NASA、将来火星ミッションとして2提案を選定 (2007年1月9日17:00)
月曜日(8日)、NASAは将来的な無人火星探査計画として、2つの概念提案を受理しました。これらの計画は、火星の大気や機構、人間の活動のしやすさなどについて、これまでの知識をさらに大幅に広げるものと期待されます。
さらに、NASAは将来のヨーロッパの火星探査計画に参加するアメリカの科学者に対して資金提供を行うほか、将来的な火星探査につながる機器開発についても資金を拠出することにしています。
「これらの2つの計画を選択したことで、火星の気候や大気組成などについて、私たちの知識を大幅に広げる、これまでに例のない探査が行われる。」と、NASAの科学ミッション担当副長官であるマリー・クリーブ (Mary Cleave)博士は述べています。
それぞれの計画に関しては、まず約200万ドル(約2億4000万円)が9ヶ月にわたる実現可能性調査のために支給され、その後詳細概念検討が行われます。NASAでは、2007年の末に、この2つの計画のうちから1つをスカウトミッション(低予算で行われる無人火星探査計画。2007年に「フェニックス」が打ち上げ予定)として選定し、本格的な開発を行うことにしています。打ち上げは2011年が予定され、費用としては4億7500万ドル(日本円で565億円)を越さないようにする予定です。
選定されたのは、以下の2つの探査計画です。
- メイバン(MAVEN: Mars Atmosphere and Volatile Evolution mission)…この計画では、このクラスとしてははじめての機器を搭載し、火星の気候や居住可能性などについての調査を行うことを目的としています。また、火星の上層大気や電離圏などについての観測を目指しています。主任科学者はコロラド大学ボールダー校のブルース・ジャコースキー(Bruce Jakosky)博士で、NASAのゴダード宇宙センターが計画管理を行います。
- 大脱出(The Great Escape)計画…火星大気の進化の基本的プロセスを、上層大気の構造やダイナミクスを調べることにより明らかにしようという計画です。さらに、大気中にある、生命活動により発生したと思われる物質(メタンなど)を測定します。主任科学者はサウスウェスト研究所(コロラド州ボールダー)のアラン・スターン(Alan Stern)博士で、サウスウェスト研究所(テキサス州サンアントニオ)が計画管理を行います。
また、NASAはワシントン大学セントルイス校のアリアン・ワン(Alian Wan)博士を、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の火星探査計画であるエクソマーズ計画(ExoMars)の科学チームメンバーとして選定しました。博士はNASAから80万ドル(約9500万円)の資金提供を受け、エクゾマース計画において科学、鉱物学、生物学的な調査研究を行うことになっています。エクゾマース探査機は2013年に打ち上げ予定です。
さらにNASAでは、エクソマーズ、または他の将来火星探査計画につながる技術開発研究を目的として、2つの計画に対し合計1500万ドル(約18億円)を拠出することにしました。この2つの計画は以下の通りです。
- ユーレイ火星有機物・酸化物探査(Urey Mars Organic and Oxidant Detector)…ユーレイ(訳注: 有名な化学者のハロルド・ユーレイにちなんだものと思われます)探査装置と呼ばれる3つの相補的な検知器により、有機物や酸化物を調べる計画です。主任科学者はカリフォルニア大学サンディエゴ校のジェフリー・バーダ(Jeffrey Bada)博士で、機器開発及び計画管理はNASAのジェット推進研究所で行われます。
- モマ(火星有機分子検知器、Moma: Mars Organic Molecule Analyzer)…火星表面にある有機分子の痕跡と表面環境を、質量分析器とガスクロマトグラフィーで探す計画です。主任科学者はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のルアン・ベッカー(Luann Becker)博士です。
これらの計画は、2006年8月に行われた計画提案において募集された26の提案から選定されたものです。