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火星・赤い星へ
過去の火星探査

これまでの火星探査計画を解説しています。
日本の火星探査機「のぞみ」、及びアメリカの火星探査「フェニックス」については、別ページにて掲載しております。

人類最初の火星探査機 マルス(Mars)計画

マルス探査機は、旧ソ連が打上げた火星探査機で、7機打上げられました。火星の写真撮影、大気観測、磁場観測等を行いました。2、3、6、7号では、着陸船による大気観測が計画され、3号で初めて軟着陸に成功しました。

火星の詳細な画像を地球へ送ってきた マリナー(Mariner)計画

Mariner9
Mariner 9
マリナー探査機は、アメリカが打上げた惑星探査機で、10機打ち上げられました。このうち、火星探査を目的としたのは3、4、6、7、8、9号です(1、2、5号は金星探査、10号は水星・金星探査)。3、8号は打上に失敗しましたが、4、6、7号による火星近傍のフライバイ、9号による火星周回軌道からの観測を行いました。主な搭載機器は、カメラ、赤外放射計(表面温度測定)、紫外分光計(大気観測)、赤外分光計(大気観測)等です。9号の周回軌道からの画像により、初めて火星全体の姿が明らかになりました。また、7、9号により火星の衛星のフォボス、ダイモスの写真撮影が行われました。

火星の生命探査を行った バイキング計画

Viking着陸船
着陸船
バイキング探査機は、アメリカが打上げた火星探査機で2機打ち上げられました。火星周回軌道からの写真撮影、温度分布測定、大気中の水測定、及び着陸船による土壌分析、生命探査、気象観測、大気成分分析等が行われました。特に着離船により大きな成果が得られています。
バイキング探査機の特徴は生命探査です。生命あるいはその痕跡を検出するため、以下の3種類の装置を使用した実験が行われました。しかし、生命の存在の痕跡どころか、有機物も検出できませんでした。
  • 有機物検出実験
    火星の土を加熱し、気体となって出てきた物質をガスクロマトグラフで分離し、質量分析を行った。
  • 代謝活性実験
    火星の土に栄養液をかけ、発生した気体を分析した。
  • 光合成能の実験
    火星の土に二酸化炭素と一酸化炭素を混ぜ、光を照射した。土の中に生成した可能性のある有機物の検出を行った。
この実験では2つの問題点が指摘されています。まず試料採取の問題です。試料として火星の表面土壌を使用しましたが、火星の表面は強い紫外線や放射線によって有機物すら分解されてしまいます。生命が発見されるとすれば地下数メートル以下の深いところであろうと考えられています。
次に分析方法の問題です。代謝実験では地球生命に有効な栄養液を与えましたが、これが火星生命にとっても有効かどうか不明です。また、かつて生存した生命の場合代謝実験、光合成実験では検出できません。これらの問題が解決されなければ、生命あるいは生命の痕跡の発見は困難でしょう。

フォボス(Phobos)計画

Phobos
Phobos
フォボス探査機は、旧ソ連が打ち上げた火星探査機です。1号は打上げ後2ヶ月で通信が途絶しました。2号は火星周回軌道に投入され、火星温度分布、鉱物組成観測、大気観測、元素測定等を行いました。しかし火星の衛星であるフォボスの写真撮影、表面のスペクトル分析等を実施中に通信が途絶しました。

火星人に嫌われた?マーズ・オブザーバー(Mars Observer)計画

Mars Observer
Mars Observer
マーズ・オブザーバ探査機は、バイキング探査機以降途絶えていたアメリカの火星探査機です。火星表面の元素分布測定、高度分布測定、火星表面・大気温度測定、磁場測定などを行う予定でしたが、火星周回軌道投入3日前に通信が途絶しました。推進系の不具合が原因と考えられています。
マーズ・オブザーバの代替機として、マーズ・オブザーバの予備部品を使って製作されたマーズ・グローバル・サーベイヤーが1996年に打上げられました。

多くの観測機器を搭載した大型探査機 マルス96計画

Mars96
Mars 96
マルス96探査機は、欧米の協力を得てロシアが開発し、打上げた大型の探査機です。火星周回機、着陸機、ペネトレータ、気球の4つの手段により22種類の観測機器を火星に送り込む予定でしたが、打上げに失敗し、地球に落下しました。

