名月や池をめぐりて夜もすがら 桃青

蛸壷やはかなき夢を夏の月 芭蕉

ひとつ家に遊女も寝たり萩と月 ばせを

三井寺の門たたかばやけふの月 翁

(一人芭蕉といえども時期、立場で 宗坊 桃青 ばせを 芭蕉 翁 等 名乗っています)

鎖(じょう)あけて月さし入れよ浮み堂 蕪村

名月や門へさしくる汐がしら 蕪村

菜の花や月は東に日は西に 蕪村

以下は、芭蕉、蕪村以外の句

はなやぎて月の面にかかる雲 高濱虚子

三日月のにほやかにして情けあり 高濱虚子

三日の月白魚生るる頃ならん 正岡子規

名月や巡りて見する風車 正岡子規

名月や浪速に住んで橋多し 夏目漱石

月光にこゑとめがたし青葉木菟 山口誓子

夕月のたへにも繊き案山子かな 水原秋桜子

月さして一間の家でありにけり 村上鬼城

真っ向に名月照れり何はじまる 西東三鬼

チチポポと鼓打とうよ花月夜 松本たかし

歩み入る島は中夏の朝月夜 中村草田男

父がつけし吾が名立子や月を仰ぐ 星野立子

一燈無く唐招提寺月明に 橋本多佳子

鎌倉の月高まりぬいざさらば 阿波野青畝

円覚寺の森に居し月連れ戻る 石原千代

月隠す術なき屋根となりにけり 久保田万太郎

明月やまいりて語る母が許 小沢碧童

とどまれば月の歩みもとどまれる 大橋桜披子

この月よをちかた人にまどかなれ 久保より江

稜線を刻々鎮め月のぼる 横山白虹

月の名をいざよひと呼びなほ白し 竹下しずの女

月さして風鈴の影生まれけり 清崎敏郎