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月を知ろう

月に関する研究発表
5.「バイオスフィア2」の経験について
President,Paragon SDC Dr.Taber MacCallum
紹介: 宇宙科学研究所 秋葉鐐二郎


バイオスフィア2の建設にあたっては、既存のテクノロジーを新しい発想で結び付けたわけですが、ここで使いました機械の部品の多くは市販のものを使いました。それをバイオスフィア2で使えるように改造したものです。われわれは液体チッソ、水素その他基本的な消費化合物を自分たちでつくり、バイオスフィア2内の規格・基準というものを設けました。これは空気の分析をやっているところです。

これはコマンドルーム、指令室ですが、机に座ってミーティングなどをしています。ビデオを通して本部のミッションコントロールとコミュニケーションを取ります。データ分析等もこの部屋を通して行なわれます。

これは農業バイオームと呼ばれるところです。次にOHPを示しながら農業バイオームを説明したいと思います。いつでも作物が成長しています。すべての食品はここから得られなければなりません。5か月かかってやっとピザの材料ができます。1つのピザを作るのに5か月いろいろな作物を作って、それから作らなければなりません。それぞれの作物がいつ収穫できるかということをあらかじめ入念に計画しておかなければなりません。2年間、絶えることなく常に得られるようにしておかなければならないわけです。ピーナッツ、いんげん豆、植物、野菜、サツマイモ、米、麦などの穀物すべてこの地区で生産されました。

またスライドに戻りますが、これは農業バイオームの別のショットです。われわれの時間の1/3は食物の処理に使われておりました。働く時間の1/3が食べ物の処理に使われていたわけです。いまは小麦をお見せいたしました。それからピーナッツを収穫しているところです。パパイヤ。米、稲をちょうど植えたところです。バナナ、糖分の補給のためにバナナは重要でした。

われわれは常に食物に飢えていました。食物の生産が計画通りに進みませんでしたので。つまり照度が低かった、光が十分に得られなかった、光合成が足りなかったということで、常に食物不足に悩んでおりました。しかしここですとバナナがいっぱいありますので、ここにくると心が豊かになるという感じでした。米を収穫しているところです。すべての植物というのは、ピーナッツの葉っぱの部分や茎の部分は人間は食べられませんのでヤギに食べさせます。ヤギからは乳と肉を採りましたし、それから野禽類、ニワトリも育てていました。人間が食べられない食物は飼料として動物・家畜・野禽類に与えておりました。豚を飼っていた時もありました。しかし人間と同じものを食べてしまいますので、なかなか豚に与えられるものがありませんでしたので、豚を食べてしまいました。最終的に豚は人間の口に入ってしまいました。これがビートです。私は、もう一生食べなくてもいいというくらいビートを食べすぎました。もう、うんざりです。これはヤギの乳絞りをしているところです。これは生まれて1時間しか経っていないヤギの赤ちゃんです。9か月ごとにヤギの赤ちゃんが生まれました。つまりフレッシュなヤギの乳が欲しいということで、ヤギに子供を生ませました。ヤギがケガをしますと注意しなくてはなりません。いま獣医さんが外部からもたらされましてヤギの治療にあたっているところです。ケガをしましたので手術をしなければならず、睡眠薬を与えて眠らせているところです。新しく生まれたヤギです。一面では、農夫という役割も果たさなければならないわけです。屠殺というやっかいな仕事もあるわけです。完全に食物を育てる、動物を育てる、そして最終的にはそれを殺さなければならないという意味で、農夫としてあらゆる仕事を完璧にこなしました。

