|
|
SELENE-Bシンポジウム 講演要旨
【ミッション候補I(地質科学観測)】
- ■X線分光器、ガンマ線分光器、分光カメラを用いた地質科学
- SELENE-B検討グループ
- ■月面物質の重要性〜惑星物質の宝庫、地球再発見の場所として
- 三浦保範(山口大)
月面には、月・地球・小惑星帯・彗星起源の4種の鉱物物質がある。地球起源物質は地球の大衝突イベントと生命絶滅進化を示し、その他の月外物質は、有機物と水分子そして重元素の保存を示す。月面物質のその場析と分析測定(地球内外基地)が、これらの重要な問題を解決してくれる。
- ■遠隔SIMSによる月表面分析システムの検討
- 田中孝治(宇宙研)、佐々木進(宇宙研)、三浦保範(山口大)
2次イオン質量分析法(SIMS)では1次イオンビームの照射により発生する2次イオンを質量分析計で計測を行う。この原理を応用し、月面着陸機にイオン源と検出器を搭載し、イオンビームの照射距離が数km〜10km程度に及ぶ遠隔SIMSを用い月表面分析を行うシステムの検討を行った。原理的に検証が必要な項目、着陸機搭載のためのイオン銃や分析器の仕様、計測結果の評価方法などの予備的検討結果に関して報告する。
- ■将来の月利用に向けた月面表層詳細探査
- 宮本英昭(東大)、春山純一(NASDA)、山路敦(京大)、
斎藤潤(西松建設)、六川修一(東大)
Sinuous rillなど溶岩チューブよって形成されたと考えられる地形の中で、まだ崩壊されていないように見える場所には、幅数百mの大規模な空洞が存在している可能性がある。
その内部は、宇宙線やマイクロメテオロイドの遮蔽、恒温などの意味で基地として有望であることから、このような場所の発見やその構造を明らかにすることは、成因等の科学的興味だけでなく将来の月利用の意味からも重要と考えられる。そこで、地中レーダーを用いた地下構造の詳細探査を提案する。
- ■月磁気異常地域での磁場プラズマ観測
- 綱川秀夫(東工大)、斉藤義文(宇宙研)、渋谷秀敏(熊本大)
SELENE-Aの月磁気異常リモートセンシングを発展させて、SELENE-Bでは次の2つの観測を提案する。
1) ローバーに磁力計を搭載し、グランドトルースとしての磁気異常地域観測をおこなう。特に、この観測から磁気異常に対する地形の影響を精密に評価しうる情報を得る。
2) ランダーに磁場プラズマ観測器を搭載し、磁気異常地域のミニマグネトスフェアの有無、生成・崩壊過程を観測する。これは新しい領域の科学であると同時に、将来の月面基地建設にも役立つ可能性がある。
- ■ローバーによる重力探査
- 日置幸介、坪川恒也、松本晃治、花田英夫、
ILOM研究グループ(国立天文台)
ローバの移動距離が10kmを越える場合には、重力計をローバーに搭載しながらクレーターを横断し、SELENE計画のLALTやLISMの高度データと比較することによって、クラストの構造・密度を推定することが期待できる。重力計は、現在地上での測定試験の段階の、サーボ型加速度計を利用した小型省電力軽量のものを想定し、衝撃に強く、質量約1kgで0.1mgal(10-6m/s2)以下の感度を持つ。
【ミッション候補II(その他のミッション候補)】
- ■SELENE-B着陸船の高精度位置決定によるサイエンス
- 荒木博志、花田英夫、河野裕介、河野宣之(国立天文台)
SELENE計画ではLISMの画像等によるDEM(Digital Elevation Map)の作製が検討されている。SELENE-B着陸船の位置をVLBIで高精度に決定し、同時に着陸時の月面画像+SELENE-LISM画像による位置解析を行えば、DEM上にLLRで確立された月座標系に基づく基準点が得られ、正確な経緯度線を書くことができる。講演では位置決定に伴うその他の話題についても触れる予定である。
- ■月面環境計測
- 河内正治(岩手大)、田口長英(岩手大)、船崎健一(岩手大)、
鶴田誠逸(NAO)、 田澤誠一(NAO)、花田英夫(NAO)、
河野祐介(総研大)、横山隆明(NASDA)、金森洋史(NASDA)、ILOM研究グループ
SELENE-2で月面に光学望遠鏡の設置を計画している。ランダー着陸時のレゴリスダストの舞い上がりと帯電ダストの浮遊現象は、光学系へ影響し、かつ太陽電池やラジエターの能力を低下させる原因と予想される。本ミッションでは、ランダー着陸時に舞い上がったダストおよび帯電ダストの堆積度を計測し、堆積防止装置の実験を行う。また将来の望遠鏡の安定度を調べるために、ランダー内外の温度および傾斜度の計測を行う。
- ■水素還元による月土壌からの水製造
- 渡辺隆行(東工大)、金森洋史(NASDA)、青木滋(清水建設)、
吉田哲二(清水建設)、内藤均(航技研)、荻原裟千男(航技研)、
中村嘉宏(航技研)
将来の月面における有人活動を考えると、特に水と酸素の供給は重要な課題である。酸素は水の電気分解より容易に得られることや、生成した水そのものも様々な用途が考えられる点から,水製造には大きなメリットがある。水製造は、水素を還元剤として使用する場合がもっとも簡単で、輸送コストのかからないプロセスとなる。月土壌からの水素還元では,月土壌成分中のFeOが主に水素によって還元される。本研究では,月土壌からの水素還元による水製造を固定床反応器を用いて,最適条件および反応機構の検討を行った。
- ■月面パーソナルビジネス検証の提案
- 山中勉(IHIエアロスペース)
SELENE−Bの相乗りペイロードとして、月面砂地に足型、手型、文字を押印し、撮像し地球へ送信する機能を搭載し商用サービスを世界に先駆けて行うことを提案致します。
【ミッション候補III(観測支援技術)】
- ■月面探査ローバの検討・技術課題
- SELENE-B検討グループ
- ■試作月面探査用ローバ
- 南繁行(大阪市立大)
着陸船にたたんで搭載し,月面において展開出来るようにした試作月面走行用車両について紹介する.
