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マーズ・リコネサンス・オービター 科学機器
火星の謎を探るマーズ・リコネサンス・オービターには6つの科学機器が搭載されています。これらの機器のデータを合わせて、火星の真の姿を探り出します。
- 高解像度撮像装置 (HiRISE: High Resolution Imaging Science Experiment)
- 火星の表面を帯状に撮影するための装置です。カメラは可視光線領域及び近赤外線領域をカバーします。特異なのはその解像度で、解像度は1メートルに達し、これまでよりも火星の地形などをはるかに詳しく知ることができます。
近赤外線領域をカバーすることで、鉱物についても極めて詳しい情報を得ることができます。探査機の高度(200〜400キロメートル)にもよりますが、1ピクセルが30〜60センチメートルという極めて優れた解像度を持ち、鉱物的な特徴などを1〜2メートルの精度で決めることができます。層状の地質構造や谷、水が流れた後などを、これまでよりもはるかに高い精度で撮影し、そのでき方などについての知識を得ることができます。
なお、高解像度で撮影する地点については、これまでの探査機(マーズ・グローバル・サーベイヤや2001マーズ・オデッセイ)によって撮影されたデータをもとにして決定されます。
- 広範囲カメラ (CTX: Context Camera)
- 高解像度撮像装置と小型観測撮像スペクトロメータと同じ範囲を撮影します。この両方の装置よりも広い範囲を撮影することにより、地域的な特徴などを明らかにすることができます。
広範囲カメラを含めた3つの観測装置が揃うことで、強力な観測プラットフォームが完成します。例えば、マーズ・グローバル・サーベイヤでこれまで撮影されてきた層状の構造は、水の流れでできたものか、火山性のものなのか、区別するのが非常に難しいものでした。高解像度撮像装置によるきめ細かい撮影と、小型観測撮像スペクトロメータによる鉱物学的データ、そしてこの広範囲カメラによる広域情報で、こういった問題にも結論が出せるようになるかも知れません。
広範囲カメラは火星の幅400キロの領域を撮影することができ、解像度は1ピクセルあたり8メートルです。
- 火星カラーイメージャ (MARCI: Mars Color Imager)
- 火星カラーイメージャは、火星の表面の様子を定期的に撮影し、その違いを調べることで、火星の日々の天気予報を提供します。また、砂嵐や極冠の消長なども調べます。
また、紫外線領域の観測によって、数十キロメートルスケールでのオゾン量や二酸化炭素量の変化を把握します。
- 小型観測撮像スペクトロメータ (CRISM: Compact Reconnaissance Imaging Spectrometer for Mars)
- この装置は、水や温泉、熱水や湖、池などによって生成された鉱物が存在するかどうかを調べます。このスペクトロメータは、火星表面を解像度18メートルで探査し、可視光から赤外線領域の数百のスペクトルチャンネルを利用して鉱物を同定します。
- 火星気候サウンダ (MCS: Mars Climate Sounder)
- 火星の温度や湿度、大気中のちりの量を知ることは、火星の気候を知る上で重要なことです。火星気候サウンダはそのための装置です。
この装置は、火星の大気の温度や組成を、高さごとに調べることができます。可視光から近赤外領域までの9つの観測用のチャンネルを持ち、そのスペクトルから大気の様子を把握します。
可視光領域の光では人が見るのとほぼ同じものがみえます。赤外線領域データでは物体の熱をみることになるため、その物体の温度を知ることができます。近赤外領域データでは、太陽エネルギーが大気にどのような影響を与えているかを知ることができます。熱赤外線領域のデータからは、大気の温度、圧力、水蒸気やちりの様子などが分かります。
この装置は火星の大気を垂直方向にみることで、大気の様子を立体的に知ることができます。大気の厚さ5キロ毎に観測することが可能です。こうして得られたデータは3次元の断面図として日々の変化が記録され、昼夜による違い、温度や圧力、湿度やちりの高さによる差異などが観測されます。
- 浅部レーダ (SHARAD: Shallow Radar)
- SHARADは、火星の地殻の浅い部分(深さ1キロメートルまで)にある水または氷を検出するためのレーダです。
15〜25メガヘルツの電波を火星表面に照射し、その反射を調べます。反射の強さや弱さにより、地下にどのような物質があるかを知ることができます。
水平解像度は0.3〜3キロメートル、垂直解像度は15メートルで、3次元で地下の様子を把握することができます。
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