これは採れたものでご馳走を作っているところです。常に食物不足に悩んでいましたので、少なくとも1か月に1度くらいは有り余るほどの食べ物を前にしてご馳走にありつけるという機会を設けることが大事でした。そういうご馳走が並べられているところですね。ヤギが出ています。米もありますし、野菜、サラダ、クレープ、パイ、フランス式のパンケーキ、パンドーナツ、豆……。とにかくありとあらゆるご馳走が取り揃っています。豊富さというのがだんだん失われていってしまいます。これだけ揃っていればいいんですが、なかなかそれが1か月に1度くらいしかできないということです。2〜3か月置きにコーヒーが飲めました。あまりコーヒーの木を育てるスペースがなかったので2〜3か月に1度づつくらいしか飲めませんでした。コーヒーを煎れる時には、非常に強く感じてしまいました。もうとにかくコーヒーが飲める日には、みんな興奮して気が狂ったように走り回っていました。

これは廃棄物の再利用システムですね。人間が出した汚水、シャワーを使った汚水ですとか、廃棄物、それを再利用しているわけです。このシステムはNASAが作ったもので食物の潅漑設備のために使ったりもしています。炭素や栄養成分はバイオスフィア2の中で完全に循環しています。ですから人間や動物が出した廃棄物も完全に還元されるわけです。循環が完璧に行なわれているわけです。この植物の中でも人も動物も食べない部分というのは粉々にされて分解されます。二酸化炭素が必要になった時には、これを何とか利用するということで、こういうふうに堆肥化した、あるいは分解したような有機物をどの程度使っていくか、あるいは乾燥させてしまうかということによって、バイオスフィア2内の二酸化炭素の調整に充てていました。

これはアパートですが、だいたいこれくらいの部屋と寝室等が与えられておりますけれども、狭いスペースですが何とかやっていました。これはわれわれの友達で日本からちょうど帰ってきたばかりの人がわれわれを訪れてくれたんです。日本で描いたものを見せてくれています。この人なりに描いた富士山です。電話がありましてバイオスフィア2の外部で、この人が電話を通して、この人が「こんなものを描いてきたんだよ」とガラスの窓を通して見せてくれているわけです。中には入ってきていません。訪問者は外部でわれわれから見えるところにきて、電話で我々と話すというわけです。

このスライドは、われわれの最大の問題についてお話するために見せるスライドなんですが、心理学的な問題なんです。2年間も閉塞的な状態の中で8人のクルーが閉じこめられているという状態になりますと、あるいはまた安全性にも不安があるという状態になりますと、非常に重大な問題は心理学的な問題なんですね。それぞれの人間関係、信頼関係が崩れていく、コミュニケーションがなくなってしまう、そういう問題が生じてしまいます。最終的には、このクルーの中で4対4に、2派にわかれてしまったと、2人の男と2人の女、この4人対また同じ構成の4人と2派にわかれてしまったんですね。そういう問題がありました。いろんなエピソードが語られておりますけれど、その中でも人間関係のイザコザというものが問題になったということが伝えられております。

トレーニングは個々の1人1人に対して与えられなければならないと思うんです。1人1人がグループを構成しているわけですから訓練も1人1人に対して行なわれ、初めてチームワークということの訓練を行なわなければならないと思います。こういったことのデータなども取り扱われておりました。内部のクルーもミッションコントロールを行なっているところのクルーも、お互いにそういう問題を感じ取りました。ミッションコントロールを行なっている人たちとの間のコミュニケーションといった問題もあったわけです。バイオスフィア2の中のグループというのは、ミッションコントロールから独立した遊離されたものであると同時に、その中でもまた分離が起こってしまうんですね。

そういう問題を解決する一手段として、ビーチでいまパーティーをしているところなんですが、小さなテレビを持っていきまして、ビデオをそこに映しました。火事、火のビデオを映しまして、あたかも焚き火にあたっているかのようなムードを出しているという光景です。これは8人が1年間経過したところで撮った記念撮影です。6か月を経過しますと心理学上の問題というのが起きてくるんですね。かなりみんな痩せてしまいました。体重が落ちてしまいます。
 それからまた有機炭素が非常に多量にあった。特に土壌内で有機炭素が多量にあったということで問題となりました。植物が異常に成長してしまったのが問題なんですが、これについても詳しい話をお聞きになりたい方は後ほど来てください。炭素の処理・制御がいかに重要かと実感されました。収穫をして、こういうふうに貯蔵いたします。あまりにも多く植物が繁殖してしまった、生育してしまったということで有機炭素が多量になってしまったために、これを備蓄しました。乾燥させて取っておいたわけです。

