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> 月を知ろう > 月に関する研究発表 > シンポジウム「ふたたび月へ」 > 第2回シンポジウム(1994年) > 3.対談「日本の月探査」
月を知ろう

月に関する研究発表
3.対談「日本の月探査」
宇宙科学研究所 秋葉鐐二郎
宇宙開発事業団  五代 富文

五代: 対談といいながら、ばかに離れておりまして、こういうのを対談というのかどうかわかりませんが……。
いま、基調講演なみの松井理事長のお話と、比較的基調講演の松尾先生のお話、それからこのあとの科学のラウンドテーブルと利用の可能性のラウンドテーブル、これに挟まれて何を話したらいいか? 対談というからこんなもんでいいかと判断いたしまして、だいたい30分程度、対談という形でさせていただこうと思います。
実はこの夏休み、私は2つの月の関係の映画を観ました。1つは皆さんよくご存知の、いま大ヒットしています「アポロ13」。あれは立花先生などが翻訳されたりしているので、皆さんよくご存知でしょうし実際にご覧になった方も多いと思います。あれは月とか宇宙関係以外の方も、というか、むしろそちらのほうがずっと多く見られている。有名なトム・ハンクスという俳優、彼は去年も一昨年もアカデミー主演男優賞を取りまして、これでもしかしたら3年連続取れるかという話もあって実はアベックがかなり多かったんでありますが、たいへんに感動させられました。ただ私はロケットの打上げを直接に担当しておりますので、実はちょっと観たくないところもありました。非常に悲劇に近いギリギリの線の映画でありますので。それでも、非常に評判の映画ですから、観ました。去年がアポロ11号から25年で、今年が13号からの25年ですね。そういう点で非常に意義があったと思います。もう1本、私、実は、秋葉先生は昔ご覧になったかどうかわかりませんが、ジョルジュ・メリエスという監督の「月世界旅行」。これはサイレントでありまして、12〜13分ものです。ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」と、H・G・ウェルズの「月面着陸」を混ぜたようなもので、大砲からドンと打ち出して、5人のパリジャンですか、月世界へ行って宇宙人と遭って、また帰ってくるという実に楽しい映画でありました。宇宙、月面のいろんな科学的な意味とか利用の意味とかいろいろありますが、どうも映画ができてすぐ、ああいう映画ができたのは、そういうところに非常に楽しい原点があるんじゃないかと思うんです。
そこで、どうでしょうか? 秋葉先生、なぜいま月探査かということについて皆さんから沢山話はあったんですが、そのへんのところどうなんでしょうか?
 
