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ビーナス・エクスプレス トピックス

日付の欄に「発表」とあるのは、その日に発表された記事であるという意味です。

2007年3月8日 15:00更新

ビーナス・エクスプレス 探査期間延長 (2007年2月27日)
ビーナス・エクスプレスの探査が、2009年5月はじめまで延長されることが、先週金曜日(2月23日)に開催されたESAの科学プログラム委員会で決定しました。
ESAの科学プログラム委員会は、次代の科学者に対してビーナス・エクスプレスが残したこれまでの成果、そして、金星の将来ミッションに対する非常に貴重な成果を認識しました。この決定は、ビーナス・エクスプレスが持つ独特の探査の潜在力を引き出すことになるでしょう。
現在までに、ビーナス・エクスプレスは非常にたくさんの質の高い科学的発見を見出しています。洗練された科学機器を搭載し、それらは多くが、火星探査機のマーズ・エクスプレスとの共用となっています。そして、この探査の目的は、金星についてその並外れた空間・波長解像度により、理解を広げることにあります。
ビーナス・エクスプレスの探査期間が延長されることにより、これまで行われてきた科学的探査の範囲が広がるだけでなく、ビーナス・エクスプレス探査機により収集されたデータとの相互解析により、理解を広げるという相乗効果も期待できます。さらに、運用上の相乗効果として、1つの探査機だけを運用するよりもコストが削減できるという効果があります。
科学者たちはいまや、惑星に特化した成果だけでなく、比較惑星学的な視点から、現在の惑星形成論や進化についての学説、太陽系における生命に適した環境についての議論、そして太陽風と惑星との相互作用について確固とした議論を展開できるようになってきています。

この間のトピックスは準備中です。

ビーナス・エクスプレス、運用軌道へ到達 (2006年5月9日)
5月7日午後1時31分(世界標準時。日本時間午後10時31分)、「ビーナス・エクスプレス」は運用軌道に到達しました。同探査機は4月11日に金星の周回軌道に到着、4月20日及び23日にメインエンジンを噴射、また、4月15、26、30日、5月3、6日にはスラスタの噴射を行い徐々に軌道を変更してきました。現在は、近金点250km、遠金点66,000kmの極軌道を1周24時間で周回しています。

同探査機は今後、6月初めまで軌道上での試験を行い、6月4日には科学フェーズを開始する予定です。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレスが撮影した金星の画像を公開 (2006年4月26日15:30)
4月13日、ESAは「ビーナス・エクスプレス」が撮影した金星の画像を公開しました。この画像は、衛星搭載のVIRTIS及びVMCにより高度206,452kmから金星の南半球を撮影したもので、金星の南極画像は史上初めて取得されました。

VIRTISによって撮影された金星画像の合成イメージ
copyright: ESA/CNR-IASF, Rome, Italy, and Observatoire de Paris, France

VMCによって撮影された金星の南半球VMCによって撮影された金星の南半球(色補正画像)
copyright: ESA/MPS, Katlenburg-Lindau, Germany

「ビーナス・エクスプレス」は、現在、金星の周回軌道上にあり、5月7日には24時間周期の軌道への遷移を完了する予定です。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレス、金星の軌道投入に成功 (2006年4月13日14:00)
ビーナス・エクスプレスは、4月11日午前7時17分(世界標準時。日本時間では午後4時17分)、メインエンジンの噴射を50分間に渡って行い、金星の軌道投入に成功しました。

投入された軌道は、近金点400Km、遠金点350,000Kmの楕円軌道です。今後軌道修正を行い、5月7日には近金点250km、遠金点66,000kmの楕円軌道を24時間で1周する軌道に入ります。
ESAの記事へ (英語)

探査機の機器は試験で「予定通りの性能」を示す (2005年12月8日16:00)
打ち上げも一段落し、ビーナス・エクスプレスは、主要機器の点検に入りました。これは、探査機の試験段階と呼ばれる段階の1つです。
この試験段階に入ったのは、打ち上げ3日後の11月11日で、その前のLEOP(打ち上げ・地球軌道段階)と呼ばれる段階を越した後になります。
探査機の飛行・制御システムが正常に動作しているのが確認された後、今度は科学機器の動作の確認に移ってきているわけです。

