Category: 惑星探査一般
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ヨーロッパ宇宙機関(ESA)はこのほど(5月2日)、新たな惑星探査計画の候補として、木星探査計画を選定したと発表しました。

これは、ESAの将来探査計画「コズミックビジョン」における、大型惑星探査計画の中での候補選定です。コズミックビジョンの中でも、2015〜2025年に打ち上げる予定の、大規模な(Lクラス=Large−Scale)プログラムとして選定されています。
今回候補として選定された木星探査計画は、「木星氷衛星探査機」(ジュース=JUICE: Jupiter Icy moons Explorer)という名前で、他の2つの候補を抑えての選定となりました。残りの2つの候補は、NGO(新重力波望遠鏡: New Gravitational wave Observatory)とアテナ(ATHENA: Advanced Telescope for High-Energy Astrophysics)の2つです。

ジュースは、現在の計画では、2022年にアリアン5型ロケットを使い、南アメリカのフランス領ギアナにあるESAのクールー宇宙基地から打ち上げられる予定です。木星到着は2030年、そこから最低3年をかけて、詳細な観測を実施する計画です。
このジュース計画が力点を置いているのは、木星の衛星、とりわけ4つの大きな衛星「ガリレオ衛星」の探査です。とりわけ、氷衛星として知られる知られるエウロパ、ガニメデ、カリストは、その内部に海が存在することが知られていますが、ジュース計画では、この3つの衛星を調べ、海の存在から生命の可能性について明らかにすることを目指しています。これは、コズミックビジョンの2つのテーマである、惑星の誕生と進化、そして生命の誕生の解明にもぴったり合うものとなっています。

ジュース衛星は、探査中に木星の大気と磁気圏を継続的に観測するほか、それらがガリレオ衛星とどのように関係するかについても調べる予定です。
さらに、ジュース計画ではカリストを訪れ、エウロパを2回フライバイする予定です。この観測で、エウロパの氷の地殻の厚さを測るほか、将来的にエウロパ着陸探査を実行する際に最適な着陸場所を見つけるためのデータも得ることになります。

最終的にジュース衛星の目的地となるのはガニメデで、到着は2032年の予定です。調査項目としては、表面の様子や内部構造が主です。また、ガニメデは太陽系の衛星の中で唯一、磁場を持つことが知られていることから、その磁場の起源についても観測することになっています。また、ガニメデは木星自身の磁場やプラズマと相互作用を及ぼし合っていることから、それらの観測も行うことになっています。

今回の探査計画の選定について、ESAの科学プログラム委員会のリチャード・ボンネビル委員長は、「3つの候補はいずれも科学的に非常に高い内容を持っていたため、選定は困難を極めた。今回の選定について、宇宙科学アドバイザリー委員会には多くの仕事をしていただいて大変感謝している。」と述べています。

今回のプログラム選定は、ESAが2004年からスタートした、次期10年に関する宇宙科学探査計画に関する選定過程のクライマックスともいえるものです。2007年に探査計画の募集が開始され、コズミックビジョンの思想に基づく探査の公募が始まりました。「非常に多くの候補の中から1つの探査計画を選ぶというのは大変な難作業だった。この(候補となった)3つの探査計画とも、世界的な競争力を持つ科学的な内容を持ち、また、ヨーロッパを科学面でトップに押し上げる力を持っている。」と、ESAの科学・無人探査部門長のアルバロ・ギメネズ・カニェーテ教授は述べています。

今回落選したNGOとアテナの両計画についても、もう一度科学プログラム委員会での検討が行われ、技術的な改良が続けられる予定です。それにより、将来の探査選定のチャンスが与えられる予定です。次回の探査計画公募は2013年に実施されることになっています。

・ESAのニュースリリース (英語)
  http://sci.esa.int/science-e/www/object/index.cfm?fobjectid=50321
Category: ドーン
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昨年から小惑星ベスタの探査を続けている探査機ドーンについて、その最新の探査結果がこのほどNASAから発表されました。ベスタの表面がこれまで考えられていたより変化に富んでいることや、温度変化が急激であることなど、内部構造についての手がかりになるような結果も得られています。今回の最新探査結果は、現在オーストリアのウィーンで開催されているヨーロッパ地球物理学連合大会で発表されており、この結果が、ベスタをはじめとする小惑星の形成や進化を理解するために役立つものと期待されています。

