カッシーニ/ホイヘンス ギャラリー
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解説 カッシーニが2004年12月31日に撮影した、土星の衛星イアペタスの画像です。イアペタスは直径が1436キロメートルあります。
全体に、暗く、クレーターの多い領域が半球を覆っており、この領域を「カッシーニ・レジオ」(カッシーニ領域)と呼びます。この写真はイアペタスの赤道と西経90度付近を写したもので、この地点は土星に必ず向いている部分です。
このカッシーニ領域付近の暗い物質は反射率がたった4%しかなく、この物質にほぼ均一に覆われています。しかし、北緯40度くらいまで行きますと、今度は明るい物質(おそらくは氷)が表面を覆っています。この明るい物質の反射率は60%以上にも達します。しかしこの領域は一様というわけではありません。より詳しく調べてみると、ところどころに南北方向に走る黒い筋のようなものがみえます。この筋は幅数キロ、長さは長いもので数十キロメートルにも達します。
直径約400キロの古いクレーターが、中央少し上にみえます。このクレーターは、より新しいクレーターによってすっかり覆われてしまっています。クレーターの周りは急崖に囲まれています。この崖は、周りのクレーターもそうですが明るくみえており、おそらく明るい氷がみえているものと思われます。特に中緯度地域では、赤道からみて明るいがけが外側(極方向)を向いており、一方で反対に南側を向いている崖はより暗い物質で覆われているのがわかります。
カッシーニが撮影したイアペタスの画像でもっとも特徴的なものは、赤道と同じ位置にある山脈地形でしょう。この山脈は画像の中でもはっきりとみえ、幅は20キロメートル、西(左)端から東(右)側の昼/夜の境目付近まで、長さ1300キロにもわたって赤道に並行に追うことができます。西(左)の地平線付近では、この山脈の高さは約13キロにも達します。なぜこのような山脈ができたのかは分かっていません。上に盛り上がってできた地形なのか、引っ張られることによってできた割れ目から、内部の物質が流出してできた地形なのか、といった点もよく分かっていません。
カッシーニ領域の成因については古くから科学者の間で議論になってきました。考えられている成因の1つとしては、この暗い物質がイアペタスの内部から噴出したものであるというものです。別の説として、より外側を回っていた土星の暗い表面の衛星に何かが衝突し、吹き飛ばされてついた物質だというものもあります。
赤道付近に暗い物質が均一に分布していること、高緯度に行くにつれて暗い物質が薄くなっていくこと、カッシーニ領域の周辺では暗い筋がみえることなどを考えると、この暗い物質は上から覆ったものであるということが推定できます。今回、カッシーニ探査機の写真から判明した重要な事実として、カッシーニ領域には何かが噴出したようなあとがみつからない、ということがあります。クレーターが非常に多いことから、暗い物質の下にある物質は古いものだということが推定できます。そこで、カッシーニ領域はプリューム型の噴出によって形成され、ちょうどそのときに赤道に沿った山脈も形成されたと考えられます。一方で、暗い物質は外からやってきたものではないかと考えられます。
この写真はイアペタスから172400キロメートル離れたところから撮影されました。位相角は50度、解像度は1ピクセルあたり1キロメートルです。
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