秋葉: 五代さんがいわれたような「アポロ13」とか、昔の夢多き映画とか、確かにそういうドラマティックな側面は宇宙の魅力であります。私自身、そういう側面にひかれているというのは事実ではごさいますけれども、昨年「ふたたび月へ」ということをいい出したのは実は逆に、そういったものではなく、もっと地道にということを強調いたしました。アポロのようにではなく、アポロとは違ったやり方でやろうじゃないかと。そういう提案をしたのが、逆にいまアメリカ、ヨーロッパで大きな反響を呼んでいるという状況にきておると思うわけであります。昨年そういうことで、かなりわれわれとしては反響を呼んだ、手応えがあったなぁということで、政策大綱を作っていくという段階に出て、大きな一歩は出たのかなぁという気はしたんですが、表立って見る限りは、どうもそのあと、火種が大きくなってんだか小さくなってんだかわからないという点がちょっと不安であります。
今日、松尾先生が惑星協会のアクティビティを紹介していただいたのを、はじめて私ここで聞きました。松尾先生は私どもの研究所の先生ですから、いまここで聞くというのはおかしいと思われるかも知れませんが、私どもの研究所というのは世界でこういうことをやっている中で、いちばん小さい研究所でありまして、総勢300人、研究者の数が50〜60人というわけです。ですから、松尾先生とは会うには会うんですが、週に2〜3回、すれ違いざまに必要最小限の情報を交換するという会い方をしているわけでございまして。こういう話を聞くのは、実はここで初めて。これを聞きまして、確かにその火種が少しずつ燃え盛りつつあるというのを聞いて、たいへん心強く思いました。
それから、もう1つの火種は宇宙開発事業団と宇宙研の間の協力関係がスタートし、これもなかなか、急にパッと燃えてくるという話ではございません。ジワジワとそういう状況が作られてきているわけでございますけれども、アメリカのほうはたいへん反響が早うございまして、惑星協会というのがありまして、あれがこの話を聞きつけまして、前のJPL、ジェット・プロパルジョン・ラボラトリというのがカリフォルニアにございますが、そこの所長さんが、副会長でしょうか、惑星協会というのがアメリカにございます、プラネタリー・ソサエティー、日本のと名前は同じでございますけれども組織は大きい、国際組織、それを基盤といたしまして宇宙研と協力してワークショップをやろうじゃないかとということで、8月の初旬に2日ばかりかけまして、ワークショップをやりました。宇宙開発事業団の方たちにも来ていただきました。ということで、五代さんからの問い掛け、「なぜ月か」という点の議論も含めまして、サイエンス、それから利用していくという側面の展望といったものをみんなで集まって自由に意見交換をいたしました。その席上で私も似たような、いままでの経緯の説明をさせられたわけですが、やはり月に関して3つあります。「月の科学」、「月からの科学」それから「月面上での科学」。いままで「月の科学」という側面だけを見てこられた面がございまして、それが、どれだけの科学において比重があるかという面からのみ論じられていたという点がありましたのが、もう少し広い観点が出てきたというところで、これからの展望というのが別の観点からも出てきていると思うんですね。
そういうことで、じゃあ月まで行ってやると何がいいんだ? 私、3つばかりそこで申し上げたように思います。1つは、月というのは非常に場所がハッキリしている。われわれが人工衛星を打ち上げても、直接目で見えるようなものは極めてわずかなわけですが、月はどこからでも見えるし、目で見るだけじゃなくて、ともかく月のある場所というのを精密に測定すれば月面上における物体の位置はわかるわけですね。そういう「位置」が月面上のアクティビティにおいては、わかりやすい。つまり普通の人工衛星ですと位置がハッキリわかるというだけで、かなりの工夫をしなくちゃいけないのが、その辺が地上における物体と同義に扱えるという点もたいへん大きなメリットということですね。それからもう1つは、宇宙空間では自由に物が向きを変えたりというメリットがある反面、いつも制御していないと同じところに止まっていてくれないという話があります。それが月面上では地上におけると同じように、シッカリとした基盤の上に置ける。姿勢とか場所の制御を必ずしも必要としていないという点も重要じゃないかなぁということです。それからもう1つは、月は資源があるという点。これがたいへん、他の宇宙空間のアクティビティに比べてメリットがあるんじゃないかと指摘いたしました。
いい点ばっかりじゃなくて悪い点もいくつか言わなければならないわけでして、1つは月まで持っていくのは、たいへんコストがかかる。低軌道に持って行く質量の1/5〜1/10くらいの質量しか月面に持って行けないという状況が1つあるわけですね。これが1つ不利ですし、それからもう1つは半月近い夜がある。その時、エネルギーをどうしてくれるのかと、その2つがある。ということで月面上の活動をする場合には、そういう不利を何とかほかの月面上にある利点を生かして補っていくという工夫が必要だし、それがあればそれなりの宇宙・月の利用の発展が見込まれるのではないかということを、その席で指摘申し上げました。
これに対していろいろコメントしてくださいまして、先ほどいいましたように、アポロのようにではなくて、継続性をもって取り組むというのは、たいへん大きく評価してくださいましたし、私が月面上の利点を生かして不利を補うべきであると申し上げましたのにもいろいろコメントがございまして、1つ印象に残ったのが、やっぱり月の極地の利用なんですね。先ほど、松尾さんがいわれましたように、極地のクレーターの中の低温を利用する。これは昔から聞いております。もう1つ指摘がありまして、面白いなと思ったのは、極地の辺りにはいつも昼の場所があるというんですね。年中、陽が当たっている場所があるというんです。だからいつも昼の場所と夜の場所があるという、たいへん面白い場所だということを聞きまして、実はそこがどこかといいますと、ちゃんとクレメンタインで撮った奇麗な写真を持ってきてくれましてシューメーカーさんが見せてくれた写真の上で、これがその場所であるといっていただいておりました。
そんなことで、私たちそういう側面からいろいろ、こういうワークショップで議論をを戦わせていきますと、新しい知見がどんどん出てくる。こういう火種がだんだん大きくなっていく時期に現在きているんだ。そういう意味で月というのはタイムリーではないかと、そんなふうに考えているわけですね。
 