マーズ・パスファインダー (Mars Pathfinder)

マーズ・パスファインダーとローバー
着陸したマーズ・パスファインダー(写真下部)とローバー (NASA)

マーズ・パスファインダーは、火星を知るためだけでなく、将来の探査に役立つ技術を試すことも目的としています。その一つが超小型火星面車(ローバ)です。重さが10キログラムしかないこのローバーは、火星の地表がどのような物質でできているかを調べるための機器を搭載しています。ローバーは地球から遠隔操作されますが、障害を検出し自動的に回避する機能を持っています。本体(着陸機)にはカメラや気象観測装置などが積まれ、火星の地表や気象を観測します。
マーズ・パスファインダーは、1996年12月に打ち上げられ、1997年7月4日(アメリカ独立記念日)に火星に到着し、観測を開始しました。火星に水が存在した痕跡など多量の情報を地球へ送ってきましたが、1997年9月に地球との交信が途絶えてしまいました。

マーズ・グローバル・サーベイヤー (Mars Global Surveyor)

マーズ・グローバル・サーベイヤ
火星の周りを周回するマーズ・グローバル・サーベイヤー(イラスト) (NASA)

マーズ・グローバル・サーベイヤーは、火星の周りを周回しながら、極めて詳細な火星の表面の画像を取得することをはじめ、6つの観測機器により、火星の地質、地形、重力、気候などを観測することを目的としています。これは、1993年に打ち上げられ、消息を絶ったマーズ・オブザーバーの後継機としての役割も担っています。
マーズ・グローバル・サーベイヤーは1996年12月に打ち上げられ、1997年9月12日、火星を回る軌道に入りました。1999年3月から表層のマッピングを開始しました。観測により、火星の表面にかつて水が流れていた明確な証拠を発見するなど、科学的にも大きな成果を挙げています。2006年11月まで探査を実行し、火星についての膨大な写真を撮影、現在でも火星の研究に生かされています。

MGSが撮影した火星の三角州地形 トピックス マーズ・グローバル・サーベイヤが撮影した画像に、三角州のような地形が写っているのが発見されました。古代の火星に水が流れていた(川が存在していた)ことを示唆する重要な証拠として、注目されます。 (Photo by NASA)

JPL(ジェット推進研究所)のプレスリリース(英文)
(2003年11月14日16:00更新)

マーズ・クライメイト・オービター (Mars Climate Orbitor)

マーズ・クライメイト・オービター
マーズ・クライメイト・オービター (イラスト) (NASA)

マーズ・クライメイト・オービターは、もともと「マーズ・サーベイヤー98計画」の一環として、マーズ・ポーラ・ランダーと一体となって、火星の気候や水、二酸化炭素の循環などを調べる計画になっていました。このうち、マーズ・クライメイト・オービターは、火星上空を周回しながら、火星の風の様子や水により侵食されたと思われる地形などを調べ、火星大気の様子を調べることを目的としていました。
マーズ・クライメイト・オービターは、1998年12月に打ち上げられ、1999年9月23日に、火星を回る軌道に投入されることになっていました。ところが、軌道投入の指令後、探査機からの通信が途絶えてしまいました。これは、探査機に指令を出すときに、本来であればメートル法で測った数値で指示を出すべきところを、誤って(アメリカで使われている)フィート・ポンド法での数値を送ってしまったためです。
このために、マーズ・クライメイト・オービターは火星大気に突入してしまい、破壊されてしまったものと考えられています。

マーズ・ポーラ・ランダー (Mars Polar Lander)

マーズ・ポーラー・ランダー
マーズ・ポーラー・ランダー (イラスト) (NASA)

マーズ・ポーラー・ランダーは、「マーズ・サーベイヤー98計画」の一環として、マーズ・クライメイト・オービターと共に火星の気象などを探ることが目的でした。マーズ・ポーラー・ランダーは、その名の通り火星の極地域の極冠に着陸して、極冠の氷を調べたり、着陸中に極地域の詳細な画像を取得したり、レーザを用いて大気のちりの様子を観測することなど、極地域の気象や大気を観測するミッションが計画されていました。
マーズ・ポーラ・ランダーは、1999年1月に打ち上げられ、順調な飛行の後に火星へ到着しました。1999年12月3日に火星大気へ突入する直前、探査機からの信号が途絶え、行方不明となりました。信号途絶の理由は現在でもわかっていません。

