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月探査機
スマート1 科学観測

スマート1では、数種類の科学観測機器を搭載し、月についての観測を行いました。

■X線スペクトロメータ (D-CIXS: Demonstration of Compact Imaging X-ray Spectrometer)
セレーネの蛍光X線分光計と同じような原理です。月の表面で反射される太陽からのX線のスペクトルの中には、月の元素によって光の吸収がみられます。これを調べることによって、月にどのような元素(マグネシウムやケイ素、アルミニウムなど)がどのくらい含まれているかを調べることができます。これにより、

  • 月全体の元素組成の決定精度の向上
  • 月の起源や進化の理論への寄与
  • 月の地殻の状態の特定
  • サウスポール・エイトケン盆地(South-Pole Aitken Basin)の調査
  • 将来の月の資源利用のためのマッピング
などが期待されています。
D-CIXSを利用すれば、50キロメートルの精度で、月の元素組成を調べることができます。また、はじめての月全体にわたる元素組成マップができることになります。

■小型赤外線スペクトロメータ (SIR: SMART-1 Infrared Spectrometer)
近赤外線領域のスペクトロメータです。セレーネのマルチバンドイメージャ (MI)と同じ原理の装置です。近赤外線領域の波長を調べることで、この範囲に吸収帯を持つ鉱物の量や種類などを知ることができます。特に、月の岩石を構成する主要鉱物である、輝石やカンラン石などを詳細に調べることができ、月の起源や進化などを調べるときに欠かせない材料を提供します。
SIRは、空間分解能が300メートル四方とやや粗いのですが、波長方向には256ものチャンネルを持っていて、鉱物のスペクトルを細かく調べることができます。

■高精度月小型カメラ (AMIE: Advanced Moon micro-Imager Experiment)
AMIEはその名の通り、月の特定の領域を高解像度で撮影することができるCCDカメラです。解像度は平均して1ピクセルあたり80メートルに達し、アメリカの月探査機クレメンタインよりも精度の高いデータが得られることが期待されます。さらに、近月点付近では1ピクセルあたり30メートルの解像度が得られます。
AMIEにより、月の南極付近を高解像度で撮影することができるほか、極付近にあるといわれている月の氷の様子を調べるため、永久影領域(極付近にある、ずっと影になったままの領域)や氷そのものが堆積している場所があるかどうかなども調べます。
また、3種類のフィルターを持っているため、赤外線スペクトロメータを補って、岩石のスペクトルを調べることもできます。


目標は南極、サウスポール・エイトケン盆地

スマート1では、近月点を南極付近に定めています。これにより、サウスポール・エイトケン盆地をより詳細に調べることができると期待されています。
サウスポール・エイトケン盆地は、直径2500キロにも及ぶ月最大、太陽系でも有数の盆地です。巨大な衝突によってできたと考えられており、ここには、衝突によって月の内部からの物質が露出している可能性があります。もしそのような物質が観測できれば、月の起源にも一石を投じる成果となるでしょう。
スマート1の観測機器は、このサウスポール・エイトケン盆地を集中的に観測します。元素組成、鉱物組成や地形などから、この盆地の姿を明らかにすることができれば、この盆地の成因だけでなく、月の進化などにも新たなストーリーが開けるかも知れません。



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