11月25日午前4時現在(日本時間)、ビーナス・エクスプレスは地球から400万キロメートル、金星までは7,250万キロメートルのところにあります。この距離では通信に片道13秒かかります。
運用リポートによれば、機器は「予定通りの性能」を示したとのことです。この機器試験は、ビーナス・エクスプレスの主要な3つの機器(磁力計、紫外−可視光−近赤外スペクトロメータ、金星カメラ)を中心に行われました。
磁力計は、金星の周囲にある磁場を調査するための装置です。磁場は、金星の上層大気と太陽風との相互作用によって生まれています。紫外−可視光−近赤外スペクトロメータは下層大気の様子を調べるための装置、金星カメラは、広角で金星を複数波長で撮影するための装置です。

磁力計にとって重要なときが、11月19日の午前1時6分(日本時間)にやってきました。磁力計は本体の金属の影響を避けるために、長い棒(ブーム)の先端に搭載されているのですが、そのブームの伸展に成功したのです。ブームの長さは1メートルで、カーボンファイバー製です。
紫外−可視光−近赤外スペクトロメータにも電源が入れられ、最初の撮像大正として、月と地球が選ばれました。このスペクトロメータは2つのチャンネル(MとH)を持っていますが、月については、Mチャンネルでも撮像が行われました。これを、2005年3月にロゼッタ探査機(ほぼ同じスペクトロメータを搭載しています)のデータと比較することで、カメラの校正作業が可能になりました。
2人いるスペクトロメータの主任責任者の1人、ジュセッペ・ピッチオーニ (Giuseppe Piccioni)氏は、「撮影は350万キロ先から行われ、地球の65%が太陽からの光に照らされていた。地球の昼と夜の両方の部分の撮像が行えた。」と述べています。
もう1人の主任責任者であるピエール・ドロサール(Pierre Drossart)氏は、「金星と地球のスペクトルを比較することによって、2つの惑星の典型的な比較ができる。」と述べています。
試験結果は、科学者たちに、観測機器が何百倍も離れた金星でも充分働くという自信を与えています。

また、運用チームでは、金星カメラを使って、地球−月系の撮影を行っています。また、他の観測機器についても、校正のためもあって試験観測を行う予定です。
この試験期間は12月14日まで続き、金星軌道への投入は来年の4月11日が予定されています。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレスが金星の新たな謎を解く (2005年11月16日18:30)
ビーナス・エクスプレスは打ち上げに成功し、金星への軌道に無事投入されました。
2003年12月から火星を周回し続けているマーズ・エクスプレスとは「双子」の関係にあたるビーナス・エクスプレスは、ESAの2つ目の惑星探査機です。
ビーナス・エクスプレスは、金星に近づくと軌道を変更し、金星を回る軌道に入ります。この軌道上で、金星大気の構造や化学組成、ダイナミクスなどを詳細に調べます。金星大気は高温光圧という特徴を持っていますが、それ以外にも、巨大な温室効果や、謎めいた4日周期での大気流「スーパーローテーション」などの不思議なことがたくさんあります。
また、ビーナス・エクスプレスは、最近になってみつかった、金星の可視窓(金星の内部がみえる波長領域。赤外線の領域)を使って、金星表面の観測も行います。

重さ1,240キログラムの探査機はソユーズロケットによって、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から現地時間11月9日9時33分(日本時間午後0時33分)に打ち上げられました。打ち上げ後9分で上段エンジンに点火、探査機は低地球のパーキング軌道に入りました。打ち上げ後22分、上段エンジンの再点火によって、探査機は惑星間軌道へ投入されました。
打ち上げから2時間で、探査機の管制はドイツ・ダルムシュタットにあるヨーロッパ宇宙管制センター(ESOC)に引き継がれました。探査機は正確に飛行しており、太陽電池パドルも正しく展開しました。
搭載機器も完璧に動作しており、探査機はESOCと低利得アンテナ(ローゲインアンテナ。通信速度が遅いアンテナ)で通信していますが、3日後には高利得アンテナ(ハイゲインアンテナ。通信速度が速いアンテナ)で通信ができるようになる見込みです。
ビーナス・エクスプレスは現在、フルスピードで地球から遠ざかり、金星への3億5,000万キロの旅をはじめたところです。搭載機器の初期試験が終了すると、探査機は地球とほとんど通信しない状態になります。必要があれば、軌道変更命令を1月に送ることになります。

