から4790万キロ離れたところを飛行しています。速度は時速111473キロです。
超新星を観測 (2005年2月16日15:30)
メッセンジャーに搭載されているX線スペクトロメータは、先週、5日間を費やして校正観測(機器の観測データが正しい値を示すように、標準的な星などを観測して補正すること)が行われました。校正観測の対象は、超新星爆発の残骸として有名なカシオペア座のカシオペアAでした。テストの結果は上々で、装置回路の雑音除去装置も効果を発揮することが確かめられました。
X線観測で特に問題になるのは、信号と一緒に混ざってしまう「背景雑音」(バックグラウンドノイズ)と呼ばれる雑音です。従って、ノイズに負けないように信号の感度を上げる必要があるのです。カシオペアAの観測によって、この背景雑音がどのくらいあるのかがわかり、雑音除去機能がどのくらい働いているかを知ることができるようになります。
X線スペクトロメータのチームでは、テストデータをさらに数週間にわたって観測し、水星までの飛行中にもう一度カシオペアAを観測して、機器の動作を確認したいとしています。
2月15日現在、メッセンジャーは地球から4920万キロメートルのところを飛行しています。この距離では、地球からの信号は探査機へ届くのに2分44秒かかります。探査機の速度は、太陽に対しておよそ時速109400キロメートルになります。
カメラテスト実施 (2005年1月24日19:40)
メッセンジャー探査機に搭載されているカメラ(MDIS: 水星撮像システム)の試験が、1月12日に行われました。このテストのため、カメラが探査機内部にある目標を捉えられるように探査機は27度傾けられました。
メッセンジャー計画の責任者であるマーク・ホルドリッジ (Mark Holdridge)氏によれば、試験は順調に行われたということです。
1月17日現在、メッセンジャー探査機は地球から4870万キロメートル離れたところを飛行しています。この距離では、地球に信号が届くまでに2分42秒かかります。探査機は、太陽の回りを、時速105400キロメートルで動いています。
2005年の予定 (2005年1月11日19:10)
メッセンジャーの状態は正常で、順調に飛行しています。さて、今年(2005年)にメッセンジャーに何が起こる(?)のか、少なくとも現在予定されているイベントについてお知らせしましょう。
- 地球から最遠距離に
- メッセンジャーは2月5日、この夏の地球スイングバイの前で最も遠い距離(4947万キロ)まで遠去かります。
- 姿勢変更
- 3月30日、衛星ははじめて、太陽光遮蔽板を太陽の方に向けるために姿勢を変えます。またその間に磁力計搭載のアームを伸ばします。5月には軌道変更も行います。
- 地球スイングバイ
- メッセンジャーは、加速と軌道変更のために地球スイングバイを行います。8月2日の予定です。このときにはアジア北部の上空2155キロにまで近づくことになっています。
- 軌道変更
- 12月13日には、はじめての深宇宙での軌道変更があります。搭載しているニ液式のスラスタをはじめて噴射します。今後4回にわたって、このような軌道変更を行う予定です。
全ての衛星にいえることですが、こうやって目標に向かって飛んでいるときも、衛星は何もしていないわけではなく、忙しく仕事をこなしているのです。
さて、メッセンジャーの1月10日現在の飛行位置は、地球から4790万キロの地点になります。時速は太陽に対して104651キロメートルに達します。
電力を試す (2004年12月22日14:20)
先週、メッセンジャーの運用チームでは、「ピーク電力テスト」を実施しました。これは、メッセンジャー探査機がある位置にいるときに、どのくらいまで電力を発生できるかを試験するものです。これによって、探査機の姿勢などにより、どのくらいの電力を生み出せるのか、より正確に知ることができるというわけです。
同じテストは、既に9月なかばに一度行っていますが、今回に加えさらに、探査機の姿勢が変化する来年3月、及び地球に近づく来年8月前にもテストを行う予定です。
テストの結果、探査機が要求する電力量よりも発電量の方が多いことが確かめられました。つまり、正常ということです。
メッセンジャーは、12月20日現在、地球から4450万キロ離れたところを飛行しています。また、太陽に対する速度は、時速10万2000キロメートルに達しています。
星をみつめて (2004年12月17日12:10)
12月8日、メッセンジャーは星を3時間ほどみつめていました。といっても別に物思いにふけっていたわけではなく、搭載機器が正常に動作するかどうかを確認するためです。 確認をしたい機器は、水星大気・表面組成スペクトロメータ(MASCS)で、これが予定通り機能するかどうかを確認するのが今回の作業の目的でした。
また、12月上旬には、MASCSのうち紫外線・可視光線スペクトロメータのアライメント測定や、カメラのシャッターやスリットの動作確認などのテストを行いました。飛行中は一見何もしていないようですが、実はこのような地道な作業がいろいろとあるのです。
この後数ヶ月かけて、メッセンジャーのチームは他の機器の動作確認を行っていきます。水星撮像システム (MDIS)やX線スペクトロメータ (XRS) などのテストを行う予定です。これらの装置のテストは、あらかじめ定められた標準ターゲットをみることによって行います。MDISの方は探査機に搭載されたターゲットをみるのですが、XRSのターゲットはカシオペアをみることになります。さらに来年8月の地球スイングバイ時には、テストを兼ねて月の観測を行う予定になっています。