ドーンの探査では、上空680キロ、及び210キロからベスタ表面の写真を撮影していますが、この写真から、ベスタ表面がバラエティに富む鉱物や岩石の分布をしていることがわかってきました。スペクトルごとの写真を特殊な方法で重ね合わせた画像を作成することにより、特定の鉱物が多く集まる場所などがわかり、一度溶けたとされているベスタ表面の物質についてのよりよい理解につながります。

また、隕石などの衝突の破片が集まってできた角れき岩と呼ばれる岩石についての研究結果もまとまってきています。ドーンでわかっているこれらの岩石は、鉄やマグネシウムに富む鉱物が多く、地球の火山岩などでみられる岩石とよく似ています。また、上空から撮影された画像からは、まるで池のような形をした堆積物も発見されており、これはおそらく、衝突によって発生した細かい破片が、低い場所に集まって形成されたものではないかと考えられます。

ベスタの北極近くにあるタルペア・クレーターでは、クレーターの壁のところに、きれいに層をなしているスペクトルの違いがみえています。これはおそらく、その物質(おそらくは溶岩)の成分の違いを反映しているものと思われます。
表面に近い層には、ベスタに衝突した物質そのものが混じっています。層は下に行くほどより本来の物質に近いものとなります。また、こういう崖のようなところは頻繁に崩れるため、こういった物質が露出する可能性が高まるわけです。
このことから、研究者は、ベスタの表面は常に新しい物質に更新されているということを見いだしています。

また、ドーンのデータを元にして、ベスタの内部構造を表した立体画像も公開されました。もちろん、内部構造は私たちは直接みることができませんし、まして立体的にみることなどまずできませんので、このような画像をもとにすると、重力データをもとにしたベスタの内部構造を知ることができるわけです。どうやらベスタの内部には、今まで考えられなかったような密度の領域があるようです。ドーンからのデータをみると、南極付近にそのような密度が異なる部分があるようで、これはレアシルビア盆地と呼ばれる場所(衝突クレーター)の近くに分布している、地下からきたとみられる物質と一致しているのではないかと考えられます。

一方、ドーンはこれまでに得られたことがないほどの高精度な小惑星表面の温度分布測定データも取得しています。それによると、ベスタ表面の温度は、日が当たっている最も高いところではマイナス23度、逆に影になっているもっとも冷えている場所ではマイナス100度にまで下がっています。大気がないため、表面の物質は急速に暖められ、また急速に冷えてしまうようです。

NASAのジェット推進研究所所属で、ドーンの副探査責任者でもあるキャロル・レイモンド氏は、「9ヶ月にわたるベスタ探査により、ドーンはこれまで、私たちが光の点としてしかみることができなかった巨大小惑星ベスタの真の姿をのぞき見ることができた。小惑星の秘密に、私たちは一歩近づいたのだ。」と述べています。

・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/apr/12-134_Dawn_Vesta_Details.html

・ドーン (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/pex_world/Dawn/
Category: ドーン
Posted by: moonstation
現在、小惑星ベスタの探査を行っているドーンですが、いわば「ロスタイム」として、約40日ほどの探査延長が決定しました。今回の探査延長により、ドーンがベスタを離脱する日は8月26日となり、一方、次の目的地である準惑星セレスへ到着する日程はこれまで通り、2015年2月で変わりありません。

今回の探査期間延長では特に追加支出が発生するということもなく、探査機の推進システム(電気推進システム)をより柔軟に扱うことができたことが今回の延長探査の余裕を生むきっかけになっています。

現在、ドーンはベスタを周回する低軌道(高さ210キロ)での探査を行っていますが、この高度での探査を少なくとも5月1日まで継続することになりそうです。低高度での探査が延長されることで、ドーンに搭載されているガンマ線・中性子検出器のデータの質の向上が図られ、ベスタ表面の物質についての非常に精密な地図が作成されることが期待されます。また、重力データの向上も行うことができるでしょう。カメラやスペクトロメーターについても、より詳細なデータを得ることができます。

また、探査期間が延長されたことで、第2期の高々度でのマッピングがこの夏の後半に行われる予定です。ドーンがベスタに到着した昨年(2011年)夏には、ベスタの北半球の大半が影で覆われていました。この延長探査ではその部分に日が当たっているため、新たな探査データが得られる可能性があります。

