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月を知ろう

月に関する研究発表
第1回パネルディスカッション「月の氷」


No. 21 2000年11月24日【金】10:36 金森洋史(NASDA)
どうも.久々に登場の金森です.
月での水の利用方法につきましては,基本的には出村さんが書かれたようなことになりますね.
すなわち,大きく分けると生命維持と工業利用ということになります.
ただし,水をそのまま水として利用することもできるのですが,それをさらに電気分解して,酸素と水素の形にした方が,より使い勝手が良くなります.
ご存じのように,酸素は我々の呼吸に欠かせないものですし,またロケットの燃料(酸化剤)として利用することもできるからです.一方,水素はいわゆる還元剤として利用することができるので,例えば月の鉱物(酸化物)をこの水素で還元する(酸素を抜き出してしまう)ことによって,金属などを取り出すことができるようになります.
これをするためには,もちろん水を電気分解する装置が必要になりますが,使い勝手を考えるとこのような装置が月にあっても良いのではないかと思います....ともう一つ,ご存じの方も多いと思いますが,酸素,水素,水とくれば燃料電池を思い浮かべる人もいるでしょう.

このように,水があると様々なことができると期待されます.
...が,その水が月にあると嬉しいか,ということになると,単純には喜べないのです.
その理由の一つは,月で水を活用する段階では,水以外の物資もたくさん必要になるからです.例えば炭素や窒素,その他の精密部品(月で作れないようなもの)などがあります.地球から水を運ばなくて良いことが大きなメリットであることは間違いないのですが,水だけあれば良いということではないのです.いずれにしても多くの物資を地球から運ばなければならない状況は,大きく変わらないのではないかと思われます.
また,永久影にある非常に低温の氷をどのようにして取り出すか,という問題もあります.そのような低温下で,ある程度長期的に稼働する装置を作ることは,現状の技術では結構厳しいのではないかと思います.これに関しては,今後の開発に期待しましょう.
もう一つの理由は,月の極地で水が採れたとして,それを使いたい場所まで運ぶことも大変ですよね.例えば地上で考えると,北極で氷を採りそれを運んで来て日本で使うというような状況もあり得るだろうということです.地上では交通網も発達していますから,水を長距離運ぶことはそんなに難しいことではありませんが,月ではどうなんでしょう.もちろん,基地を極地に近いところに建設すれば良いのですが,そうとは限らないでしょうし...
以上のように資源利用の観点から考えると,実は月の極地に氷があったとしても,単純に「嬉しい!」とまでは喜べないのです(水を差すようですみません).

No. 22 2000年11月24日【金】16:12 出村裕英(NASDA)
金森さま、みなさま:

> ...が,その水が月にあると嬉しいか,ということになると,
> 単純には喜べないのです.

あらららぁ...

> 水だけあれば良いということではないのです.いずれにしても多くの物資を
> 地球から運ばなければならない状況は,大きく変わらないのではないか
> と思われます.

月表層の化学組成は、太陽系元素存在度よりも揮発性元素に乏しく、特に炭素がない、というのが「農業・自活」する点で問題ですね。月の氷から少し逸れますが、考えないといけない要素です。

> 月の極地で水が採れたとして,それを使いたい場所まで運ぶことも大変

というのも、コストと絡みますが、大問題です。輸送基盤がありません。海がないので、水運は×。鉄道はもちろん高速道路もありません。石油のようにパイプラインで送るのは、長距離の気密確保が困難です。(地球では、漏れても平気で送っていますが、真空に穴が空くと...?)

そもそも、液化(固化)して運ぶとすると、温度圧力管理が大変そう。何かの水和化合物にして運び出すのか、水素と酸素に分解して各々吸蔵合金に染みこませて運び出すか(酸素吸蔵合金なんてあるのかな?)何か工夫が必要そうです。

この手の研究は、現状、どんなものが検討されているのでしょう?

> 以上のように資源利用の観点から考えると,実は月の極地に
> 氷があったとしても,単純に「嬉しい!」とまでは喜べないのです
> (水を差すようですみません).

月に水を差してくれると、大歓迎なのですけどね。

No. 23 2000年11月24日【金】18:03 川勝康弘(NASDA)
氷が月にあると何が嬉しいか?

「利用」の話が先行しているようなので、掘り下げてみましょう。

 対象とするフェーズとしては「月に人間が滞在する」ぐらい以降に絞ってよいでしょうか。
  • 無人の探査ミッションで帰りの燃料を調達
  • 短期的な有人ミッション(アポロ形式)で生活用水を調達
はちょっと考えにくいですからね。

 で、この「月に人間が滞在する」にもいろいろな段階があると思うんです。金森さんや出村さんが述べられた水の利用目的には、生活用水から工業用水、農業用水まで、かなり広い範囲のものが含まれています。
 でも、最初の段階、つまり国際宇宙ステーションのように5〜10人程度が滞在する段階では、用途は生活用水だけですよね。で、次の段階として、工業か農業かわからないが、物を生産する段階になってくる。
 このように、段階を分けたのは、それぞれの段階で「必要とされる物資の中で水が占める割合」が変わってくるのではないか、と思うからです。

