はやぶさ2 探査の概要 (工学的側面)
「はやぶさ」の成功を、その先へつなげるために
小惑星への往復飛行を行い、そのサンプルを地球に持ち帰ることに成功した「はやぶさ」。その技術を活かし、さらに小惑星探査を行おうとする計画が「はやぶさ2」です。
「はやぶさ」では、イオンエンジンの長時間飛行や地球帰還技術など、様々な新たな技術が実証されました。しかし、これらの技術が開発されたのは、「はやぶさ」が計画された時点でのもので、現代の最先端技術を使えば、さらに向上した技術を利用できることが期待されます。
この点を考慮し、「はやぶさ2」では、既存の技術を改良しながらも、新たな技術を用いることで、より先進的な技術を実証することを目指しています。
より確実に、より安全に
一方、「はやぶさ」では、探査中に探査機にいろいろな故障が発生しました。例えば、探査機の姿勢を安定させるリアクションホイールの故障や、肝心な採取装置の不具合。これらの故障や不具合などで、肝心の探査そのものが危ぶまれる、あるいは予定通りの成果が得られないという結果になりました。
「はらはらどきどき」が「はやぶさ」の物語をより感動的にしたという側面はありますが、探査を行う側にとって、「はらはらどきどき」というのはあまりよいことではありません。探査をより確実に、安全に実施できることに越したことはないのです。
そのため「はやぶさ2」では、「はやぶさ」で不具合や故障を起こした技術や装置を見直すことで、安全性を高め、確実に小惑星のサンプルを持ち帰ることを目指しています。
最小限の改良で、迅速に新しい成果を
これまで、探査機の開発には、10年前後という長い時間がかかることが通例でした。「はやぶさ」にしても、1996年に開発計画が承認されてから、打ち上げに7年もかかっています。しかし実際には、1990年代前半から構想は練られていましたので、構想から足かけ10年以上、さらにその前の検討段階から実際に成果を得るまで25年という非常に長い時間がかかっています。
非常に大きな予算を使う探査計画は、慎重に検討することが必要です。また、多くの部品、しかも途中で修理することができない部品を使う月・惑星探査では、部品などの信頼性を高めるために数多くの試験を行い、それのために時間がかかるのは通例となっています。
しかし、時間がかかっている間に、海外の他の計画が探査を実施してしまう可能性はあります。このため、「はやぶさ2」では、できる限り早く探査を実現させるための基本的な考え方として、既存の「はやぶさ」での期待などを含め、活かせる設計技術はなるべく継承しようということが考えられています。
このため、「はやぶさ2」は、プロジェクト化から4年での打ち上げを目指しており、現在(2011年初頭)のところ、2014年度内の打ち上げを目指しています。小惑星到着は2018年中頃、帰還予定は2020年以降となっています。
またその分、現地滞在時間を多く取ることで、対象天体をよりじっくりと探査することができるようになります。「はやぶさ」が約3ヶ月の探査だったのに対し、「はやぶさ2」では足かけ1年半にわたる探査を計画しています。
目玉といえる「衝突装置」の搭載
上で述べたように、「はやぶさ2」はきわめて「保守的」な探査機といえますが、その中でも1つ、新たな考え方に基づく装置が投入されます。
それが、「衝突装置」(インパクターとも呼ばれます)です。
衝突装置は、物体を天体の表面に衝突させることで小型のクレーターを作り、内部の物質を露出させて、内部に隠されていた新鮮な物質を調べようという装置です。
海外では、すでに彗星探査のディープインパクトや、月探査のエルクロスで実証されていますが、日本の探査機が搭載するのははじめて、しかもこれらとはまったく異なる仕様になります。
もともと始原的な小惑星を探査しようというのが「はやぶさ2」の目的ですから、この装置により、その目的をより確実に達成できることが期待できるでしょう。
なお、「はやぶさ2」の理学的な側面については、こちらのページをご覧下さい。
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