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月探査機

コンステレーション計画(アメリカの有人月探査)
トピックス

2005年9月26日 19:00更新
月探査計画の概要はこうなっている (2005年9月26日19:00)
月へ向かう宇宙船の想像図
月へ向かう宇宙船(CEV)の想像図
(Artist's concept by John Frassanito and Associates)
2020年までに、NASAは宇宙飛行士をふたたび月へと送りこみ、月の表面を探査する…そして今度は、そこへ留まり、火星、そしてその先へと向かうための前線基地を構築する…このような壮大な計画が、ついにNASAから発表されました。
この構想の目玉となるのが、4人の宇宙飛行士を地球から月へと、また月から地球へと運ぶ新しい宇宙船です。この宇宙船は、将来的には6人の宇宙飛行士を火星へと運ぶことができ、国際宇宙ステーションに乗員や補給物資などを届けることができます。
新しい宇宙船は、アポロ宇宙船のカプセルに形が似ていますが、大きさは3倍もあり、同時に4人の宇宙飛行士を乗せることができるのです。
新しい宇宙船には、電力供給のための太陽電池パネルが装備され、カプセルと着陸船はエンジンの燃料としてメタンを使用します。なぜメタンか? これは、将来的に火星大気からメタン燃料を作ることを考えているためです。
この新しい宇宙船は10回まで再利用することができます。パラシュートを使って着地(または、緊急時のオプションとして着水)した後は、NASAはすぐに船体を回収し、耐熱板を取り替えて再び打ち上げることができます。
アポロと比べて2倍となる、4人の宇宙飛行士を新たに月面へ送り込むことができます。そして宇宙飛行士たちはアポロ時代と比べてより長く滞在することができます。最初の計画では4〜7日程度の滞在になるでしょう。アポロ計画では、着陸場所が月の赤道付近に限られてしまっていましたが、今度の着陸船は十分な燃料を搭載しているため、月のどこへでも着陸することができます。
月面基地が構築されれば、宇宙飛行士は6ヶ月まで滞在することができます。軌道上では宇宙船は無人でも運用することができ、誰かが軌道上に1人残るという、アポロ時代のようなこともなくなります。

■2つのロケットプラン
この宇宙船の打ち上げを支えるのは、スペースシャトルでも使われた強力なロケットです。宇宙飛行士たちを打ち上げるのは、第1段にスペースシャトルの固体ロケットブースターを使い、第2段がシャトルのメーンエンジンを使用したロケットになります。
もう1つ、より強力なパワーをもつロケットは、2つのより長い固体ロケットブースターと5つのシャトル用メインエンジンから構成されます。このロケットは軌道上に125トンもの物資を輸送することができます。これはスペースシャトルの1.5倍にものぼります。このような多目的システムは、月や火星に行くために必要な貨物や部材などを軌道上へ輸送することができます。もちろん、この大型ロケットを人員輸送用に転用することも可能です。
特筆すべき点として、この打ち上げ用ロケットシステムは現在のシャトルシステムよりも10倍安全であると考えられています。これは、上部のカプセルに脱出用ロケットが装着されており、もし何らかの問題が発生しても、乗員がすぐに脱出できるようになっているからです。また、カプセルはロケットの上部に搭載されているため、打ち上げ時の破片によって宇宙船に傷がつく可能性も小さいといえます。

■フライトプラン
5年以内に、新しい宇宙船は国際宇宙ステーションへの物資や人員の輸送を開始します。
年6回までの飛行が予定されています。一方で、無人探査機が、月の様子を調査します。そして、2018年、4人の宇宙飛行士が月へと向かうミッションが開始されます。
計画では、まず着陸船と、「出発ステージ」(departure stage)と呼ばれる、地球から離れるのに必要となる部位を、大型のロケットで打ち上げます。その後乗員を乗せた小型のロケットを打ち上げ、これらは上空で合体して月を目指します。
3日後、宇宙船は月周回軌道に入ります。4人の宇宙飛行士たちは着陸船へと上り、カプセルは軌道上に置いたままにしておきます。7日間にわたって月面を探査した後、宇宙飛行士たちは着陸船に乗り込み、その一部を発射します。これが再度月上空のカプセルと合体した後、地球へと戻ってきます。軌道離脱噴射後、機械船が切り離され、このミッションではじめて耐熱板がその役割を果たすときが来ます。最終的にパラシュートが開き、カプセルは陸地に着陸することになります。


