1999年度シンポジウム
ILOM(月面天測望遠鏡)計画による高精度測月
Precise observation for Selenodesy using ILOM (In-situ Lunar Orientation Measurement) Project
○ 岩田隆浩、横山隆明(NASDA)、
日置幸介、河野宣之、花田英夫(国立天文台水沢)、
唐牛宏(国立天文台)、ILOM検討グループ
T. Iwata, T. Yokoyama (NASDA),
K. Heki, N. Kawano, H. Hanada (Mizusawa, NAO),
H. Karoji, and ILOM Mission Group
SELENE(月周回衛星、2004年打上げ)以後の次期月探査ミッションとして提案した、ILOM(月面天測望遠鏡)による観測計画について述べる。
月の重力場の低次項と秤動の観測から求められる月の慣性モーメントは、月の中心核の大きさや密度の情報を示すことにより月の起源の解明に知見を与える。
SELENEでは月面電波源と衛星電波源を用いた相対VLBI観測(VRAD)により、月重力場の低次項について従来のレンジング法を上回る高精度のデータが期待される。
一方月の秤動は、Apolloによる反射板を利用した月レーザ測距(LLR)により、強制秤動の同定が成されてきた。しかし地球局からの観測では月の秤動と軌道の分離の困難さによる不確定性が残されてきた。
このためILOM計画では、月の極地に接地した20cm級の光学望遠鏡(横山他、本講演会)を用いて、天の極を回る星の軌跡から、月の強制秤動と自由秤動の各成分を高精度に同定することを試みる。
図1に、振幅100秒角・周期1ヶ月、及び振幅10秒角・周期0.5ヶ月を与えた場合の、天の極付近の星の軌跡の概念図を示す。 観測では、個々の星に対してCCDアレイの複数ピクセルに記録された信号強度からガウシアンフィットにより星像を復元し、1ミリ秒角の精度で位置決定する。
1年以上の軌跡の解析により、秤動の諸成分の振幅や位相を直接推定する。
図1 月の歳差と秤動を強調した場合の、天の極付近の星の軌跡の概念図。
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