ディープ・スペース2号機

ディープ・スペース2号機
ディープ・スペース2号機。手前のコインはアメリカの25セント硬貨。 (NASA)

ディープ・スペース2号機は、「ニュー・ミレニアム計画」の2号機として計画された、ペネトレータによる火星探査計画です。この「ニュー・ミレニアム計画」とは、NASAが主導し、将来の惑星探査や深宇宙探査などに必要となる様々な技術を取得するために企画されたミッションです。
"Deep Space 2 (DS2)"と呼ばれるこの探査機は、マーズ・サーベイヤー98計画の着陸機に同時に積まれる、2本のマイクロプローブ(ペネトレーター)です。重さわずか670グラムのこのマイクロプローブは、火星の地表に高速で突き刺さります。プローブの中には、プローブが衝撃で地下に潜ることを利用して、サンプラーや加速度計、温度センサーなど、地下の物質を探査するための装置が積まれています。このプローブと突入用の装置を合わせても全体で1つが3.5キログラムと、非常に小型軽量であることも特徴です。
この2本のペネトレータは、それぞれ「アムンゼン」と「スコット」と名付けられました。マーズ・ポーラー・ランダー探査機に搭載されて、火星の地表に届く予定でしたが、このマーズ・ポーラ・ランダ探査機と共に、失われました。

ネットランダー

ネットランダー
ネットランダーの想像図 (NASA)
ネットランダーは、フランス宇宙機関(CNES)を中心として、ヨーロッパ、アメリカの宇宙研究機関が計画している火星探査計画でした。この計画では、火星の内部構造を調べることに重点が置かれており、その一方で、火星の全球規模の大気循環を調査することも計画されていました。
この計画では、地震計や磁力計、大気計測などを行うための着陸船を複数台火星に着陸させ、それらを周回機によって「ネットワーク」で結び、火星全体の構造を調べようという計画でした。
2009年に打ち上げられる予定でしたが、予算上の問題で、探査機を運ぶロケットをNASAが打ち上げないことを決定したことから、計画はキャンセルされました。

フォボス・グルント (Phobos Grunt)

フォボス・グルント
フォボス・グルント (Photo by IKI)
フォボス・グルントは、ロシアが実行したサンプルリターン計画です。「グルント」とはロシア語で土の意味なので、英語では「フォボス・ソイル」とも呼ばれます。
計画全体は、かつて失敗したフォボス計画、及びマルス96計画を合わせたような計画で、フォボスの表面の砂を地球に持ち帰ることを狙っているほか、現地での観測なども行われる予定でした。
当初、2009年10月の打ち上げを目指していましたが、直前になって探査機が打ち上げるに足る条件を満たさないとして打ち上げは中止、約2年間の延期の後、2011年11月に打ち上げられました。
ところが、探査機は地球周回軌道から火星への軌道に乗るためのエンジン噴射が行えず、地球周回軌道から脱出できないまま地球を周回することになってしまいました。最終的に、大気との摩擦によって探査機は高度を下げ、そのまま地球へ突入、2012年1月に南太平洋に墜落しました。
失敗の原因としては、探査機に搭載されていた電子機器の問題が指摘されていますが、ロシア宇宙開発の構造的な問題や、後述する蛍火1号を搭載するための開発途中での大きな設計変更などが背景にあると指摘する声があります。

蛍火1号 (Yinghuo-1)

蛍火1号(Yinghuo-1、インホワ・ワン)は、中国のはじめての火星探査機です。
蛍火1号は周回機で、火星のまわりを回りながら、火星の気象などの観測を行う予定です。大きさは長さと幅が75センチ、高さが60センチ、重さは115キログラムと小型です。
2009年11月、上述のロシアの探査機、フォボス・グルントと同じロケットで打ち上げられましたが、このフォボス・グルントの不具合によって同様に地球周回軌道から脱出することができず、そのまま2012年1月に地球に墜落しました。
なお、中国は、2013年にも、独自ロケットでの火星探査機打ち上げを目指しているといわれています。

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