金星へフルスピード
金星に最接近する際、ビーナス・エクスプレスは兄弟探査機のマーズ・エクスプレスに比べて非常に厳しい環境に置かれます。というのは、マーズ・エクスプレスが周回している火星に比べ、金星は質量が7.5倍で、地球と同じくらい「重い」からです。従って、ビーナス・エクスプレスには、金星に接近したときに大きな重力がかかります。
この重力に逆らうため、ビーナス・エクスプレスは金星接近時に53分間にわたってメインエンジンを噴射し、探査機を長楕円軌道に投入します。探査機が搭載している570キログラムの燃料の大半はこのときに消費されます。
最終的な観測軌道に入るためには、さらにもう一度エンジンの噴射が必要です。こうして、12時間で1周する極楕円軌道に入ります。金星にいちばん近い点は250キロメートル、いちばん遠いところで66,000キロメートルの軌道です。そして、最低でも金星の1年間(486日)にわたって観測を行います。

地球を理解するために他の惑星を調べる
ESAの科学プログラム部長のデビッド・サウスウッド教授は、「ビーナス・エクスプレスの打ち上げは、太陽系の様々な天体を調べようというヨーロッパの決定をより一層決定づけるものだ。」と強調しています。
「私たちは2003年に火星にマーズ・エクスプレスを打ち上げ、月にはスマート1を打ち上げた。両計画とも私たちの想像をはるかに超える成果を送ってきている。ビーナス・エクスプレスはさらに先に進むための一歩である。そして、2013年に水星に向けて打ち上げられるベピ・コロンボ計画によって、私たちの周りの惑星を探査するという計画は完結することになる。」(サウスウッド教授)
ESAのジャック・ドルダン長官は、次のように述べています。「ビーナス・エクスプレスによって、私たちはふたたび、他の惑星を調べることが地球上の生命にとって極めて重要であるということを明らかにしている。地球の気候変化とそれに関連する要因を調べるためには、地球だけを調べていても明らかにすることができない。惑星大気について、一般的な観点で明らかにしていくことが必要だ。マーズ・エクスプレスにより、私たちは火星大気の様子を調べ、ホイヘンス突入機によって、土星の衛星タイタンの様子を明らかにできた。そしてビーナス・エクスプレスにより、私たちのコレクションに新たなサンプルが加わる。もともと、地球と金星は非常に似た天体であった。だからこそ、なぜ金星が地球とこのように違う星になってしまったのか…地球が生命の揺りかごとなり、金星がこれほど生命に不適な星になってしまったのか、知る必要がある。」

マーズ・エクスプレスの「双子」
ビーナス・エクスプレスは、マーズ・エクスプレスで開発された機器などの大半を再利用して作られました。このため、製作サイクルを短くすることができ、コストを半分にできたにもかかわらず、同じ科学目標を追求できるようになりました。ビーナス・エクスプレスは2002年末に最終的に了承されましたが、3年という記録的なスピードでの開発できたのは、このようなわけがあったからです。
しかし、火星は金星と環境が大きく異なります。金星の太陽光の強さは火星の4倍もあります。探査機の設計も、こういう熱い環境に合わせなければなりません。そのため、特に熱設計については完全に新しいデザインとなりました。マーズ・エクスプレスができるだけ熱を逃がさない設計にしているのに対し、ビーナス・エクスプレスは内部を冷やすために熱をなるべく外へ逃がす設計になっています。
ビーナス・エクスプレスの太陽電池も再設計されました。強い太陽光から守るため、より小さくし、間にアルミニウムを入れるようにしました。こうして、最高250度にもなる探査機を守るのです。さらに、通常は影の部分になる太陽電池の裏側にも、金星からの輻射によって温度が上がらないように工夫されています。

