月の模擬砂とは?
この砂は、月の砂ではありません。月の砂に似せて(模擬して)、地球の岩石から作ったものです。
月の岩石は、一見するとものすごく特殊にみえるかも知れません。しかし、実は地球上の岩石と、そう変わらない成分からできています。
月の海を作っている岩石は、地球上の火山などでよく見られる「玄武岩」(げんぶがん)と呼ばれる種類のものです。これは、月の黒っぽい部分、満月のうさぎでいえば、うさぎのからだの部分にあたります。そのまわりの白くて明るいところは、「斜長岩」(しゃちょうがん)と呼ばれる岩石でできています。地球上では斜長岩はあまりみかけませんが、アフリカの火山地域などにあります。
月の表面は、細かい砂(レゴリスといいます)に覆われています。アポロの宇宙飛行士たちは、月に行って、石や砂などを地球に持ち帰ってきました。そこで、持ち帰ってきた砂に似せて、地球上の玄武岩などの岩石から月の砂に似せたものを作ることができます。これが、月の模擬砂(レゴリス・シミュラント)です。
月の砂の特徴は、砂の粒が非常に小さいことです。通常、海の砂の大きさは、200〜300マイクロメートル程度ありますが、月の砂の大きさは、100マイクロメートル以下、数十マイクロメートルくらいになります。これは、月の表面に岩石が衝突してクレーターができたときに、細かい破片が飛び散って、それが砂になったからだと考えられています。
この月の砂は、月の砂の成分と良く似た、富士山の溶岩をもとに、それを月の砂のように細かく砕いて作ったものです。
このような砂が必要な理由ですが、例えば、月面で走らせたいローバ(月面車)などの車輪の実験や、穴掘り装置の特性を調べたりするのに使われます。本物の月の砂は大変貴重で、こういった実験をするためにはそうそう簡単に、しかもたくさん使えるものではありません。模擬砂を使うことで、そういった装置などを本物に近い形で試すことができ、将来、私たちが月に向かうための技術を開発していくことができるようになります。
(注) レゴリス・シミュラント=regolith simulant
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