グレイル 月までの軌道
グレイルは、デルタIIロケット(いわゆる「デルタIIヘビー」という、重量物打ち上げ用のロケット)で打ち上げられます。
グレイルは2機の探査機からなりますが、この探査機を1機のロケットで打ち上げることになります。といっても、まったく同じ軌道を通って月に行くわけではなく、微妙に異なる軌道を通って、両者は月へと向かいます。
打ち上げから約263秒で第1段エンジンの燃焼が終了。その後第2段エンジンを利用して、地球周回低軌道へと運ばれます。さらに、第2段エンジンの再着火によって、グレイルの月遷移軌道(月へ向かう軌道)へと乗ることになります。
第2段ロケットの2回目の燃焼終了後約3分ほどで、衛星分離のための姿勢制御を実施。その後、燃焼終了から9分30秒後に、グレイルAの分離を行います。さらにここから約7分後、今度はグレイルBを分離するための姿勢制御を行い、最終的に、グレイルAの分離から8分15秒後に、グレイルBを分離することになります。
このように、2機の探査機を同時に月に運ぶため、ロケット本体は複雑な運用を行うことになります。
グレイルは2機に分離されたあと、月遷移軌道(月へ向かう軌道)に乗ります。
グレイルの月遷移軌道の特徴は、直接月へ向かうのではなく、地球ー太陽系のラグランジュ点の近くを通過するという、大変な大回り軌道をとることにあります。一見すると非常に遠回りにみえるのですが、エネルギーの観点からはかえってこのような軌道が有利で、そのために小型のロケットで打ち上げができるという点が有利です。
なお、この月遷移軌道では最大5回の軌道修正が行われ、そのうち第2回、及び第3回の軌道修正で、2機のグレイルの到着時間が離れることになります。
グレイルの月遷移軌道(ラグランジュ点に近い場合と遠い場合)
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出典: GRAIL Launch Press Kit (NASA)
こうして、約3ヶ月半の旅を経て、月周辺に到着したグレイル探査機は、相次いで月周回軌道へと入ることになります。探査機は月の南極側から近づいて、減速しながら月北極方向へと飛行します。
この段階で、まず周期11時間半の月周回軌道へと投入されたグレイル探査機は、何回かの減速軌道修正を実施し、最終的には周期約2時間の周回軌道に投入されます。
ただ、実は両探査機の軌道は微妙に異なり、グレイルBの方が約3分だけ周期が長い軌道を飛行しています。そうしますと、約3日に1回、グレイルAとグレイルBが近づくというタイミングが発生します。
このタイミングをうまく利用して、両探査機の距離を近づけていき、最終的に、両者が近い距離を飛行する科学観測軌道へと移行していきます。
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