- ■月レーザ測距のための月面光トランスポンダー用小型レーザの開発
- 國森裕生、吉野泰造、雨谷純(通総研)
通信総合研究所では、将来の超遠距離の通信・測位技術のための要素技術の検討を開始している。従来の地球ベースの月レーザ測距システムで測距対象としていたコーナキューブレフレクター(CCR)のリンクを大幅に改善するトランスポンダ型の光反射器のモデルを複数考案、それらの要素技術の一つとなるμチップレーザの国内技術による開発、試作をおこなっている。現在の仕様はCr-YAGを用いてQ-SW動作(20−1kHz)基本波でパルスあたり約400uJの値を得ている。講演では、トランスポンダ方式の深宇宙通信・測位応用における特徴と開発中の技術の現状、課題を述べる。
- ■半導体レーザによる月面氷探査車へのエネルギー伝送の技術的問題点
- 武田和也、河島信樹(近畿大)
月面極地方のクレータの底 永久日陰域で氷の存在を確認するローバーにエネルギーを伝送する技術の技術的問題点
1.半導体レーザーを用い、数kmで1m程度に就航する技術
2.受光する太陽電池上での光の不均一分布に対する光ー電気変換効率の最適化
について論ずる。すでに、10分の1モデルを用いて卓上での試験を行ってきたが、今回2分の1モデルで大学のキャンパスの建物屋上間を利用して、100mスケールでの実験を行い、月面上での光エネルギー伝送の技術の確立を目指す。
【着陸航法誘導制御系】
- ■軟着陸のための航法誘導に関する検討
- SELENE-B検討グループ
- ■着陸機の高精度最適誘導
- 鬼頭克巳、阿部直彦(MHI)
月周回軌道から軌道離脱して目標着陸点上空に至るフェイズについて、高度履歴と3次元月面地図の照合による月面相対航法と、動力降下フェーズに可変推力エンジンを用いた最適誘導方式の組合せによる誘導について述べる。相対航法と最適誘導のシミュレーション評価結果も示す。
- ■月着陸用レーザセンサ
- 浅葉薫(NEC)
月着陸機用のレーザセンサ(レーザ高度計、スキャニング型LRF、レーザ速度計)を提案する。
- 【レーザ高度計】
- 最大測距々離50km、測距精度1m、計測周期20Hz
- 【スキャニング型LRF】
- 最大測距距離0.5〜500m、測距精度30cm、画素数128×128、計測周期1FL/sec
- 【レーザ速度計】
- 計測距離1〜300m、速度精度3m/sec、計測周期3Hz
発表では上記のセンサの提案と共に月着陸機に搭載する上での開発課題につき説明する予定。
- ■電波高度計・速度計(仮題)
- 水野貴秀(宇宙研)
- ■着陸誘導用センサとしてのミリ波レーダーの適用検討
- 齊藤浩明、足立忠司、安井英己 (IHIエアロスペース)
SELENE-B衛星の月面着陸誘導制御用及び地形認識用センサとして、ミリ波レーダーの適用性を報告する。
【着陸脚と衝撃吸収機構】
- ■着陸脚と衝撃吸収・転倒防止機構
- SELENE-B検討グループ
- ■月着陸衝撃吸収方式について
- 高井政和(FHI)
月面着陸を安全かつ確実に成功させる衝撃吸収方式のコンセプト及び着陸機システムの構想検討結果を報告する。
- ■衝撃吸収着陸パッドの検討
- 渡辺和樹(ウェルリサーチ)
メッシュボール型の衝撃吸収着陸パッドを検討した。提案するパッドはリボン上の素材をボール形状に配向するものである。月面着陸時衝撃は配向した各リボンそれぞれの塑性変形及びリボン間の相互摩擦によって吸収しようとするものである。またボール形状によって、着陸時接地方向に対する方向安定性が得られると考える。さらにロッドの曲げ塑性変形機構の併用による1点接地と多点接地時の衝撃吸収性能の安定化に検討ついても検討した。今回その検討概要及び衝撃吸収予測について報告する。
|
|