12月13日現在、メッセンジャーの地球からの距離は約4300万キロメートルとなっています。
3回目の軌道変更無事終了 (2004年11月22日12:10)
メッセンジャーは、3回め(そして今年最後)となる軌道変更を無事、終了しました。
メッセンジャーに搭載されているスラスターを48秒間噴射し、探査機の速度を秒速3.2メートルほど減速しました。といっても、探査機の速度は、時速99827キロという猛烈なスピードです。
現在メッセンジャーは、地球から3670万キロの地点を順調に飛行中です。機器も全て正常に作動しています。
軌道変更無事終了、順調に飛行中 (2004年10月5日16:40)
メッセンジャーは、来年夏の地球フライバイに向けて、軌道変更を行いました。変更は順調に行われ、9月27日(アメリカ現地時間)現在、メッセンジャーは地球から既に1850万キロ離れたところを、時速10万キロで飛行しています。また、搭載機器も正常に動作しています。
軌道変更は無事完了 (2004年8月26日11:10)
探査機が持っているロケット(エンジン)を使って、衛星の軌道を変更させる作業(マニューバ)が行われました。作業は、アメリカ東部時間の24日午後5時すぎ(日本時間では25日午前6時すぎ)に行われ、予定通り成功しました。
担当者の言葉を借りると、「すべて予定通りにうまくいった美しい軌道変更作業だった」というのですが、美しい変更作業というものがあるのかどうか。ともかくも、メッセンジャーは現在(アメリカ東部時間24日)、地球から約480万キロ離れたところを飛行しています。
まずは衛星のチェック (2004年8月24日19:20)
打ち上げに成功しても、喜んでばかりはいられません。打ち上げ成功は、単に探査機がスタートしただけのことなのです。衛星がこれから長旅をしていくためには、衛星の状態をいつも見張っている必要があります。
打ち上げ後の初期段階で、衛星の状態を調べることを「チェックアウト」(check-out)といいます。打ち上げごすぐにこのチェックアウトが始まり、衛星の状態の確認が行われています。今のところ順調に進んでいるようです。
8月24日には、最初の衛星軌道変更(マニューバ)が待ち構えています。その後、来年の夏には地球へとフライバイします。
メッセンジャー打ち上げ (2004年8月3日15:20)
水星探査機メッセンジャーは、アメリカ東部時間の8月3日午前2時16分(日本時間8月3日午後3時16分)に、アメリカ・フロリダ州のケープカナベラル空軍基地から、デルタIIロケットにより打ち上げられました。
本日の打ち上げ (2004年8月3日14:20初回更新、15:12最新更新)
現在カウントダウンは打ち上げ4分前まで進んでいます。打ち上げにGOが出た模様です。
メッセンジャー打ち上げ延期 (2004年8月2日15:20初回更新、18:20最新更新)
本日(8月2日)に予定されていたメッセンジャーは延期されました。次回の打ち上げは、ほぼ24時間後の、アメリカ東部時間8月3日午前2時15分(日本時間では8月3日午後3時15分)に予定されています。
延期の理由は天候でした。現在フロリダ半島の東にハリケーンが近づいており、その影響で打ち上げ可能な気象状況にならなかったということです。明日の天気も同じような状況だということで、また打ち上げが遅れてしまうことが心配されますが、ハリケーンが遠去かってくれることを祈りたいですね。
カウントダウン再開 (2004年8月2日14:50)
打ち上げのカウントダウンが再開された模様です。3時すぎに打ち上げでしょうか。
メッセンジャーの打ち上げ延期? (2004年8月2日14:30)
水星探査機メッセンジャーは、アメリカ東部時間8月2日午前2時16分(日本時間同日午後3時16分)に打ち上げられる予定でしたが、現在、カウントダウンが止まっております。
メッセンジャー、あと数時間で打ち上げへ (2004年8月2日11:30)
メッセンジャーの打ち上げがいよいよあと数時間となりました。 トップページでは、ロケットのフェアリングに収められたメッセンジャーの映像や、ライブ中継へのリンクがあり、いよいよという盛り上がりが感じられます。
打ち上げ中継は NASA TVでもご覧いただけます。
メッセンジャーの打ち上げが近づく (2004年7月22日17:50)
水星探査機メッセンジャーの打ち上げが、刻一刻と近づいています。
現在の予定では、打ち上げは8月2日、現地時間で午前2時16分(日本時間では8月2日午後3時16分)となっています。打ち上げはアメリカ・フロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地からで、打ち上げのロケットはデルタ7925H(Delta II Heavy)が使われる予定です。
メッセンジャーの ウェブサイトでは、打ち上げ前の探査機のウェブカメラ中継などもあり、着々と準備が進んでいく様子が分かります。
もし何らかの理由で8月2日に打ち上げられなかった場合、8月14日までの間にまだチャンスがありますが、それは毎日12秒間しかありません。それだけ、水星に向かう軌道の設計というのはたいへんなことだということがわかります。
実際の打ち上げの際には、 NASAでもネット中継を行う模様です。
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