全文検索 総合案内 サイトマップ
> 月・惑星へ > 火星・赤い星へ > 火星探査 > メイバン > 探査の概要
月・惑星へ

火星・赤い星へ


メイバン
探査の概要

■火星の大気の謎に挑む
火星は現在は地球の100分の1という非常に薄い(少ない)大気に覆われていますが、ほとんどの科学者は、かつて…少なくとも40億年前には、火星にはもっと濃い大気があったと考えています。
数多くの火星探査により、火星表面にはかつて液体の水が、それも相当量存在していたことが明らかになっています。液体の水が存在できるということはそれだけ暖かかったということであり、その暖かさを支えていたのは、濃い大気であったと考えられています。
それが長い歴史の間に失われ、私たちが今みる、砂ばかりの火星の姿になってしまったのだと考えられています。つまり、火星の大気の進化の歴史を調べることは、かつて表面に豊富な水が存在した火星の過去の姿を探ることでもあり、その時代にひょっとすると存在したかも知れない(そして、今でも地下などで生き延びているかも知れない)生命の姿を探ることにもつながります。
火星の大気が今のように薄くなってしまったのは、火星大気の上層部から、大気が少しずつ逃げ出してしまったためだと考えられています。火星大気の上層部では、太陽風が火星の大気を少しずつはぎ取り、そのために大気は徐々に薄くなってきたと考えられています。では、そのような大気をはぎ取るメカニズムは具体的にどのようなものなのか、そしてどのようにして大気が失われてきたのか、ということを探るのが、このメイバンなのです。

■火星では1年間の探査、大気上層部を集中的に観測
メイバンは2013年11月に打ち上げられました。打ち上げ後、約10ヶ月をかけて火星に赴き、2014年9月に火星周回軌道へと入ります。
その後、約5週間かけて探査機の初期試験や軌道変更を実施し、その後本格観測に入ります。この観測期間は基本観測機関として1年(地球の1年)を予定しています。
メイバンの観測軌道は円軌道ではなく楕円軌道です。火星にもっとも近い点は高さ150キロメートル、遠い点は約6000キロメートルとなります。この150キロメートルという高さはちょうど火星大気の上層部にあたり、ここで詳しい観測を行うのに適しています。
さらに、メイバンは探査期間中にこの高度を5回にわたって下げて、高さ125キロメートルの地点を通過するようにする予定です。このような観測を行うことによって、火星上層大気の様子を立体的に明らかにすることができます。
メイバンは2つの「パッケージ」と呼ばれる科学観測機器群と、中性ガス測定用の質量分析計を搭載しています。
パッケージのうち1つは「粒子・場観測パッケージ」と名付けられており、太陽風や磁場、プラズマなどの観測を行います。これにより、火星上層大気と太陽風との相互作用を調べることになります。
もう1つのパッケージは「リモートセンシングパッケージ」と呼ばれており、火星上層大気の状況を詳細に観測するための装置となっています。

■「のぞみ」の無念を10年後に晴らせるか?
メイバンは、火星上層大気の観測を専門に行うことを目指すはじめての衛星とNASAでは説明しています。しかし、実際にははじめてではありません。かつて日本が、同じ探査目的の火星探査衛星「のぞみ」を打ち上げているからです。
「のぞみ」の目的も、このメイバンと全く同じで、火星上層大気の謎を探ることでした。1998年に打ち上げられた「のぞみ」は、本来であれば2年間火星を周回して観測を行う予定でしたが、度重なるトラブルにより探査機の機能がほとんど失われ、最終的には火星周回軌道へと投入することができませんでした。
JAXAが「のぞみ」の火星周回軌道への投入断念を決定したのが2003年12月。日本の月・惑星探査の歴史にとって大変悔しい日となりました。そして奇しくもちょうど10年目の2013年、同じ目的を背負った探査機が火星へと向かいます。メイバンは果たしてミッションを達成し、火星上層大気の謎を解き明かしてくれるでしょうか。アメリカはもちろん、日本の、世界の科学者も、その成否、そして探査機が明らかにしてくるデータを待ち望んでいます。