■さらに先へ
月着陸船の想像図
月へ着陸した着陸船と、月面を探査する宇宙飛行士の想像図
(Artist's concept by John Frassanito and Associates)
最低でも年2回の月探査により、恒久的な月面基地への弾みがつくことになるでしょう。宇宙飛行士たちはより長く月面上に留まり、月資源の開発などの方法を知ることができるようになります。最終的には、このシステムにより、月面基地の乗員を6ヶ月ごとに交替させることもできるようになります。
計画では、月面基地の場所として月の南極が有望視されています。なぜなら、(水の)氷の形で水素が大量にあると思われていますし、太陽光によって電力も得られると考えられるからです。
このような計画は、NASAの火星探査への幸先のいいスタートとなるでしょう。その頃には火星行きのロケットも、多目的の有人カプセルも、火星の資源を利用することができる推進システムも存在するでしょう。地球から3日で行ける月面基地は、「地のものを食べて生活する」ための格好の訓練場として、火星へのより長い旅への準備を行う場所となるはずです。
NASAの記事へ (英語)

NASA、新しい宇宙船構想を発表
新宇宙船による月面探査構想も公表
(2005年9月26日17:00)
NASAのマイケル・グリフィン長官は19日記者会見を行い、これまで検討が進められてきた新しい宇宙船についての研究結果を公表しました。これは、人間を月、火星、さらにはより遠くへと運ぶための宇宙船の、「青写真」となるものです。
今回の研究では、宇宙(地球近傍)へ人間を運ぶための宇宙船、更には月や火星などのより遠い天体に人間を運ぶ宇宙船について設計上の考慮すべき点が示されています。また、月面探査計画についてのプランも発表されました。さらに、この計画実現のために、NASAが近い時期に取り組むべきテーマについても示されています。

アメリカの次世代の宇宙船は、より性能が高く、丸みを帯びたカプセル状のものになるでしょう。この宇宙船には6人まで人を乗せることが可能です。グリフィン長官は、「この宇宙船及びシステムは、これまでアポロ計画やスペースシャトル計画で培われてきた技術やデザインの上に構築されるものだ。宇宙船はより多くの人や貨物を運ぶことができ、結果として、人間がより長い期間にわたって月面に滞在することができるようになるだろう。」と述べています。
新しい宇宙船は、有人宇宙船と無人貨物宇宙船の2つのパターンに分けられます。設計には大きな柔軟性を持たせてあり、例えば、国際宇宙ステーションに3人の人員とサポートようの物資を持っていく(持って帰る)こともできれば、月軌道に4人の宇宙飛行士を送りこむこともでき、さらには6人のメンバーを火星にまで送ることまでできるようになっています。
有人、無人の宇宙船共に、スペースシャトルから派生した打ち上げシステムを使って打ちあげられます。これは、固体ロケットブースターと、シャトルのメインエンジンからなる上部ステージとで構成されます。また、スペースシャトルに比べ、安全性をもともと織り込んだ設計になっており、打ち上げ中止システムなども持っているため、10倍ほど安全であると考えられています。
NASAでは、このスペースシャトル派生型の宇宙船を、優れた安全性に加え、コスト、運用性などの面から採用することにしました。特に、スペースシャトルのメインエンジンや固体ロケットブースターは有人飛行にも耐えうる信頼性を持っています。今回の選択を支える工業的な素地やハードウェアは既に整っており、開発コストを非常に低く抑えることができます。

さて、NASAが発表した月探査計画の概要は次のようなものです。まず、5つのシャトルメインエンジン、そして5つの固体ロケットブースターによって、無人の貨物船を打ち上げます。この組み合わせのロケットは、低軌道に106トン、地球脱出軌道には125トンもの物資を打ち上げることができます。この組み合わせは基本的には貨物打ち上げ用ですが、有人打ち上げ用に転用することも可能です。
今回の計画は、慎重な検討を重ね、かつ行程を重視した考え方となっています。月に戻って、そこに長期にわたって滞在することは、人間が地球と異なる世界でも生き抜いていけることを示せると共に、宇宙飛行士がさらに遠く、さらに長く滞在できることを示すものでもあります。NASAの月探査計画は宇宙生物学や月面地質学、天文学や物理学などの基礎的な学問への機会を広げるものでもあります。
有人探査に先駆ける形で、2008年と2011年には無人探査が行われます。ここでは月面の地図作りなどが行われます。これらにより、月面の着陸場所や、長期にわたる月面探査の目的となる、月面における資源(酸素や水、金属など)が得られるかどうかなどを調べることになっています。


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