ドーンの主任探査責任者であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のクリストファー・ラッセル氏は、「若干滞在期間が長くなったことで、ベスタのすばらしい眺めをより長めに楽しめるようになった。ベスタを周回できるという千載一遇の機会を活かし、この間に最良、そしてもっとも詳細なデータを得ることを目指したい。」と述べています。

・JPLのプレスリリース (英語)
  http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2012-107

・ドーン (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/pex_world/Dawn/
Category: 火星探査一般
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NASAの将来無人火星探査プログラムについての再検討、そして内外の科学者や技術者による検討をサポートするために設置された新しい組織、火星プログラム検討グループ(MPPG: Mars Program Planning Group)が、本格的な活動を開始しました。

先日のブログ記事でもお伝えしましたが、来年以降、NASAの月・惑星探査予算は大幅に減少ことになります。一方で、オバマ大統領は、2030年代には火星有人探査を実現させたい意向です。こな情勢の変化をふまえ、最適な火星探査プログラムを立案することが、このグループに課せられた使命といえます。

NASAの科学ミッション部門の副部門長であり、自身は5回の宇宙飛行を経験した宇宙飛行士、そして天文物理学者でもある(そして、先日月惑星科学会議で行われたNASAミーティングにも出席した)ジョン・グランズフェルド博士は、「私たちは、最適な火星探査の道筋について検討すべく迅速な検討を行っている。その一環として、国際的な意味を含めての科学コミュニティにも検討に参加してもらい、NASA全体としての今後の火星探査の方向性を決めていくことが重要だと考える。」と、このグループの活動意義を述べています。

このグランズフェルド博士率いるグループで活動するのは、ほかに、NASAの有人探査活動部門の副部門長であるウィリアム・ガーステンマイヤー氏、主席科学者のワリード・アブダラティ氏、主席技術者のメーソン・ペック氏です。

このMPPGですが、2月にグランズフェルド博士は、退役した宇宙技術者であるオーランド・フィゲロア氏をグループ長に指名、3月には活動全体の工程表をまとめ、探査の選択肢やNASAの科学、有人探査、運用や技術とをつなぐ部分についての検討を行いました。
本日(プレスリリースは4月13日付)から、国内外の科学者が、NASAに対し、最適な探査についてのアイディアや提案をまとめて提出することが可能となっています。提案は、6月にヒューストンの月惑星研究所(ここは、先日の月惑星科学会議を主催している団体でもあります)で開催されるワークショップで紹介され、議論されることになります。
このワークショップは、提案の紹介だけでなく、議論も行われることになります。そして、提案を元に、2018年以降の火星探査についての計画に盛り込まれていくことになります。

NASA本部の火星探査プログラム長のダグ・マッキストン氏は、「コミュニティから意見をインプットしてもらうことは、検討のプロセスを活性化するために欠かせない。これらの意見をまとめた上で、将来火星探査計画が、科学、そして有人探査や技術的な発展をサポートするようにしていきたい」と述べています。

NASAは火星探査に関しては輝かしい歴史を持っています。現に、2004年から活動を始めているマーズ・エクスプロレーション・ローバー「オポチュニティ」は、8年後のいまでも活動を続けるという驚異的な記録を持っています。周回衛星は、2001マーズ・オデッセイ(こちらはなんと10年間活動を続けており、惑星探査機としてやはり驚異的な寿命です)とマーズ・リコネサンス・オービターが活動を続けています。
さらに8月には、マーズ・サイエンス・ラボラトリーが着陸し、ローバー「キュリオシティ」が活動を開始する予定です。2013年には新たな周回機「メイバン」も打ち上げられます。

・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/apr/12-112_MPPG_Update.html

・火星探査計画に関するワークショップの案内 (月惑星研究所)(英語)
  http://www.lpi.usra.edu/meetings/marsconcepts2012/
Category: 火星探査一般
Posted by: moonstation
アメリカが手を引いてしまった火星探査計画「エクソマーズ」ですが、これにロシアの手が伸びようとしています(決して悪いことではないのですが)。このほど(4月6日に)行われたヨーロッパ宇宙機関(ESA)とロシア連邦宇宙局との会議では、この話題も議論になった模様です。
ロシアとしては、フォボス・グルントで地に堕ちてしまった月・惑星探査計画、さらには自国の宇宙計画への信用を取り戻すことができますし、ヨーロッパはその際に自然なパートナーだということもできます。ただ、計画が本格化するかどうかは今後の議論次第です。この記事は「ボイス・オブ・ロシア」(ロシアの声)経由でMarsdaily.comが伝えています。

