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月探査機

かぐや 探査の概要

■キーワードは3つの「科学」
「かぐや」には、月を科学的に探査する使命があります。この「科学的」という言葉には、実は3つの意味が込められています。それは、

  • 月の科学
  • 月での科学
  • 月からの科学
の3つです。これらを達成するために、「かぐや」に搭載された科学機器すべてが観測を行うのです。

■月の科学…月の謎を明らかにするために
月にはさまざまな謎が残されています。もっとも大きな謎は、月の成因です。「巨大衝突説」と呼ばれている説では、地球が誕生した直後に、大きな(火星サイズの)天体が衝突して、その破片が地球周辺に飛び散って月ができたとされています。
しかし、この説を立証するためには、月全体の組成、つまり月が全体としてどのような物質でできているかを明らかにする必要があります。アポロ計画で集められた月の石は表側の数ヶ所にとどまっており、私たちは月の裏側はおろか、表側の物質についても詳しく知らないという状況にあるのです。
そのため、「かぐや」は月の全体組成を明らかにするためのさまざまな装置を搭載しています。蛍光X線スペクトロメータ、ガンマ線スペクトロメータにより、月の全球にわたる元素組成が明らかになります。また、スペクトルプロファイラは月表面のスペクトルを非常に細かい精度で取得し、一方、マルチバンドイメージャは同じく月表面のスペクトルを全球にわたって観測します。この2つのデータを組み合わせて、月の全球にわたる鉱物組成を調べます。
地形カメラは月の表面を解像度10メートルで撮影します。これは人類が今までに得たもっとも詳細な月画像となるでしょう。ステレオ視、およびレーザ高度計による高度計測で、月の3次元的な地形の特徴を明らかにし、月が誕生以降、どのように進化してきたかを解き明かします。
一方、地下構造、内部構造についても「かぐや」が調べます。地殻などの浅い部分については、レーダサウンダーという装置が、電波を使って調べます。これにより、月の誕生直後の地殻の様子などに迫ることが可能になります。
衛星電波源は、「かぐや」の孫衛星であるVRAD(ブイラド)衛星にも搭載され、「かぐや」とVRAD衛星の起動の様子を地上から精密に測ることにより、月の重力の様子をこれまでにない精度で明らかにします。さらに、通常は電波を地球に送ることができない月の裏側についても、孫衛星「リレー衛星」を用いて電波を中継することにより、重力の様子を詳しく調べます。これにより、世界ではじめて、月全体にわたって細かい重力の様子を調べることができ、月の内部構造を知るための大きな手がかりを得ることができます。
さらに、「かぐや」に搭載された磁力計は、月の岩石にわずかに残された磁場を詳細に調べ、かつて月のコアが存在し、溶けていたのかどうかを明らかにします。

■月での科学…将来の有人月探査のために
将来、人類がふたたび月を訪れることが、すでに現実的な日程として検討されはじめています。しかも今回は、アポロ計画とは異なり、かなり長期にわたる滞在になる可能性が高くなっています。
そういったときに、月に降り注ぐ宇宙線や太陽からの高エネルギー粒子(太陽風)などが問題になります。プラズマや高エネルギー粒子などが、月面、あるいは月上空においてはどのくらい存在するのかを調べることは、将来の人類の月面への進出に際して重要な問題となります。もちろん、科学的な意味としても、これらの粒子の存在を調べることは重要な課題となります。
「かぐや」には、それらを調べるための機器も搭載されています。粒子線計測器により、月周辺の宇宙線や宇宙放射線の量を、プラズマ観測装置により月周辺の電子やイオンの量を測ることになっています。
また、VRAD衛星からの電波を地上で受信し、その電波の変化を調べることで、月に存在するわずかな電離層の様子を明らかにする「電波科学」という探査も行われます。

■月からの科学…地球観測の拠点として
月はいうまでもなく、地球を観測するのに最適な場所の1つです。静止衛星よりもはるかに遠くから地球を眺めることができますし、「かぐや」では1年という長い時間にわたって観測を行いますので、地球の変化の様子を知るためにも、月からの観測が重要になります。
プラズマイメージャという装置は、「かぐや」の月周回軌道上から、地球の磁気圏、およびプラズマ圏(地球の周りを取り巻く超高層大気、さらにはその上層の電磁場)の観測を行います。これらの詳細な分布や変化などを調べることで、地球全球にわたる超高層大気の挙動を観測することができ、特にこれまでなかなか調べにくかった両極(南極および北極)の変動の様子を明らかにすることができます。

■ハイビジョンカメラにより、お茶の間に月の美しい風景を
人類ははるか昔から、月に対してさまざまな感情をいだいてきました。日本人も特に、月に関しては信仰の対象、暦など、さまざまな面で生活に入り込んできました。
月は科学的な対象であると同時に、現在でも人々のあこがれ、あるいは興味の対象です。月を純粋に「美しい」と思う人が多いことも、それを表しているといえるでしょう。そこで、「かぐや」には、この美しい月、そして月からみた地球の様子をハイビジョンで撮影する、高精細映像取得システムが搭載されています。
このシステムは、基本的には広報目的を主とし、例えば「地球の出」といったような月と地球が織り成す美しい風景を、ハイビジョンで撮影して地球に送ることを目指しています。
また、高精細なハイビジョン映像は、月の科学にも寄与することが期待されています。

■15の機器がもたらす「統合サイエンス」
「かぐや」には、15もの科学観測機器が搭載されます。それは、それぞれが独立した目的を持つだけではありません。例えば、レーザ高度計と地形カメラのデータを組み合わせて、月の地形モデルができ上がります。また、衛星電波源とリレー衛星中継器による観測で、全球にわたる重力モデルを作り上げることができるようになります。
このように、「かぐや」では機器がお互いにデータを補完し、解析結果を組み合わせていくことによって、月の全体像を明らかにすることを目指しています。この手法を「統合サイエンス」といいますが、これだけ大規模な統合サイエンスを、月・惑星探査で行うのは、日本だけでなく世界でもはじめての試みで、世界中の科学者が「かぐや」の成果に注目しています。



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