五代: そうですね。私自身キーワード的にいえば、いまや準備は整っていると、こういうふうに申し上げていいんじゃないかと思うんです。月の利点、欠点、その他の議論というのは、いま秋葉先生がおっしゃいましたし、これからも大いに検討されるわけですし。それから基本的には人類が宇宙へ出て行くことの第一歩でもありましょうし。それからいろんなストーリーも未来工研がまとめているのもあるし、いろいろ皆さんの考えもありますけれど、基本的にはストーリーはできつつあるわけですね。少なくとも近いところのストーリーはできつつある。したがって、そういうような調整が整っている。それから技術的基盤が、私は非常に整ってきていると思うんですが、いままではどうしても、われわれ担当している者も、何となく自分で上手く進んでいない時は自己規制みたいなものがありますけども、いまはそれを乗り越える時期なんじゃないかな。実際に月探査の技術基盤としては、宇宙研さんの「ひてん」「はごろも」というのはもう何年も前で、いわゆる米ソに次いで世界で3番目の月のほうへのフライトをしたという、非常に画期的なわけでありますし、「ルナA」、会場にペネトレータも飾ってありますが、これも目前のプロジェクトになっているわけです。われわれ、いろんなロケット関係、衛星関係の技術がありますが、その辺のまず「ひてん」「はごろも」「ルナA」というところで、月探査の技術基盤はどの程度までできたか、あるいはできるか。それからその次に、どうあるべきかというのはどうでしょうか?
 
秋葉: それはむしろ五代さんのほうがよくご存知で、そちらでおっしゃることなのかも知れませんが、月の周辺をウロウロしたという意味では宇宙研がここんとこやっておりますので申し上げますと……。距離からいいますと、40万kmという距離ですか、静止衛星なんかの3万6000kmと比べますと10倍以上。たいへん遠いという印象は持たれますでしょうけれども、実はロケットの能力という点からいいますと、静止軌道に打ち上げる能力がありますと、火星、金星くらいの範囲まで行くロケットの能力と、ほとんど同じくらいのものなんですね。ですから、静止衛星を打ち上げている事業団も当然そういったところへ、その規模の探査機を飛ばしていけるという状況にあるわけであります。
ただ火星、金星、月へ行くと、その側を通り抜けるところまではそんなもんなんですが、さらに止まって天体の上に降ろすというところまでやりますと、またそこで、さらに能力がいる話になります。ということで、静止衛星軌道に行っている質量の何分の1かになってしまうというような輸送能力しかないわけですね。
しかし一方、小さい質量でも人間は別です。人間の重さは、どちらかというと年々、平均的には大きくなってくるというようなこともございますけれど、観測機というのはどんどん軽くなって参りますので、無人の探査という面においては小さくなっていくわけです。その意味では年々、その能力も増えているというわけでありまして、特に「はごろも」というのは非常に小さな、手のひらに乗るような衛星です。そういう技術を結集したというようなものが、ここで試されたわけであります。将来、惑星探査を電子レンジくらいの大きさでやろうといったような話まであるくらいですから、いまの輸送能力ということに関しては、十分な技術基盤はできているんだと思います。それからもう1つは値段のことがございます。これはどちらかといいますと、五代さんのほうがいろいろお考えになっていると思いますが、どうでしょうか?
 