金星の不思議な大気
1962年から始まったアメリカと旧ソ連による金星探査から約40年、ビーナス・エクスプレスは、いまだ解けない様々な金星のなぞに挑戦しようとしています。
ビーナス・エクスプレスがもっとも注目しているのは、金星大気の特徴です。特に、大気の循環、構造、組成が高度と共にどのように変化しているか、また太陽風と大気との関係がどのようになっているかが注目されます。
これらを解明するために、ビーナス・エクスプレスには7つの観測機器が搭載されています。そのうち3つはマーズ・エクスプレスにも搭載された機器で、2つは彗星探査機ロゼッタに搭載されたもの、残り2つが、この金星探査機のために新たに作成されたものです。
高解像度赤外フーリエスペクトロメータ(PFS)は、高度ごとに大気の温度と組成を調べます。また、表面温度も調べ、金星に現在火山活動があるかどうかも調べます。
紫外・赤外スペクトロメータ(SPICAV/SOIR)と金星電波実験(VERA)も大気の様子を調べます。SPICAV/SOIRは大気中の水分子、酸素原子、硫黄化合物の存在量を調べることができます。
紫外−可視光−近赤外スペクトロメータ(VIRTIS)は大気の様々な層構造を調べると共に、異なる波長で雲を調べ、大気のダイナミクス(流動)を明らかにします。
宇宙プラズマ・高エネルギー粒子分析器(ASPERA)は、磁力計の援護も受け、金星の上層大気と太陽風との相互作用を調べます。特に、磁場がない金星のような天体での太陽風との相互作用は興味深い課題の1つです。その相互作用により生じたプラズマの観測も行います。また、プラズマによって発生した磁場については、磁力計によって観測が行えます。
金星カメラ(VMC)は、金星を4つの波長で調べます。特に、1990年にガリレオ探査機によって発見された「赤外線の窓」(金星大気の中で、地表まで到達できる赤外線の波長領域)を利用して、地表の様子を調べることを試みます。このカメラにより、金星大気のダイナミクスも観測します。中でも、極にある二重の大気の渦は、まだ生成の原因が分かっていないため、観測に期待が持たれています。

ビーナス・エクスプレス、打ち上げ成功 (2005年11月14日11:10)
ビーナス・エクスプレス打ち上げ ビーナス・エクスプレスは、11月9日午前4時33分(ヨーロッパ中央標準時。日本時間では午後0時33分)、中央アジアのカザフスタン共和国・バイコヌール宇宙基地から、無事打ち上げられました。
ESAの記事へ (英語)

打ち上げ日は11月9日 (2005年11月7日14:00)
ESAと衛星製造メーカ、打ち上げメーカとの合意により、ビーナス・エクスプレスの打ち上げ日は、11月9日の午前4時33分(ヨーロッパ中央標準時。日本時間では午後0時33分)に決定しました。
ESAの記事へ (英語)

原因究明はいい方向へ (2005年10月26日19:00)
ロケットフェアリング内の異物発見によって打ち上げが延期となったビーナス・エクスプレスですが、原因究明作業が始まってきています。また、探査機自体の状態は良好です。
ビーナス・エクスプレスはロケットの先端から外され、24日にはロケットのフェアリングが再び開けられて、原因究明作業が始まりました。その結果、衛星の表面から、ロケット上段のカバーの一部と思われる物体が見つかりました。紫外線ランプがあればその物体ははっきりとみることができ、真空掃除機や窒素ガスを利用したエアブラシなどで取り除くことができます。
今後数日かけて、特に機器周りを中心として、探査機の調査と清掃が行われます。その後、ビーナス・エクスプレスは再度電気テスト、チェックを受けた後フェアリングに格納されます。
ESAのプロジェクトチームでは、ビーナス・エクスプレスは、打ち上げ可能期間である11月24日までに打ち上げることができると考えています。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレス、打ち上げ数日延期 (2005年10月25日10:00)
ビーナス・エクスプレスは、打ち上げの最終準備段階で、ロケットの衛星フェアリングの中に異物が発見されたため、打ち上げが数日遅れることになりました。
なお、新しい打ち上げ日時は近日中に発表するとのことです(本来の打ち上げ日は、26日でした)。
ESAの記事へ (英語)

なぞの惑星のベールを剥ぐビーナス・エクスプレス (2005年10月21日発表)
金星上空を周回するビーナス・エクスプレス(想像図) 熱い大気のカーテンに阻まれて、その真実の姿がなかなかみせない金星。その金星に向かって、いよいよビーナス・エクスプレスが26日、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられます。
ビーナス・エクスプレスの軌道は、惑星の動きを最大限活かしたものとなっています。金星と地球は、19ヶ月おきに、もっとも燃料効率がよく探査ができる位置に来ますが、このチャンスを生かすために、ESAが設定している打ち上げ期間は、10月26日から11月24日までです。
しかも、地球の自転などの関係から、打ち上げられる時間帯はさらに限られます。最初の打ち上げ(26日)の時刻は、バイコヌールの現地時間で10時43分(日本時間で14時43分)に設定されています。
6ヶ月の飛行の後、2006年4月には金星の探査が始まります。金星はここ10年以上にわたって探査が行われてきませんでした。