この6日に行われた会議では、ESAのジャック・ドルダン長官とロシア連邦宇宙局のウラジミール・ポポフキン長官同士のトップ会談も行われました。会談の詳細な内容については公開されていませんが、ロシア連邦宇宙局の当局者によると、将来的にロシアがエクソマーズ計画に参画するための協定についてが、最も重要な内容だったとのことです。

エクソマーズ計画は、当初はアメリカ(NASA)とヨーロッパとの共同火星探査計画として始まりました。しかし昨年になって、アメリカが探査計画から撤退することになり、計画は中に浮いてしまいました。打ち上げロケットや科学探査機器などの多くがまだ決まっていない状態です。
NASAは現在、新たな火星探査戦略を練り直していると言明しています。エクソマーズ計画は、集会機とローバーを火星に送り込み、生命の痕跡を探すということを目的としていましたが、NASAの撤退を受けて、ESAはロシアに目を向けた、というわけです。
ロシアは一方で、20年ぶりともいえる火星探査機フォボス・グルントを、地球周回軌道から脱出させることができないまま失うという大きな痛手を被ったばかりです。今回のエクソマーズ計画へのロシアの参画をロシア連邦宇宙局が決めたというタイミングは、実際、ロシアが既存の宇宙計画をすべて再検討しているタイミングの中での出来事です。

ロシア科学界は、今年1月にフォボス・グルントが失敗に終わったあと、同様の計画を再度実施すべきと声明を発表していましたが、これは、太陽系小天体からのサンプルリターンがこれまで世界のどの国も成功どころか提案さえしていないということとも関係しています(編集長注: この記事ではこう書いてありますが、「はやぶさ」については間違いなく太陽系小天体からのサンプルリターンを成功させていますから、記事の肩を持つならば「かなり大量の物質を、地球から遠いところ…火星や小惑星帯などからサンプルリターンさせる」という意味で捉えるのが適切であると考えられます)。

仮にその「フォボス・グルント2」が成功したとすれば、ロシアの科学技術における名声は長期にわたって確固たるものとなるでしょう。さらに、フォボスのような始原天体(おそらくそうでしょうけど)からの試料は太陽系の誕生と進化を探る上で貴重なサンプルとなるでしょうから、科学界にとっても大きな仕事が生まれます。
一方で、ロシアの月・惑星科学分野については、長年の探査の欠如によって大きく立ち遅れています。実際、最後に成功したロシアの月・惑星探査計画は、なんと1982年(30年前!)の金星探査、ベネラ14号にまでさかのぼらなくてはなりません。
さらに大きいのが資金の問題です。フォボス・グルント計画に使われた予算は50億ルーブル(約134億円)と言われています。すでに多くの機器は開発済みですから、2号機はこれよりは安く開発できるとは思われますが、ロシアの宇宙予算からするとそれでも多額になることは間違いなく、さらに、ロシアがエクソマーズ計画に参加するとなれば、火星探査全体の予算がより膨らむことになるでしょう。

このあたりの議論は、最近のポポフキン長官の声明にも詳しく述べられていますが、長官自身が、フォボス・グルント計画承認の前に、その科学的重要性をアピールしていた人物でもあります。
ロシア科学アカデミーに属する宇宙科学研究所の長官で、フォボス・グルント探査機の科学機器開発の多くに関わってきたレフ・ゼレニー長官は、2号機が打ち上がるまでには長い時間はかかるだろうが、その科学的な意義が消え去ることはないと述べています。

ヨーロッパもロシアも、現在に至るまで、火星着陸探査を成功させたことがありません。したがって、両国にとって、周回機とローバーを組み合わせた火星探査は、科学的、あるいは技術的目標として掲げやすいということはあります。(編集長注: ヨーロッパはマーズ・エクスプレス探査機に着陸機「ビーグル2」を搭載していましたが、着陸途上で行方不明となりました。ロシアはフォボス・グルントのほか、80年代末の「フォボス」探査機2機、90年代なかばの「マルス96」と連続して着陸機を送り込むことに失敗しています)。

