ルナー・リコネサンス・オービター 科学機器
ルナー・リコネサンス・オービターは合計で7つの科学探査装置を搭載しています。カメラ以外はそれほど大きいという装置ではありませんが、いずれも重要な役割を担っている装置です。
■放射線影響測定用宇宙望遠鏡 (CRaTER: Cosmic Ray Telescope for the Effects of Radiation)
クリックするとより大きな画像を表示できます。(サイズ: 2.3MB) Copyright: NASA/Debbie McCallum
月には、太陽やはるか彼方の宇宙空間から、たくさんの放射線が飛んできています。こういった放射線は、もし人間に直接当たってしまうと、健康にとって非常に有害であることがわかっています。CRaTERでは、このような放射線がどれくらい月周辺の空間に存在するかを調べます。
また面白い実験として、放射線の人体への影響を調べるため、人体組織に模擬したプラスチック片を搭載しており、この変化を調べることで、放射線が実際に人体にどのような影響を与えるのかを、より実践的に解明することを目指しています。
■月放射測定実験 (DLRE: Diviner Lunar Radiometer Experiment)
クリックするとより大きな画像を表示できます。(サイズ: 1.5MB) Copyright: NASA/Debbie McCallum
月表面の温度がどれくらいなのか、ということは、意外に実際にはわかっていない問題でもあります。特に、アポロ計画などでは表側の赤道を中心とした領域しか調べられていないので、極地域などをはじめ、多くの地域の地表温度やその変化はまだわかっていません。将来月面基地を作る際、表面温度や、その変化などを調べておくことは重要な課題です。
DLREでは7〜200マイクロメートルの波長範囲から9つの波長の光を調べることで、月表面の温度を5度単位、領域では300メートルの解像度で細かく調べます。
なお、"Diviner"とは英語で「予言者」といった意味です。
■ライマン−アルファ線マッピング装置 (LAMP: Lyman Alpha Mapping Project)
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LAMPは、月表面全体を、極紫外線(紫外線の中で、特に波長が短いもの)で調べます。これにより、極地域に存在していると思われる氷(霜などの形になっている可能性が高い)を調べることができます。
この装置の名称の由来になっている「ライマン−アルファ線」は、水素原子が放出する特有のスペクトルで、これを検出することで、もし極地域に水素が存在すれば、水の存在の間接的な証拠となります。
■月探査中性子測定装置 (LEND: Lunar Exploration Neutron Detector)
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LENDは、月表面から放出されている中性子を検出するための装置です。この装置が特に目指しているのは、月の地表付近から放出される、水由来の「熱中性子」と呼ばれる中性子です。これを調べることで、特に極地域の水(氷)の存在を確かめることが狙いです。
また、中性子は人体にも悪影響を及ぼすことから、その量がどのくらいになるかを調べることにより、将来の有人月探査に役立つデータを提供します。
■月周回レーザ高度計 (LOLA: Lunar Orbiter Laser Altimeter)
クリックするとより大きな画像を表示できます。(サイズ: 3.3MB) Copyright: NASA/Debbie McCallum
レーザ高度計は、衛星から月表面に向けてレーザ光を発射し、その反射時間をきわめて精密に調べることによって、月表面の高さを調べるための装置です。
月の地形を詳細に調べることにより、将来(有人か無人を問わず)探査機を着陸させる際、安全な地形を知る手がかりが得られることになります。
LOLAはレーザの反射時間を測定するだけではなく、反射してきたレーザ光の強度も調べることができます。そのため、極地域のように光が当たらない場所についても、その様子などを知ることができるという強みを持っています。さらに、LOLAのレーザ光は1方向だけではなく合計で5方向へと発射されるため、高さだけではなく、地表がなめらかなのか凸凹しているのかを知ることもできます。
■LROカメラ (LROC: Lunar Reconnaissance Orbiter Camera)
LROCは、LROの中でも最も重要な探査装置です。LROCは、狭角、広角の2つのカメラを装備しています。狭角カメラの最高解像度は約50センチ、広角カメラの最高解像度は100メートルです。このカメラはマーズ・リコネサンス・オービターに搭載された2つのカメラを改良したものです。
LROCが狙う目標は様々ですが、1つは超高解像度を活かして、将来の月着陸に適した地形を調べること。そしてもう1つは、100メートルの広い解像度を活かして、極地域の日照の状況を調べることにあります。極を通過する度に日照を撮影することで、いわゆる「永久影」の領域が存在するのか、するとすればどのくらいの広さなのかを把握できることになります。
また超高解像度での3次元マッピング、複数スペクトルでの地表の撮影、月全体の地図の作成などが目標としてあげられています。さらにアメリカらしい点として、アポロ探査により撮影された場所を再度撮影することで、40年間にその場所にどのような変化が起こったかを調べ、将来的に長期にわたって人類が月面で生活する際、どのような危険が存在するかを明らかにしようとしています。
■小型合成開口レーダ実証実験 (Mini-RF)
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Mini-RFが狙うのは、月の極地域です。太陽光が当たらない領域であっても、レーダーを使うことにより、解像度30〜150メートル程度で地形を把握することができます。また、反射されてきた電波の強度から、地表に水(氷)が存在するのかどうかを推定することが可能です。
この装置は、インドの月探査衛星チャンドラヤーン1に搭載されているものより解像度などの点で若干すぐれています。
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