これはサンプリングの途中なんですが、酸素が少なくなり過ぎているのはなぜなのかということを調べるためにサンプリングを行なっております。なぜ酸素不足になっているのか、なかなか理解できませんでした。ですから、土壌から遊離していく二酸化炭素を監視いたしまして、バイオスフィア2内で分析できないことについては外部に持っていって分析を依頼しました。これは土壌の問題を分析しているところなんですが、またOHPで詳しく説明したいと思います。これはバイオスフィア2内の二酸化炭素の濃度です。最初の2年間ですね。冬場はこういう状態。夏になると下がってきます。これは嵐です。天候が悪く、光が少なくなりますと、二酸化炭素が増えてきます。嵐のあとで光が入ってくると二酸化炭素の量がまた減っていく。ということでこういう時期には、サバンナあるいは砂漠を活性化しまして、バイオスフィア2内の光合成を活発にするようにしました。それからまた二酸化炭素が減ってきた時には、サバンナや砂漠を休眠させて、光合成がそれほど必要ないという状態にしました。これはまた二酸化炭素の12月(冬)と6月(夏)の濃度を示しています。いちばん下は光の具合、照度を示しています。1日あたりの冬の光の程度です。ご覧のようにここの部分が嵐ですね。光が少なくなったりします。光合成が少なくなってしまいます。夜になると呼吸が多くなってしまいます。というふうに日々その変化を見たものです。つまりこのシステム全体が、閉鎖的な空間の中でのシステムというのは、光の具合によって大きく左右されるというのがおわかりになると思います。私どもの期待としては、二酸化炭素と酸素の割合が1対1になる、二酸化炭素が増えれば酸素が減る、またその逆になると、二酸化炭素と酸素を足した量が一定になるだろうと理論上予測していたわけです。ところが実際どうなったかといいますと、酸素が減っていくにつれて、これが二酸化炭素なんですが、ここの部分で酸素を足さなければならなかった。しかしまた足しても酸素が枯渇してしまう。

つまり吸収システムというものがバイオスフィア2の中にあったのです。二酸化炭素の調整という点では酸素との関係が1対1にならなかったわけですね。コンクリートが二酸化炭素を吸収していたんですね。二酸化炭素は酸素が使われてしまったあとになると空中に多くなってしまい、空中の二酸化炭素がコンクリートの中に吸収されてしまうんです。コンクリートに吸収された二酸化炭素はもう光合成には使われません。これが原因となって酸素と二酸化炭素のバランスが崩れたんですが、これについてももし詳しくお知りになりたい方いらっしゃいましたら後ほどどうぞ。

こちらが土壌の検査を行なうためのサンプリングです。バイオスフィア2で使いました実際の土壌です。これは農作物を育てるためにも使ったわけですが、だいたい4フィートほど盛り土をしてそこに植物を植えていったわけです。初期の試験期間中ですが、実際に二酸化炭素が冬場になると増えると。そして照度が変化する。一定の照度が得られる夏場になれば二酸化炭素が減ると予測していたわけですが、ここでは実際にこの二酸化炭素がどのような状態になるのか。例えば石灰化していったり、といったような各種の検査をあらかじめ行なっていったわけです。いろいろな検証を行なったんですがテストそのものの結果あるいはテストに使ったシステムがあまりよくなかったということがあとで判断できたわけです。