ロシア連邦宇宙局の当局者によると、もしロシアの計画参加に合意することができれば、ロシアとしては打ち上げロケットとしてプロトンロケットを提供し、さらに本来アメリカが提供するはずだった科学機器を提供し、ロシアの科学界にも寄与したい考えとのことです。さらに、探査で得られたデータは、ヨーロッパとロシア双方が権利を持つことにしたいようです。
実際惑星探査は当事者が多いだけに、こういったことはなかなか表に出にくい面もあります。ロシア連邦宇宙局の前長官であるユーリ・コプテフ氏は、現在ロシアの宇宙探査計画策定に関わっていますが、インタビューの中で、国際協力の妥当性について触れており、その中でエクソマーズ計画についても言及しています。

このロシアの宇宙探査戦略については、ロシアがどのような宇宙計画を必要としているのか、という点について激しい議論を引き起こしています。ロシアが今後も有人宇宙開発を正面に据えるのか、はたまたより利用面に特化した方向に進むのか。ポポフキン長官による最近の声明をみると、後者に進みそうな方向のようです。
また長官は、ロシアの宇宙コミュニティの一部からの声にショックを受けているようです。彼らによれば、単に「宇宙クラブ」のトップにいたいがために、宇宙開発の全ての領域に資金を投入することはやめるべきだというのです。長官によれば、GDPに占める宇宙予算の比率はアメリカのそれを依然として上回っているとのことですが、ロシア自身、解決すべきことは山ほどあるのです。

当事者の多くは長官の言に同意しないとは思われますが、火星探査をヨーロッパと共同で進めるという道筋はいちばん自然なものでもあり、宇宙探査という面からみても十分野心的といえるでしょう。

・Marsdaily.comの記事 (英語)
  http://www.marsdaily.com/reports/Russia_and_Europe_give_boost_to_Mars_robotic_mission_999.html
Category: 将来月探査
Posted by: moonstation
ロシアが2020年以降に2機の月面ローバーを、また2022年以降に月面観測ステーションを送り込む計画を持っていることが明らかになりました。Moondaily.comが、RIAノーボスチ通信の記事を引用して伝えたものです。これらの計画は、将来的な有人月面探査へとつながるものとなりそうです。ロシア科学アカデミーの関係者がこの7日に明らかにしました。

RIAノーボスチ通信が入手した文書によると、ロシアの科学者たちの目標は、月面の極地域への着陸で、これにより極地域の観測、及び月上層部の観測を行うことを目指しています。
またこのローバー及び観測ステーションでは、月面の土壌サンプルを取得して分析すると共に、将来的な月面基地を設置する最適な場所を見出す手がかりをつかむことを目指しています(編集長注: 但し、そのための具体的な手段については報じられていません。ローバーや着陸機だけでは難しいと思われますが、詳細は不明です)。

なお、ロシアの月探査は、2015年以降に予定されているルナ・レズルス (Luna-Resurs)、及びルナ・グローブ探査に続くもので、月面ローバーであるルノホート3号、4号は2020〜2022年に、観測ステーションはおそらくは2023年に月面に送られることになる予定です。

この報道では、「この月面ローバー及び観測ステーションは、ロシアがこの地域(極地域?)における月面基地展開のためのインフラ構築を行うための足がかりとなるだろう」と伝えています。

(編集長注) ルナ・レズルスという探査については、私も全く認識していませんでしたが、どうやらロシアが計画している着陸探査のようです。こちらのサイトによると、2006年から計画されており、インドの探査機チャンドラヤーン2と共に打ち上げられる着陸機のことのようです。なお、チャンドラヤーン2の打ち上げは2013年頃とみられていますが、ルナ・グローブについては打ち上げ年がはっきりせず、このままいくと、ロシアは月に向けて周回機より先に着陸機を打ち上げることになるかも知れません。

・Moondaily.comの記事 (英語)
  http://www.moondaily.com/reports/Russia_Plans_to_Launch_Lunar_Rovers_to_Moon_after_2020_999.html

・ルナ・グローブ (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/topics/Luna-Glob/
Category: はやぶさ
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2010年6月に帰還した「はやぶさ」のカプセルは、その翌月に開催された宇宙科学研究所の公開(JAXA相模原キャンパス特別公開)でまずはじめてお披露目され、そのあと全国を巡回して展示されてきました。このほど、3月末に開催された愛知県刈谷市での展示を最後に、このカプセル展示が終了することになりました。

