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月・惑星へ

トピックスLunarSatのウェブサイトによると、LunarSatプロジェクトは、2003年9月をもって中止となった模様です。理由は特に明確には書かれておらず、少なくとも財政的、技術的、科学的なものではないということです。
月探査機
ルナーサット(LunarSat):ヨーロッパ

ドイツ・ミュンヘン工科大学などの研究者を中心としたグループにより、2002年の打ち上げを目指していた、小型探査機による月探査計画です。

ルナーサットの大きな目的は、月の南極付近にあると考えられる氷の存在を確かめることです。そのために、高解像度カメラによって南極地域を調べると共に、レーダによる探査も行います。また、月周辺の磁場やプラズマ環境の調査も行います。
科学的な目的もさることながら、ルナーサットは教育をその大きな目的にしています。これについてはのちほど、触れることにします。

ルナーサット(1)
ルナーサット探査機 (Copyright (c) LunarSat group)
写真をクリックするとより大きな絵が表示されます(サイズ: 45KB)

ルナーサットの打ち上げは2002年に計画されていました。打ち上げはヨーロッパのロケット、アリアン5を予定していますが、小型の衛星なので、アリアン5のピギーバック(あまった打ち上げ能力を使って、ロケットに相乗りする衛星)として打ち上げられます。こうすることによって、打ち上げにかかる費用を大幅に減らすことができます。
ルナーサットが月に到着すると、月の南極側から、月を回る軌道(周回軌道)に入ります。軌道上では、科学的な観測も行われますが、小学生や高校生に、クレーターを発見させる教育的な計画も用意されているそうです。
探査が終わりに近づきますと、ルナーサットは「近月点ダイブ」を行います。これは、周回している軌道(高度100km)から、高度を一気に下げてわずか高度10kmまで下りるというものです。これによって、より高い解像度での観測ができるようになります。
最終的にルナーサットの燃料が使い果されると、探査機は月に激突することになります。残りわずかの燃料を振り絞って、探査機は最後の軌道制御を行い、衝突場所を月の南極地域に定めます。衝突によって巻き上がるガスを地上から観測し、そのスペクトルを調べることで、月の表面にあるかもしれない、水の量などを調べることになっています。
なお、全てのミッションにかかる期間は6ヶ月を予定しています。

ルナーサット(2)
太陽を背にして飛行するルナーサット
(Copyright (c) LunarSat group)

ルナーサットには、次のような装置が搭載される予定です。
高解像度カラーカメラ (CHRIS: Color High-Resolution Imaging System)
高い解像度(最高10m/pixel)を持つカラーCCDカメラで、月の表面のスペクトルや、極、及び特定地域の地形などを探るために使われます。
 
磁力計 (MAG: Magnetometer)
月の磁場の様子を調べます。
 
月外圏分析器 (LENA: Lunar Exosphere Analyser)
 
ラングミュール・プローブ (SLP: Segmented Langmuir Probe)
月の周辺の磁場環境を探るための装置です。
 
レーダ・プラズマ実験
装置ではありませんが、ルナーサットから地球に向けて発射される電波を利用して、月の周辺のプラズマの様子や、月の地表を調べる実験です。


このミッションが大変興味深いのは、単に科学的な探査を行うだけではなくて、ミッションの全ての段階で教育的なプログラムが実施されるということにあります。例えば、ミッションの最後で探査機が月に突入するときには、「衝突の光を見つけよう!」と名付けられた教育プログラムが実行され、地上から望遠鏡による観察が行われる予定でした。
このように、最初から教育をミッションの目的に据えた探査計画は世界でもおそらくはじめてと思われます。
ルナーサットのホームページ(下参照)には教育に関していろいろなツールが用意されていています(軌道シミュレーションゲームまであります!)。

ルナーサットは、2003年8月末に中止が発表されました。

ルナーサットのホームページ(英語)
http://www.lunarsat.de/


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