全文検索 総合案内 サイトマップ
> 月・惑星へ > 火星・赤い星へ > 火星探査 > 2001マーズ・オデッセイ > トピックス
月・惑星へ

火星・赤い星へ

2001マーズ・オデッセイ トピックス

2007年5月12日 19:30更新

2003年11月以降のトピックスを掲載しています。

火星の地下にパッチ状の氷 (2007年5月2日)
2001マーズ・オデッセイの探査データを解析したところ、氷が火星の地下の異なる深さに、パッチ状に存在していることが明らかになりました。
この発見は、これまで明らかにされてきたよりももっと詳細に、火星の地下の氷の存在について明らかにするものです。NASAの次の火星探査計画である着陸機「フェニックス」では、極域の平原で氷が混じった地表面を掘削する計画になっていますが、この掘削では、数十センチメートルの間隔をおいて、異なる氷の層を見つけることになるかもしれません。今回の研究成果は、5月3日発行の科学雑誌「ネイチャー」に掲載される予定です。
「土のいちばん上の層が、地下の氷の層に大きな影響を与えていることがわかった。」と述べているのは、アリゾナ州立大学の研究者であり、今回の論文の筆頭執筆者であるジョシュア・バンドフィールド (Joshua Bandfield)氏です。彼が解析したデータは、2001マーズ・オデッセイ探査機に搭載されている熱放射映像システムが取得したもので、この装置は可視光線で5つの波長域、そして赤外線領域で10の波長域のデータを取ることができます。
今回の発見は、火星の北極付近の領域と南極付近の領域で撮影された赤外線データから得られました。ここは5年前に、2001マーズ・オデッセイ探査機に搭載されたガンマ線スペクトロメータにより、人の腕ほどの深さに氷が存在していることが確かめられた地域です。これらの観測機器により見つけることができる最も小さな氷のパッチは、今回の深さごとの氷の層を発見する新しい方法で見つけるよりも数百倍も大きくなってしまいます。この方法であれば、数百メートル単位の氷のある/なしをみつけることができます。
火星の地下のパッチ状の氷 左の写真は、火星のメレア平原における、氷の深さの分布図です。
今回の新しい研究方法では、熱放射映像システム(いわばカメラ)のデータを温度計として使い、その地域で春、夏、秋と温度がどのくらいの早さで変化するかに着目しました。分厚い氷の層は、その上にあるゆるくたまった土よりも熱を蓄積します。従って、氷の層が地表に近いところにあれば、より深く埋まっているところよりも温度の変化はゆっくりになることになります。
こうして得られた地表の図では、氷がどのくらい地表に近いところに存在するかによって、異なる結果が得られることになります。バンドフィールド氏によれば、表面に多くの岩が存在するところでは、「地表に多くの熱を放射することになり、氷の層は深いところにしか存在できない。」一方で、細かい砂などからなる領域では、氷の熱を断熱することになり、地表近くに氷が存在できる領域ができることになります。「この、岩と土という2つの表層物質は、火星表面に広く分布している。従って、パッチ状の分布を説明できるのだ。」(バンドフィールド氏)。
コンピュータモデルによる計算も、今回の研究結果の解釈に役立ちました。「結果によれば、土で被われた層であれば氷は数センチ下のところまで存在できるが、他の地域では氷は数十センチメートル以上深いところでないと存在できない。」(バンドフィールド氏)
今回の結果は、火星の気候の長期変動モデルとも一致を見せています。このモデルによれば、火星は以前はより暖かい時期とより寒い時期の両方があり、ちょうど地球の氷河期のような寒暖のある時期を迎えていたことがあることがわかっています。「現在の火星の気候状態で、氷が地表の下数センチに存在するということは、火星の地下の氷が気候変動に対応しているということを示している。」(バンドフィールド氏)。また、この氷が気候の変動により大気中の水蒸気となった可能性もあります。
熱放射映像システムの主任研究者であり、アリゾナ州立大学のフィリップ・クリステンセン (Philip Christensen)氏はこう述べています。「火星に水が存在し、そのほとんどが氷として存在していることは、もう何十年も前から科学者の間で知られてきた。今回の研究で非常に面白い点は、氷がどこに土のような形で存在しているかを明らかにしたことにある。私たちの疑問は次の段階へと進みつつあるのだ。」

探査は延長戦へ (2004年11月27日18:20)
※元記事は2004年8月25日現在のものです。

2001マーズ・オデッセイは、基本ミッション期間を終了し、延長ミッションに入ることになりました。2002年2月から火星観測を開始してきましたが、当初の予定である1火星年(地球の23ヶ月)を過ぎても探査機の調子は良好で、数多くの科学的成果も得られていることから、NAASAでは2006年9月までミッションを延長することを決定しました。
期間が延長されたことで最も期待できるのは、長期にわたる火星の気象の観測です。極冠の季節的な変化や、雲、砂嵐といった火星の気象変化をさらに詳しく観測できるでしょう。
また、2008年に打ち上げが予定されている探査機「フェニックス」の着陸地点の選定に寄与するデータの観測や、来年打ち上げ予定で2006年に火星に到着するマーズ・リコナイサンス・オービタと協調した大気観測なども予定されています。
また、数多くの成果を挙げているマーズ・エクスプロレーション・ローバの観測データのうち、85%は2001マーズ・オデッセイを中継して送られてきています。このように、縁の下の力持ちとして、この探査機はこれからもますます活躍することでしょう。

