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月探査機
コンステレーション計画
計画の概要

■ふたたび月へ人を送る、そして火星を目指す

2004年1月、アメリカは「新宇宙政策」(VSE: Vision for Space Exploration)を発表しました。この計画では、2020年(当初は2018年)をめどに、人類をふたたび月へ送ること、そして将来的には、人類史上初の有人火星探査を実行することがうたわれました。
この政策に基づき、NASAが立案した計画が、「コンステレーション計画」です。コンステレーションとは「星座」という意味で、遠い宇宙という意味の象徴ということだけではなく、後述するようにさまざまなロケットや探査機を組み合わせることで、探査を実施するという意味が込められています。
コンステレーション計画は、よく有人月探査計画と同一視されることがありますが、そうではなく、アメリカが計画している有人宇宙輸送計画と捉える方が自然です。その計画は、宇宙ステーションのような地球近傍から、月、そして火星に至るまでを包括した、総合的な有人(無人も含め)輸送手段を確立するという理念に基づいています。

■アレスロケット…コンステレーション計画を支える輸送手段

このコンステレーション計画において、中核的な役割を果たすのが、アレス(Ares)ロケットです。
これまで、アメリカの有人宇宙輸送は、1980年代からスペースシャトルに頼ってきました。しかし、スペースシャトルの老朽化が近づき、NASAは2010年までにスペースシャトルの退役を決定しています。また、2度の事故に象徴されるように、一度大きな事故が起こると大きな人的犠牲を払うことになります。さらに、当初再利用によってスペースシャトルは低コストでの宇宙輸送を実現できるとしていましたが、実際には期待の再整備などのコストがかさみ、思ったほどコスト低減につながらなかったどころか、コストがかなりかさむという結果になってしまいました。
この反省から、コンステレーション計画では、使い捨てのロケットへ立ち戻り、より効率的な輸送を目指そうとしています。一方、新たなロケットを一から開発するのは膨大な費用と時間がかかることから、アレスロケットは既存のスペースシャトルのロケットを改良した形で開発が行われています。
このアレスロケットは2種類に分かれています。アレスI(Ares-I)は、スペースシャトルの固体ロケットブースターを改良したものとなっており、将来的には人間を乗せて打ち上げることを目指しています。このロケットには、後述する有人宇宙船(オリオン、またはオライオン)を搭載することになっています。 アレスV(Ares-V)は、スペースシャトルの外部燃料タンクを改良して用いる形で開発が進められています。主に物資輸送を担当するロケットで、低軌道への物資輸送のほか、外惑星への探査機打ち上げなどにも使えるものです。なお、名前が「V」(ファイブ)となっているのは、かつてアポロ宇宙船を打ち上げた「サターンV」(サターン・ファイブ)にちなむものです。

■オライオン…さまざまなニーズに対応した有人宇宙船

一方、人間を乗せる宇宙船の方は、オライオン(オリオン Orion)と名付けられました。2004年の新宇宙政策発表当時はCVE(有人輸送船)と名付けられていましたが、その後正式に愛称がつけられたものです。
オライオンは、やはりスペースシャトルにおける経験を踏まえ、最大で6人乗りのカプセルという、どちらかというとアポロ時代に近い形になりました。スペースシャトルとは異なり、大気圏で使用するような翼をなくすことで、スペースシャトルの事故の元となった部分を排除することができます。また機体は再利用可能ではありますが、スペースシャトルほど何度も利用するということを想定しないことで、コストを抑えることを狙っています。
特徴的、かつアポロ時代のカプセルと異なるのは、太陽電池パネルを備えていることです。これにより、火星探査などで想定される半年〜1年間の宇宙飛行においても十分な電力が確保できることが期待されます。

■アルテア…月着陸船

アルテア(アルタイル Altair)は、月面における有人活動の要となる着陸船及びローバーです。
アルテアでは4人の宇宙飛行士が1週間程度生活できる装備を備えています。また、アルテアは月面基地へ人間を運ぶ移動手段としても用いられ、月面基地では最高で6ヶ月にわたって宇宙飛行士が生活できるようになっています。
このアルテアはもちろん、月面基地構築のための貨物を輸送することも想定されています。この場合は無人で運用することも可能で、14.5トンの荷物を月面へと輸送することが可能です。

■コンステレーション計画の推移

2004年1月、スペースシャトル「コロンビア」の事故1年と、マーズ・エクスプロレーション・ローバーの成功という状況を受けて、NASAとブッシュ大統領(当時)は、アメリカの新しい宇宙計画、新宇宙政策(VSE)を実施することを宣言しました。
この政策に従って、VSEに盛り込まれた月、火星への輸送手段、及び2010年に退役するとされたスペースシャトルの後継輸送手段の開発が開始されました。
この開発に当たっては、スペースシャトルでの運用の反省を踏まえて計画が立案され、その結果、低コストでかつ信頼性の高い輸送手段として、アレスロケット及びオライオン宇宙船の開発が決定されました。
一方で、月探査についての計画も着実に進行する一方、無人探査機(ルナー・リコネサンス・オービター)による月面基地候補地の探索も進みました。この結果、アルテア月着陸船を利用して月の極地域に着陸し、有人月探査を実施するというプランが策定されました。
一方、ロケットの開発は当初は楽観視されていたものの、実際に進み始めると難航し、目標から徐々に遅れていきました。アレスIロケットの試験機の打ち上げは2009年10月になってようやく打ち上げに成功しました。
こうした開発の遅れ、それに伴う予算の膨張に加え、アメリカが2008年にいわゆる「リーマン・ショック」によって経済が落ち込み、財政支出が膨大になることから、やはり膨大な費用がかかるコンステレーション計画に対し、オバマ政権が見直しを行うことになりました。
2009年の夏から秋にかけて、その見直しを行うための委員会、通称「オーガスティン委員会」が開かれました。その結果、コンステレーション計画が目指している「月にまず行き、そこから火星を目指す」というシナリオだけではなく、月を含め、地球近傍小惑星やラグランジュ点など、さまざまな場所を探査したあとに火星を目指すというシナリオ、いわゆる「フレキシブルパス」(Flexible Path)が提言されました。そして、今後のアメリカが目指す方向性として、5つの選択肢が提案されました。
この提案からさらにオバマ政権内での検討が進められた結果、2010年2月1日(日本時間2日)に提出されたアメリカの2011年会計年度の予算教書では、今後コンステレーション計画への新たな予算計上を見送ることとなりました。
実際にコンステレーション計画が中止されるためには、今後議会での折衝などが必要になりますが、この方針がこの先どのような方向へ進むのか、しっかりとみていく必要があります。



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