五代: ええ。宇宙開発事業団のほうでですね、技術基盤というんでしょうか、まず1番目に、この1年間で3機、H-IIロケットを完全に成功させました。現在それを改良しようという計画が既にスタートしておりまして、これは1番目にコストを下げよう、半分以下にしようというのがございますし、それからそれをファミリー化して、5割増し、あるいは倍くらいの打上げ能力を持たせようということです。
コストを下げるということについてちょっとお話しますと、宇宙開発の予算を非常に有効に使うと。もちろん宇宙開発の予算は、いま日本で2000億ですが、これを3000億、4000億にすると、それはわれわれも努力しますし、こういうことが望ましい方向ではありますが、それが増えなきゃ月探査はできないかというとそうではない。そのために資金を有効に利用したいということで、輸送系というのはやっぱり、どうしてもお金が高いですから、それからまず下げましょう。こういう主旨で半分以下にする。同じように全部半分以下にすれば、同じ資金でもって倍のことができるわけです。いろんな多様なことができるだろう。その最初として実はH-IIの改良というのをしているわけです。そうしますとコストのほうでいいますと、お金がこちらのほうからもゆとりが出てくる可能性がありますし、能力的にいえば先ほどの話のように、2トンの静止衛星が月へ行くということとほぼ同じですし、それの1/6くらいは月面に降りる。そこのロビーの月面車というのも、ゆうに降ろせるわけであります。
それ以外にもちろん、月探査にはいろんな技術がいりますが、事業団で1本の柱として地球観測衛星シリーズをやっております。3機ありますし、このあともずっとシリーズが続きます。もちろん地球のほうを眺めるセンサーと月を眺めるセンサーとは違いますから、そういう開発は必要でありますが、地球観測衛星技術というものは、月の観測技術の非常なベースとなっていると思っております。それからETS-Z、技術試験衛星Z号というのも計画しておりますが、これは宇宙空間で無人でランデブードッキング、あるいはロボット技術の試験をするというのも着々と進んでおります。またインフラとしては宇宙科学研究所の臼田の大きなトラッキングのアンテナがございますが、それに事業団のほうがかなり大きなネットワークを持っています。もちろん世界との共同でネットワークというのは構成されるわけですが、そういうインフラも整っている。それから月探査というのは将来は当然、国際協力でしょうが、国際協力の非常に大きな例として、いま宇宙ステーション計画を進めている。
いろんなことを考えますと、月探査の周辺、基盤技術だけではなくて、いろんな絡みとかも整ってきているんではないかと、こう思っているわけです。
総合的・段階的で、一過性でなくて、継続的に進めていくというのは皆さん基本的には同じ考えだと思うんですが。あと私が考えるのは、先ほどH-IIのコストダウンの時に申しましたけれど、じゃあ月探査のお金をどこから持ってくるんだという話がありますが、日本の宇宙予算、少なくとも日本でまとめれば2000億あるわけです。いま、だいたいその10%を宇宙科学研究所で使って、いろんな多方面の宇宙科学を研究されておりますが、それと別に、いわゆる月・惑星というようなものに、10%くらい出すのは、ともかく資金の効率的な運用ということを図り、また資金・予算の増大をだんだん図っていく、これは段階的だと思うんですが、周りの理解を得ながら進めていくということがあるとできるんではないか。予算がないからなかなかスタートできないというんではなくて、私は、いまの段階でまずスタートするべきだし、できると思っておりますが、その辺、先生どうでしょうか?
 