2001マーズ・オデッセイ、火星周回1万回めを迎える (2004年11月27日17:20)
※元記事は2004年5月28日現在のものです。

地味ながらじっと働きつづけている人には、いつかスポットライトが当たるものです。この5月22日(アメリカ現地時間)、2001マーズ・オデッセイ探査機は、火星周回1万回という大きな節目を無事、通過しました。
探査機が火星の科学観測をはじめたのが2002年2月19日(アメリカ現地時間)ですから、約2年3ヶ月で、この大きな節目に到達したことになります。
もともと、2001マーズ・オデッセイの構想は、1998年のマーズ・クライメイト・オービタマーズ・ポーラー・ランダの失敗に遡ります。2001年にも同じような周回機と着陸機の組み合わせによる火星探査が予定されていたのですが、NASAでは2期の探査機の失敗を受けて計画を縮小、残った探査機がこの2001マーズ・オデッセイだったというわけです。それだけに、関係者の喜びもひとしおといえるでしょう。
2001マーズ・オデッセイの科学主任であるゲイロン・マクスミス (Gaylon McSmith)氏はこう語っています。「宇宙探査には大きな数字、例えば光年、テラバイトにわたるデータ、大推力、がつきものです。私が思うに、宇宙探査にかかわっている科学者から見れば、1万回の周回とそれを成し遂げたすべての努力は十分に”大きな”数字です。2001マーズ・オデッセイが成し遂げた成果は傑出しており、1万回の周回によって得られた貴重な情報という宝物は、これから何年も火星関係の科学者に役立つことでしょう。」
JPLの記事 (英語)

2001マーズ・オデッセイ 「1周年」を迎える (2004年1月14日23:30)
どうしても今はローバの派手な活躍に目を奪われがちですが、2001マーズ・オデッセイ探査機も、地味ではあっても活躍を続けています。先週、2001マーズ・オデッセイ探査機の観測期間が、火星の1年間(687日)になりました。
この間に、探査機は火星の地表の下にある氷の存在を見つけ出したり、鉱物組成を調べる、さらには火星の環境を調査するなど、様々な成果を挙げてきました。また、火星に到着しているマーズ・エクスプロレーション・ローバマーズ・エクスプレスの着陸機「ビーグル2」の通信を中継するなど、縁の下の力持ちとしての役割も果たしています。
もちろん、ローバがどこを探検するか、といったことも、周回機があらかじめ火星の表面をくまなく調べているから、科学者が興味深いポイントを見つけ出せるのです。そして、今回のローバ「スピリット」のデータの75%は、この2001マーズ・オデッセイ探査機を中継して地球へ届けられています。探査機はまだまだ、活躍の場が続きます。
JPLの記事 (英語)

火星の気候変動の証拠を発見 (2003年12月20日18:10)
2001マーズ・オデッセイの観測データから、火星が気候変動の最中にあることを示唆する証拠が発見されました。
2001マーズ・オデッセイは2002年初頭から火星の観測を行っています。その観測データを解析したところ、低緯度地域にある氷の量が、大気とのバランスからすると明らかに多すぎるという事実を、ロスアラモス国立研究所の研究者が突き止めました。
このデータの解釈として、火星が今、氷河期の終わり頃にいるのではないかという説が提唱されています。低緯度地域では氷が消えつつあるが、その他の地域ではまだそのようにはなっていないというわけです。
また、搭載されているガンマ線スペクトロメータのデータから、火星の表面は主に3層に分かれていて、いちばん表面は乾いた砂、真ん中はやや氷を含む層、いちばん下の層は非常に氷に富んだ層であると推定されています。これも気候変動を示すもので、いちばん下の層は寒い時代のもの、真ん中の層はやや暖かい時代の層ではないかと考えられています。

太陽フレアの影響で観測装置の一部が故障 (2003年11月28日17:50)
2001マーズ・オデッセイの観測装置の一部に故障が発生しました。故障したのは、火星の放射線環境を計測する装置です。この装置は、火星表面に存在する放射線の量を調べるための装置です。将来人間が火星に到着したときに、人体に有害な放射線がどの程度火星に存在しているかを知るために搭載されました。
2003年10月28日、当時発生した激しい太陽フレアの影響を受けて、この観測装置の動作が停止してしまいました。太陽フレアによって発生した、電気を帯びた大量の粒子が、観測機器を直撃したものと考えられています。
NASAではその後、観測装置を復旧させる作業を続けていますが、現時点でも回復できていません。NASAでは、今後数週間から数ヶ月にわたって、復旧作業を続けることにしています。

2001マーズ・オデッセイ トップへ