■打ち上げから到着まで
ソユーズロケットは世界でもっとも信頼性の高いロケットの1つです。ビーナス・エクスプレスはこのロケットによりロケットの最上段に据えつけられ、打ち上げられます。
ビーナス・エクスプレスを惑星間軌道に投入するためには、3つのステップを踏みます。打ち上げから9分で、ソユーズはほぼ垂直に上昇し、高度190キロメートルで第3段を分離します。続いて、第2段階で、地球を東に向けて周回する「パーキング軌道」に入ります。この軌道投入はヨーロッパ中央時間で6時52分(日本時間で14時52分)に行われます。
打ち上げから約1時間20分後の8時3分(ヨーロッパ中央時間。日本時間で16時3分)、地球をほぼ一周してきたビーナス・エクスプレスは、第3段階としてアフリカ上空で第3段エンジンを噴射し、金星に向かう双曲線軌道に入ります。そして、この噴射の後、ロケットは切り離され、探査機は一路金星へと向かうことになります。

■地上での万全な態勢が飛行を成功へ導く
ロケットから8時21分(ヨーロッパ中央時間。日本時間で16時21分)に切り離されたビーナス・エクスプレスは、まず打ち上げ時の状態から「目覚め」、推進システム、熱制御システムを起動します。また、太陽電池を展開し、軌道修正を実施します。
この段階から、衛星の制御はESAのヨーロッパ宇宙管制センター(ESOC)に移ります。飛行制御チームはESAが持つ地上の追跡管制網を管理すると共に、これと協力して衛星との通信を行います。
衛星の初期段階では、オーストラリアに新設されたノルシア局とフランス領ギアナ(南米)にあるクールー局が通信を担います。ノルシア局で衛星の状態をはじめて受信できるのは、打ち上げ後約2時間くらいになる予定です。
衛星がESOCの管制に移った時点で、衛星はフル活動状態となります。そして、軌道修正のため、2回のスラスタ噴射を実施します。
10月28日、ビーナス・エクスプレスに備え新たに完成したスペインのセブレロス局からの通信が始まります。金星への飛行中、そして金星への到着後は、このセブレロス局が中心となって、ビーナス・エクスプレスからの電波を受信します。

■金星へ到着
163日の金星への飛行で、ビーナス・エクスプレスは約4億キロの飛行を行います。また、速度は太陽に対して秒速28キロメートルになります。
活躍が始まるのは、2006年4月6日になります。探査機はブレーキのための噴射を行い、金星を回る軌道に入ります。この金星周回軌道へ入るためのエネルギーが非常に大きいため、メインエンジンを51分間にわたって動作させ続けなければなりません。
この段階では、まず衛星は金星を回る極端な楕円軌道に入ります。近金点が北極付近で400キロ、遠金点が南極付近で350,000キロにもなります。
10日にわたってこの軌道を周回した後、再びメインエンジンを噴射し、軌道を変更します。何度かの軌道修正を経て、最終的に近金点250キロ、遠金点66,000キロ、24時間で周回する軌道に入ります。
最初の極端な楕円軌道の段階でも既に科学観測が開始されます。ですが主要な科学観測期間が始まるのは、主要な観測機器のチェックなどが終了した2006年の7月6日からです。
ビーナス・エクスプレスに搭載された7つの機器は、分厚い大気に覆われた惑星、金星のなぞを解き明かすと期待されています。そして、この惑星の特徴や状況、真価などが解明されることでしょう。

■ビーナス・エクスプレスについて
ビーナス・エクスプレスは、既に打ち上げられ火星を周回しているマーズ・エクスプレスとほぼ同等の機体ですが、金星の熱環境に耐えられるように強化を施してあります。製作はEADSアストリウム社、構想から打ち上げまで4年間というスピードは、ESAの科学衛星でももっとも早いものです。
衛星の開発、試験段階においても、ESAと製作企業とは協力を行ってきました。4月6日の科学観測期間開始時には、ビーナス・エクスプレスの責任分担は計画主任(プロジェクトマネージャ)から運用主任(ミッションマネージャ)へと移り、オランダにあるESTEC(ヨーロッパ宇宙科学技術センター)内のVSOC(ビーナス・エクスプレス科学運用センター)に主導権が移ります。VSOCでは日々の運用などを科学者たちと共同しながら行うことになっています。
ビーナス・エクスプレスの総予算は2億2,000万ユーロ(約300億円)で、この予算には打ち上げ費用も含まれます。また、装置開発費用1,500万ユーロ(約20億円)も含まれます。
ESAの記事へ (英語)