今回のカプセル展示は、全国69会場で開催され、合計で約89万人がカプセルを見学しました。最後の刈谷市での展示では、ちょうど「882300人目」(=「はやぶさ」人目)の見学者もいるなど、切りのよい数字での終了となりました。
ちなみに、この約89万人という数字ですが、「はやぶさ」打ち上げの際に展開された、名前を搭載する「星の王子様キャンペーン」において、探査機(正確には、探査機のターゲットマーカー)に名前を刻んだ数、88万人ともほぼ符合します。もちろん、偶然ではあるのですが、末広がりの「8」という数字と共に、何かの縁を感じるものです。

・JAXA「はやぶさ」ページ (JAXAメインサイト)
  http://www.jaxa.jp/projects/sat/muses_c/

・はやぶさ (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/hayabusa/
Category: グレイル
Posted by: moonstation
月探査機グレイルに搭載されている、教育・アウトリーチ用カメラ「ムーンカム」から、生徒たちがリクエストして撮影した初の月表面の写真が届きました。アメリカ・モンタナ州ボーズマンというところにある、エミリー・ディッキンソン小学校の4年生の生徒たちが、彼らのはじめての月画像を得る、という名誉に浴しました。この生徒たち、実はこのグレイル探査機に「エブ」と「フロー」という名前を付けた生徒たちなのです。そう考えれば、はじめての月画像というのはまさに彼らにふさわしいといえるでしょう。

グレイルには、月・惑星探査史上はじめて、教育・アウトリーチ専用目的でカメラを搭載しています。「ムーンカム」というこのカメラ、正式名称は「中級学校生徒により取得された月の知見」(MoonKAM: Moon Knowledge Acquired by Middle school students)というものですが、2機のグレイル探査機の双方に搭載されています。今回、生徒グループたちからの60以上の撮像リクエストに応じて、3月15〜17日に撮影を実施、20日にそのデータが地球に送信されました。

このムーンカム・プロジェクトは、アメリカ初の女性宇宙飛行士であるサリー・ライドさんが率いる科学教育振興団体、サリーライド・サイエンスによって主導され、カメラ操作はカリフォルニア大学サンディエゴ校の大学生たちが(これも衛星の運用を学ぶという教育目的で)行います。全米52州(いわゆる50州に加え、ワシントン特別区とプエルトリコ自治区)、2700の学校が参加しています。

「単に面白いことをやっている、というふうにみえるかも知れないが、子供たちの将来にインパクトを与えるような大きな体験になるだろう。生徒たちはムーカムでの体験に本当にわくわくしており、やがてその刺激は科学技術へのわくわく感という形で残っていくはずだ」と、サリー・ライドさんは語っています。

また、このグレイルの主任科学者で、マサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、「ムーンカムは、「もし普通の写真が1000の言葉に匹敵するような価値があるとすれば、月軌道上からの写真は、教室全体の生徒たちに科学技術の学位を与えるくらいの価値がある」という前提に基づいている。ムーンカムを通して、私たちは次世代の科学者、技術者を鼓舞するという目的を持っている。こんなふうな幸先のよいスタートは大変うれしいことだ。」と、初画像取得の喜びを語っています。

・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/mar/HQ_12-093_MoonKam.html

・ムーンカム画像を見ることができるウェブサイト (カリフォルニア大学サンディエゴ校: 英語)
  http://images.moonkam.ucsd.edu

・ムーンカムのウェブサイト (カリフォルニア大学サンディエゴ校: 英語)
  http://moonkam.ucsd.edu

・グレイル (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/history/GRAIL/
Category: ドーン
Posted by: moonstation
ドーンがベスタに到着して1年近く経ちますが、このほどNASAから、探査の新しい情報が発表されました。驚くべきことに、ベスタにはこれまで小惑星には発見されていなかったような種類の地形も存在することが明らかになりました。

ベスタは小惑星帯に属する大きな小惑星であり、また肉眼で地球から見ることができる唯一の小惑星でもあります。それだけ明るい天体だ、ということなのですが、今回ドーンの探査により、ベスタの表面の中には他の領域の2倍も明るい場所が存在することがわかりました。おそらくこれは、ベスタの進化の歴史と大きな関係があるものと思われます。

メリーランド大学カレッジパーク校の研究者でドーン計画に参画している科学者であるジン・ヤン・リー氏は、「この明るい物質はベスタ起源と考えられ、おそらくはベスタが誕生してからほとんど変化していない。この明るい物質がどのような鉱物から構成されており、またベスタの表面がどのようにして現在のようになったのか、それこそが私たちがいまもっとも知りたいことである。」と語っています。