これは酸素吸入しているところです。物理的に酸素の吸収が不足する。身体的に酸素に適応できない、能力的にですね、身体的な能力が低下するということがありまして、必要に応じ、このように酸素吸入を行なっていたわけです。これは実際に酸素吸引を行なっていただくことによって血液の中の酸素成分、そして実際に酸素吸入を行なわなかった際の血液の採取も行なって、その時の適応能力というものも血液検査を通じて実行したわけです。先ほどもご説明申し上げましたコンクリート内に吸収されてしまう二酸化炭素ですが、この時にはアイソトピック分析を行ないました。これはバイオスフィア2内に構造物の一部として持ち込まれているわけですから、このような閉鎖型のシステムの中には、マスバランスを保つということがたいへん難しいわけですね。すなわちチャンバー、1つの閉鎖的な環境の中において実際にマスバランスをどのように保っていくのがいちばんよい方法なのかといったことを、コンクリート内に吸収された二酸化炭素の量等も測りながら研究していったわけです。

今日、バイオスフィア2は多くの人々の注目を集めています。われわれのミッションというのは、今後の人間、生活、そして生活環境に大きな影響を与えるものですし、また多くの学識経験者、学生の方たちとも多くのコミュニケーションを図るチャンスがあったわけです。実際にこのように地上でいろいろなコミュニケーションを図りながら、また協力体制を敷きながら、今後この研究がさらに進められていくことを期待しているわけであります。さらに一般の人々にも、このようなプロジェクトに対して関心を持っていただくことがたいへん重要なポイントでもあると確信しています。

これは私ども8人が2年間のミッションを終了して、バイオスフィア2から出てきたところの写真です。実際にこの段階においては、なぜ2年間このような環境内で生活しなければならなかったのか、人生の一時期をこのような生活環境の中に置いてみたということ自体が私たちの特異な経験でもあるということです。このような経験が日本の今後の宇宙開発、日本だけでなく世界中の宇宙開発にも役立てられればと願っています。これはバイオスフィア2の上に月が昇ってきている写真です。今回のシンポジウムのテーマでもあります「ふたたび月へ」、月へ向かうということで、宇宙科学の皆様の貢献をお祈りしております。

ご清聴ありがとうございました。

司会: もしご質問がありましたら受け付けます。
 
会場: バイオスフィア2を経験したことによって、個人的、心理的にどう変化したかということを教えて下さい。
 
マッカラム: バイオスフィア2の中でのストレスは非常に大きいものでした。このバイオスフィア2の設計と建築には6〜8年かけました。8人が突然、2年間閉じこめられたわけです。お互いよく知っていたんですけれど、何年間にも亘って同僚としてこのプロジェクトに働き、マネージャーとしての訓練も積んでいた人間なんですけれども、隔離されている、閉鎖されている空間にあると人間は変わってしまうんですね。予測しなかったような変化が人間に起こってしまうんです。環境のことが非常に気になってくる。バイオスフィア2に対して何をやっても、それが自分の生活に対して即時に影響を及ぼすわけです。それからまた個人的な体験としても、それだけの長い時間、隔離され孤立してしまうと自分の生活や人生に対しても深く考えてしまうんです。
 
会場: 植物を育てるのに非常に手間がかかった、植物の多様性を維持するためには人手がかかったということですが、それはいかがでしたか?
 
マッカラム: 非常に小さな熱帯雨林で、ごく一時成長が早くなるところを収穫するというようなことで、そうすると生物の多様性を維持するためには、常に入っていってどこが成長しすぎているか、ある種が異常に繁殖しすぎているという場合には、それを切断しないと全体の多様性が損なわれてバランスが崩れてしまいます。そういった手間がかかりました。
 
会場: バイオスフィア2のいまの状態について聞かせてください。また、もう一度ビート(赤大根)を食べてみたいと思われますか。
 
マッカラム: はい。バイオスフィア2のいまの状態は、維持されています。メンテナンスが行なわれていて、定期的に開閉されています。いまのところはグローバルな環境変化の研究に使われています。人が中に入るというようなミッションはありませんが、将来の計画としては、いくつか出ている問題として二酸化炭素の量が増え過ぎるという問題について、科学分野の人から研究を続けたいという希望も出ています。ということでバイオスフィア2も、いまは二酸化炭素が増え過ぎた場合にどうするかといった研究に使われています。そのうち有人研究にも使われると思います。コロンビアや、あるいはそのほかのアメリカの大学、あるいはコンソーシアムを作ってバイオスフィア2の科学的な分野についての研究を行なうことになっています。
 
会場: 月の環境は地球と非常に違うので、バイオスフィア2あるいはそのほかのプロジェクトにおいて月と同じ環境をシミュレートするような実験計画はあるのでしょうか?
 