ロケットの上段と結合 (2005年10月17日14:30)
ロケット上段と結合されるビーナス・エクスプレス 10月26日の打ち上げに向けて、準備も本格化してきました。このほど、探査機がロケットの上段と結合されました。
一見すると、上から吊り上げて探査機を下ろすだけの単純な作業にみえますが、この作業羽実は「危険度の高い」作業に分類されています。なぜなら、ロケットも探査機も、毒性の強い燃料をフルに搭載しているからです。
この作業は、衛星を設計したビーナス・エクスプレスのチームと、ロケットの上段を作成した、NPO-ラホートキンとの共同作業で行われました。
次の作業としては、衛星とロケット上段に、「アンビリカルケーブル」と呼ばれる、通信や動力を送るケーブルを取り付ける作業があります。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレスに備え、新しい電波通信施設が完成 (2005年9月30日19:30)
ESAの地上追跡管制ネットワークのうち2つ目の新しい電波通信施設が、9月28日、スペイン・セブレロス(Cebreros)に完成しました。直径35メートルの深宇宙通信用のアンテナを備えており、来月に迫ったビーナス・エクスプレスの打ち上げでは、地上の追跡管制ネットワーク網の一翼を担うことになります。
この新しいアンテナは、既に存在するオーストラリア・ニューノルシア(New Norcia)のアンテナと共に、惑星探査などの深宇宙探査に活躍することになります。
ESAの科学部長、運用基盤部長、ヨーロッパ宇宙天文学センター所長などが出席して開かれた完成式典は、雲一つない青空のもと行われました。ESA科学部長のデビッド・サウスウッド氏は、「深宇宙アンテナは、人類の宇宙探査への興味の象徴だ」と述べ、完成を祝福しました。
惑星探査など、将来の深宇宙探査は、より高い周波数を使って、大量のデータを何億キロも離れたところから送ることになるでしょう。最新技術を備えたセブレロス追跡管制施設は、ESAが計画している数多くの次世代探査計画にも対応できるように設計されています。また、オーストラリアの1号機と比べてKaバンドを受信できる性能を持っている点が特徴で、また指向精度も向上しています。重さは620トン、高さは40メートルあります。
ESAでは、スペインとオーストラリアの中間地点となるアメリカの経度120度付近に、2000年代に3つめの望遠鏡を建設する計画を持っています。これにより、地球を360度カバーする追跡管制ネットワークができ上がることになります。
ESAの記事へ (英語)

ビーナス・エクスプレス、バイコヌール宇宙基地に到着 (2005年8月10日発表)
ビーナス・エクスプレスの到着
ユビレイニ空港に到着したアントノフ輸送機
バイコヌール宇宙基地に隣接するユビレイニ空港に降り立ったビーナス・エクスプレスを出迎えたのは、砂漠の暑い熱気でした。8月7日、ビーナス・エクスプレス探査機は、打ち上げ場となるバイコヌール宇宙基地(カザフスタン共和国)に到着しました。衛星はアントノフ124輸送機で、打ち上げに必要となる周辺装置と共に、フランス・ツールーズから運ばれてきました。
衛星はそのまま貨車に乗せられ、宇宙基地の巨大な格納庫に収められました。ここでは、クリーンルーム内で、衛星の最終試験が10月26日まで行われる予定です。8月末までは、ESAと開発企業との共同チームが衛星の機能などの試験を行います。
危険物取扱区域と呼ばれる場所で行われているこの試験では、衛星の推進装置や圧力装置が正しく作動することを確認します。また、輸送によって衛星がダメージを受けていないかどうかもチェックします。
続く試験では、衛星の電気装置、機械のチェック、実際の打ち上げを想定した地上テストなどが行われます。バイコヌールと、ESAの管制センターがあるドイツ・ダルムシュタットとは回線で接続され、技術者はリモートで衛星の様子を監視することができるようになっています。
ESAの記事 (英語)