五代: ええ。宇宙開発事業団のほうでですね、技術基盤というんでしょうか、まず1番目に、この1年間で3機、H-IIロケットを完全に成功させました。現在それを改良しようという計画が既にスタートしておりまして、これは1番目にコストを下げよう、半分以下にしようというのがございますし、それからそれをファミリー化して、5割増し、あるいは倍くらいの打上げ能力を持たせようということです。
コストを下げるということについてちょっとお話しますと、宇宙開発の予算を非常に有効に使うと。もちろん宇宙開発の予算は、いま日本で2000億ですが、これを3000億、4000億にすると、それはわれわれも努力しますし、こういうことが望ましい方向ではありますが、それが増えなきゃ月探査はできないかというとそうではない。そのために資金を有効に利用したいということで、輸送系というのはやっぱり、どうしてもお金が高いですから、それからまず下げましょう。こういう主旨で半分以下にする。同じように全部半分以下にすれば、同じ資金でもって倍のことができるわけです。いろんな多様なことができるだろう。その最初として実はH-IIの改良というのをしているわけです。そうしますとコストのほうでいいますと、お金がこちらのほうからもゆとりが出てくる可能性がありますし、能力的にいえば先ほどの話のように、2トンの静止衛星が月へ行くということとほぼ同じですし、それの1/6くらいは月面に降りる。そこのロビーの月面車というのも、ゆうに降ろせるわけであります。
それ以外にもちろん、月探査にはいろんな技術がいりますが、事業団で1本の柱として地球観測衛星シリーズをやっております。3機ありますし、このあともずっとシリーズが続きます。もちろん地球のほうを眺めるセンサーと月を眺めるセンサーとは違いますから、そういう開発は必要でありますが、地球観測衛星技術というものは、月の観測技術の非常なベースとなっていると思っております。それからETS-Z、技術試験衛星Z号というのも計画しておりますが、これは宇宙空間で無人でランデブードッキング、あるいはロボット技術の試験をするというのも着々と進んでおります。またインフラとしては宇宙科学研究所の臼田の大きなトラッキングのアンテナがございますが、それに事業団のほうがかなり大きなネットワークを持っています。もちろん世界との共同でネットワークというのは構成されるわけですが、そういうインフラも整っている。それから月探査というのは将来は当然、国際協力でしょうが、国際協力の非常に大きな例として、いま宇宙ステーション計画を進めている。
いろんなことを考えますと、月探査の周辺、基盤技術だけではなくて、いろんな絡みとかも整ってきているんではないかと、こう思っているわけです。
総合的・段階的で、一過性でなくて、継続的に進めていくというのは皆さん基本的には同じ考えだと思うんですが。あと私が考えるのは、先ほどH-IIのコストダウンの時に申しましたけれど、じゃあ月探査のお金をどこから持ってくるんだという話がありますが、日本の宇宙予算、少なくとも日本でまとめれば2000億あるわけです。いま、だいたいその10%を宇宙科学研究所で使って、いろんな多方面の宇宙科学を研究されておりますが、それと別に、いわゆる月・惑星というようなものに、10%くらい出すのは、ともかく資金の効率的な運用ということを図り、また資金・予算の増大をだんだん図っていく、これは段階的だと思うんですが、周りの理解を得ながら進めていくということがあるとできるんではないか。予算がないからなかなかスタートできないというんではなくて、私は、いまの段階でまずスタートするべきだし、できると思っておりますが、その辺、先生どうでしょうか?
 