マッカラム: 私にはよくわかりません。生命維持装置、生物学的な処理を行なうような装置も考えられていますが、月面での基地とはまた違ったものになると思います。バイオスフィア2で学んだことをもとにして、世界中で生物系のシステム、あるいは生命維持のシステムの一部分を月のような形でやるケースはあるかも知れません。
システムを作ってテストするということなんですが、あまり多くの時間をかけずにコンピュータでモデルを作ったり設計をしたりして、最高速度で実験ができたというのは、テストモジュールを使ったためだと思うんです。実験を組み立てて、行なって、問題を発見してそれを改良してというようなサイクル、試行錯誤を行なっていってデザイン、検証、テスト、再検証と行なっていくことで、非常に迅速に進展が見られたと思いますが、もっとも重要なのはこのような、いろいろなシステム系が複雑に絡み合っているという時には最終的に使うような完璧なシステムを初めから作る必要はないと思うんです。その一部分を作って、あるいはだいたいこんなもんだろうというシステムを作ってみて、やってみる。ただし、できるだけ早い時期に人間を使ってやってみることが大事だと思うんです。いろいろな変数的な条件、人間が絡む条件というのは、シミュレーションが難しいわけです。ですから人を使って、人が入った状態で小規模な実験を行なって、そして次の論理的な段階に入っていくということにしたほうがいいと思います。十分に実験を行なうためには何か月もかかってしまいます。ですからシステムを使って、実地の人間を使った手順というものをやる、本当に安全なシステムを作ってみる、安全といっても長期に亘って確保されなければならないわけで、そういったものに向けて、とにかくできるところから始めていくことが大事だと思います。エンジニアリングとか科学的なコミュニティ、こういう分野においては実地の訓練が大事だと思うんです。理論だけではダメで、実際に手を携えての訓練が大事です。そこから学ぶところがいちばん多いと思います。
 
マッカラム: 私にはよくわかりません。生命維持装置、生物学的な処理を行なうような装置も考えられていますが、月面での基地とはまた違ったものになると思います。バイオスフィア2で学んだことをもとにして、世界中で生物系のシステム、あるいは生命維持のシステムの一部分を月のような形でやるケースはあるかも知れません。
システムを作ってテストするということなんですが、あまり多くの時間をかけずにコンピュータでモデルを作ったり設計をしたりして、最高速度で実験ができたというのは、テストモジュールを使ったためだと思うんです。実験を組み立てて、行なって、問題を発見してそれを改良してというようなサイクル、試行錯誤を行なっていってデザイン、検証、テスト、再検証と行なっていくことで、非常に迅速に進展が見られたと思いますが、もっとも重要なのはこのような、いろいろなシステム系が複雑に絡み合っているという時には最終的に使うような完璧なシステムを初めから作る必要はないと思うんです。その一部分を作って、あるいはだいたいこんなもんだろうというシステムを作ってみて、やってみる。ただし、できるだけ早い時期に人間を使ってやってみることが大事だと思うんです。いろいろな変数的な条件、人間が絡む条件というのは、シミュレーションが難しいわけです。ですから人を使って、人が入った状態で小規模な実験を行なって、そして次の論理的な段階に入っていくということにしたほうがいいと思います。十分に実験を行なうためには何か月もかかってしまいます。ですからシステムを使って、実地の人間を使った手順というものをやる、本当に安全なシステムを作ってみる、安全といっても長期に亘って確保されなければならないわけで、そういったものに向けて、とにかくできるところから始めていくことが大事だと思います。エンジニアリングとか科学的なコミュニティ、こういう分野においては実地の訓練が大事だと思うんです。理論だけではダメで、実際に手を携えての訓練が大事です。そこから学ぶところがいちばん多いと思います。

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