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トピックス 「のぞみ」は残念ながら、2003年12月9日午後8時30分時点で、機器の回復が困難であることが確認され、火星周回軌道への投入を断念しました。
その後、火星への衝突確率を下げるため、火星にもっとも近づく点(近火点)の高度をさらに遠ざけるための軌道変更が実施されました。「のぞみ」は、2003年12月14日に火星に最接近したあと火星を離れる、「フライバイ」とよばれる軌道をとっています。2003年12月16日には火星の重力圏を離れ、その後、太陽の回りを半永久的に周回する人工惑星となりました。
(2004年1月13日22:10更新)

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日本の火星探査


のぞみ (PLANET-B) −火星大気の謎に挑む−

火星に接近する探査機「のぞみ」
火星に接近する探査機「のぞみ」
イラスト: 宇宙航空研究開発機構(JAXA)


「のぞみ」の目的

火星には薄いながらも大気があります。しかし、火星には磁場がないため、直接太陽風が火星大気に吹き付けています。このため、大気が上層部で少しずつはぎ取られるという現象が起きています。長い長い火星の歴史の中で、火星の大気は少しずつ失われていったと考えられています。

火星大気がはぎ取られていくということは、火星から水が失われていくことでもあります。生命をはじめとする火星の環境を知るためには、火星大気がどのような構造をしているかを知らなければならないのです。
プラネットB探査機 (PLANET-B)は、宇宙科学研究所(現・宇宙航空研究開発機構(JAXA) 宇宙科学研究本部)が1998年7月4日に打ち上げました。打ち上げ後、「のぞみ」と命名されました。
「のぞみ」は火星を回りながら、火星大気や磁場の様子などを調べることを目的としていました。火星への到着は2003年12月で、予定では、火星の回りを回りながら、2年間(火星における1年間)にわたって観測を続ける予定でした。
「のぞみ」は重さが215キログラムという、小型の探査機です。しかし、14件もの科学観測のための機器を搭載しています。この中には、火星表面を撮影するためのカメラ、磁力計、太陽風検出のための測定装置などが含まれています。
また、この「のぞみ」には、一般の方27万人からのメッセージが搭載されていることでも、有名です。


「のぞみ」の経緯

1998年7月に打ち上げられた「のぞみ」は、月と地球の引力を使って加速する「スイングバイ」という技術を利用して速度を上げ、火星へと向かう予定になっていました。
月を利用した2度のスイングバイを行った後、1998年12月、地球を利用したスイングバイを行っている際に、制御エンジンにトラブルが生じ、予定していた軌道に探査機を投入することができなくなってしまいました。
このため、宇宙科学研究所ではミッションの再検討を行いました。その結果、新たに地球を利用したスイングバイを2度行うことによって、2004年のはじめ頃に火星に到着できることを突き止めました。
本来、「のぞみ」は打ち上げ後1年弱で火星に到着する予定だったのですが、この計画変更のため、4年以上にわたって宇宙にとどまることになってしまいました。しかも、この時期は太陽の活動が極めて活発な時期にあたります。こういった時期には、太陽フレアと呼ばれる太陽面の爆発で、強烈な粒子線が飛んでくれば、機器へダメージを与えることになりかねません。

そして、その心配が現実のものとなってしまいました。2002年4月に、太陽面で発生した巨大なフレアからの粒子線が「のぞみ」を直撃、電源系が停止してしまうという極めて重大なトラブルに見舞われました。
しかし、宇宙研スタッフの必死の努力により、かろうじて衛星の制御に使う燃料を「溶かす」ことに成功、2002年12月には、第1回の地球スイングバイに成功しました。さらに、2003年6月には、第2回の地球スイングバイを実施、成功しました。
JAXAでは、電源系を回復させるための努力を行ってきましたが、火星軌道投入期限を迎えても電源が回復しなかったことから、2003年12月9日、火星の周回軌道に「のぞみ」を投入することを断念しました。これは、火星へ衝突してしまう確率を、少しでも下げるためです。
このあと、「のぞみ」は12月14日に火星に最接近し、火星の上空約1000kmを飛び去ります(いわゆる「フライバイ」を行います)。その後、火星から離れ、太陽の回りを半永久的に回り続ける「人工惑星」となりました。
(2004年1月13日現在)

関連リンク 電源回復関連 (出典を記していない資料は、JAXA宇宙科学研究本部)