 金森さんがおっしゃるように「水以外の物資もたくさん必要になる」のは事実だと思います。必要な物資の中で水が占める割合が10%なら、水だけを現地調達しても、あまり意味がないかもしれません。でも、必要な物資の中の半分が水であれば、現地で調達する意味が高まってくるのでは、と思うんです。

 工業・農業の段階はちょっと後回しにして、生活用水について調べて見ました。NASDAのECLSS(Environment Control and Life Support System)のホームページ
 http://sentan.tksc.nasda.go.jp/eclss/eclss.html
には、ECLSSの環境要求モデルというのがあって、一日に一人の人間が必要とする物資として、
・酸素 0.85kg
・飲用水 2.5kg
・衛生水 25.0kg
・食料 1.1kg
・その他 1kg
となっています。衛生水の90%はリサイクルするとしても、このモデルからすると必要とする物資の60%以上は「水」ということになります。これぐらいの割合であれば、結論は別として
 「月にある氷を活用できる可能性はないか」
を考えてみる価値はあると思うのですが。

ただ、当然このあとに、
  • どのように水を取り出すの?
  • どのように必要なところまで運ぶの?
という議論が出てくるんですが。

No. 24 2000年11月24日【金】20:22 出村裕英(NASDA)
月の氷について、「科学」をするか、「利用」を目指すかについて、相反する意見が一通ずつ届きました。なかなか、むずかしい問題、です。このHPを見に来る人達は、どういった意識の方が多いのでしょうね?

個人的には、科学(試行錯誤&発見)をする偵察・基礎調査ミッションが成功してから、本格的な実利用ミッションに移行する方が「安全」だと思っています。必ず実利用に結びつけるべきかどうか(実利用の見通しが立つまで科学調査はするべきでないか)...人によって意見の分かれるところでしょう。

神奈川県の女性から:
> ところで月に水があったとした場合、「利用」と「科学」という
> 2つの考え方があるとのことですが、「利用」はどうかな?
> と思うのです。
> 地球のように雨が降るわけでもありませんし、たとえ水が
> 大量に存在していたとしても、無限ではないから、いつかは
> 無くなってしまいますよね。
> それに、安全に飲めるのかどうかも心配です。
(中略)
> > 春山さんの話の中でも、月の氷の起源にはいろいろな可能性が
> > ある、とおっしゃってます。ということは、月の氷を調べてみる
> > と、単にH2Oがあったというだけでなく、いろいろな科学的発見に
> > つながる可能性があるのではと推測しますが、
> 何が見つかるかと考えただけでワクワクします。
> 貴重な月の氷はやはり「科学」活用が良いと思います。

埼玉県の男性から:
> 「利用」を進めて「科学」が加速する事があっても、その逆は
> 遠い道に見えます。学術調査を行うだけで、宇宙の資源活用や
> 工業基盤の確立が出来る筈がありません。
(中略)
> 問題は施設利用料を含む商業権の確保とコストの回収期間を
> 如何に短縮するか、そして世紀をまたがる事業計画に如何に
> 世界の官民から投資を集めるかでしょう。また、宇宙で自給率の
> 高い生活圏を築く上で確立すべき技術の多くは、地球の循環環境を
> 保つ上で重要なものになる為、民間投資の対象となりうると同時に
> 民生移転によるパテント収入も期待できます。何より、多くの
> 人間は学術研究とは無縁で関心もないまま一生を終えますが、
> 老後や子供の豊かな生活の為には、お金を惜しまなかったりする
> ものです。

No. 25 2000年11月24日【金】22:53 金森洋史(NASDA)
川勝氏のご指摘のように,段階的に水の利用を考えていくことも一案かもしれませんね.
ただ,現地(月)の資源を利用する場合の本質は,その場所とその時期においてもっとも経済的でなければなりません.
月の水を利用するのであれば,氷を採取し,解かし,精製し,運搬する装置が必要となりますので,それなりの設備投資をしなくてはなりません.この初期投資プラス運用費を製造する水の量で割りますと,そのときの水の単価が出ます.この単価で比較すると,利用する水の量が少ない段階では,地球から運び込んだ方が安いことも考えられます.基本的には,月(や他の惑星)でどのような物資を製造する場合でも,初期投資があるので,ある程度の量を製造(利用)しないと経済的には合わないのが通常です.
この意味におきましても,埼玉の男性の方が指摘されたように,ある意味での「商業化」を意識しないとなかなか開発は進められないと思います.

ただ,経済的に合わないことを敢えてやる必要があるのは,その「水」を科学する場合でしょう.その場合の「水」には大きな付加価値がありますので,単純に経済性だけでは判断できません.地上における考古学のように,人が荒らしてしまってからでは遅すぎる情報が月(の氷)には沢山あると思います.「利用」を考える前に,まず「科学」することが大事ではないかと思います.

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