秋葉: 私は経済学者でも何でもございませんが、やはり最近のいろいろな経済事情を関心を持って聞いておりますと、これからどういうところへお金を使っていくかということがたいへん大事だという議論から、科学技術への投資が少しずつ重視されてきたというのは、まさに正しい方向ではないかと思うんですね。その中の1つに、やはり月の探査という、月活動への人間の活動の展開というものも含めて考えていただくというと、こういう予算というのは自然に出てくるのではないかなと思っております。
 
五代: 非常に大きな公共投資的なこともあるでしょうし、人類の基盤に非常に関わるということがだんだん理解されていけば、お金もいただけるんではないか。ただできることからやっていくということをしていかないと、お金がいただけたからスタートするというのでは、なかなかスタートできないかなと思っています。
月探査という非常に大きな問題は、国内ではもちろんオールジャパンでやるということで、したがってこういうシンポジウムも開かれていますが、実際に宇宙科学研究所さんが、先駆け的に月の探査、さっきの「はごろも」、「ひてん」、「ルナA」というのをされますし、そのあとはできるだけ、オールジャパン体制でやるようにということで、実際にもいろんなシナリオ、あるいは宇宙科学研究所と宇宙開発事業団の話し合いとか、前向きに進めているわけです。
国際協力との関係は、先生はどのようにお考えでしょう?
 
秋葉: いま国内の体制というお話がございました。確かに体制を作って、人を、という順番もあるのかも知れませんけれども、やはりいちばん育ちにくいのは人の問題ですね。ですから、この辺で、たいへん大きな関心をいま呼びつつあるので、これから大きくなっていく、というわけで、予算が大きくなっていくのに合わせて、人が育っていくのを大いに期待するわけです。
一方、欧米、特にアメリカはアポロ計画の話では、そういった人の面では、現在豊富に持っておるという状況にあるわけですから、実質的な面としてそういう人たちの能力を活用していくということが国際協力のポイントになるんじゃないかなぁという気がしているんですね。
 
五代: そうですね。月探査というのも宇宙ステーション計画に続いての平和的な国際共同事業の大きなサンプルになるんではないかと思います。いまステップを踏んでという中に有人を目指すけれど、それを無人で作っていくという1つのシナリオがあるんですが、やはり最終的、最終的というのもおかしいんですが、いまや宇宙飛行士も、秋山さん、事業団で毛利、向井、それからもうすぐ若田飛行士が飛びますし土井飛行士も飛ぶでしょう。さらに、ご存知のように次の宇宙飛行士の募集もしておるというわけで、日本の輸送系に乗っているわけではありませんが、着々と有人宇宙についても日本は経験を積み重ねて実績をあげておると思います。またJEM、宇宙ステーション計画というものがもうすぐ本格的になりますが、本格的有人宇宙活動という時代ももうすぐだと思います。月探査もいずれはこの有人基地というものになるのは当然だと思います。地球人というのは宇宙人でありますし、宇宙というのはそういう意味では人間の活動領域だと。いままでどうしても、私たち輸送系をやっておりますと、貨物輸送だけしているわけですね。人工衛星とか探査機とか。人が乗る、乗って行くというのが当然その次にあるとわれわれ思っております。
月の魅力という、最初に映画の話からいたしましたが、あれは一過性のアポロと、それから人類のいちばんもとの夢の月世界旅行というようなことがありますが、いよいよわれわれも月へ、本格的に月探査に向かって進む時期ではないかと思うんですが。最後に先生、そういう点から、何かひとこと、いかがでしょうか。
 
秋葉: おっしゃるように有人という段階までいけば、本当に多くの方の支持を得られると思うんです。大いに期待はしたいわけですけれど、先ほどアメリカから、ワークショップの際のお話ですけれど、確かにそういう面はあるけれど、有人ということで失敗をしたら、この影響は致命的なものになるということを、非常に強くいわれたわけですね。その辺は確かにその通りで、まずは無人で、人が向こうへ行ってともかく生きていられるという状況を作ってから行くというのがやはり基本じゃないかなと思いますね。いずれにしても、そういうことで月へどんどん人が行けるという時代が、30年後にくるように、ぜひそうしていただきたいと念願しております。
 
五代: そうですね。われわれ、協力していい方向へ進めたいと思っております。
どうも今日はありがとうございました。

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