この明るい領域はベスタの全般にわたって分布しており、中でもクレーターの内部、そして周辺に最も広く分布しています。その領域は数百メートルから20キロほどまでと幅があります。ベスタに衝突した物質がこの領域に露出し、また広がっているようにみえます。この衝突過程で、明るい物質と表面のより暗い物質とが混じり合ったようです。

ベスタが以前ハッブル宇宙望遠鏡により観測された際には、確かに明るい物質が分布していることは発見していましたが、今回ドーン探査機により直接観測されるまでは、これほど広くまたはっきりと分布しているということは科学者たちも予想していませんでした。一方、ベスタ表面の暗い物質はダークグレー(濃い灰色)であったり、あるいは茶色や赤いものもあります。衝突クレーターの周りに小さくはっきりとした模様として現れることもあります。一方でかなり大きな領域としてみつけられる場合もあります。特に、衝突クレーターの周りを囲むようにして現れる場合もあり、科学者たちはこの模様のことを「雪だるま」と名付けました。

アリゾナ州立大学タンパ校のドーン計画の科学者デビッド・ウイリアムズ氏は、「驚いたのは、この暗い物質がランダムに分布しているわけではないということだ。おそらく、地下の地質プロセスがこの分布を決めているのだろう。」と推測しています。

この暗い物質は衝突、及びその衝突のあとの過程と関係していると考えられます。科学者たちは、炭素質に富む隕石が低速で衝突することで、その物質が飛び散ることなく表面に分布したと考えています。

一方で、高速で衝突した小惑星もありそうです。こういった小惑星の衝突は、ベスタ表面の物質を溶かし、その結果として玄武岩質の溶岩を生成したと考えられます。これにより、既にあった表面はさらに暗くなった可能性があります。このようにしてできた溶融れき塊は、クレーターの壁や床など、あるいは丘や尾根などに分布しています。また、クレーターから放出された物質である「エジェクタ」と呼ばれる明るい物質の下にも分布しています。

ベスタの暗い物質から、この小惑星は小惑星帯、あるいはもっと遠い場所の古い物質がまだ残されており、おそらく太陽系誕生当時の物質も存在している可能性があります。

ドーン計画の科学者で、ジョンズホプキンス大学応用物理研究所に所属するブレット・デネビ氏は、「過去に起きた衝突のいくつかはかなり大きなもので、そのため表面を溶かしてしまったようだ。ドーン探査機の撮像能力で、この溶融の跡をみつけることができた。このような溶融は予想はされていたが、小惑星ではこれまでみつかってこなかった。」と述べています。

・NASAのプレスリリース (英語)
  http://www.nasa.gov/home/hqnews/2012/mar/HQ_12-091_Dawn_Vesta_Features.html

・ドーン (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/pex_world/Dawn/
Posted by: moonstation
水星探査機メッセンジャーは、1年間にわたる基本探査期間をこの3月17日に終了しました。この期間に探査機が撮影した写真は合計10万枚以上にも達しました。そして、探査機がはるか彼方の水星から送ってきた科学データは、この天体の地形や構造、内部構造(とりわけ中心部のコアについて)、極地域にあるとされる永久影の領域などについて、多くの情報をもたらしてくれました。

これらの発見は、本日(3月21日)に発行される科学雑誌サイエンス・エクスプレス(電子版)に2本の論文が掲載されているほか、現在テキサス州ザ・ウッドランズ(ヒューストンの北隣の街)で開催されている、世界最大の月・惑星科学に関する国際会議、月惑星科学会議(LPSC)においても、合計57本の発表が行われます。この会議の席では、成果発表に関する記者会見のほか、来年3月まで予定されている延長探査期間についての基本的な考え方についても発表する予定です。

メッセンジャーの主任研究者であるカーネギー研究所のシーン・ソロモン教授は、「メッセンジャー探査の最初の1年は大きな驚きでいっぱいだった。水星が驚くほど活発な磁気圏や外圏を持つこと、またその表面や内部に意外なほど揮発性物質が含まれていることなど、私たちが数年前に考えていたこの天体の知識とはまったく違う姿がいま、明らかになっている。今回みつかった新発見の料、そしてその幅広さは、私たちがこれまでに発見した科学的成果がいかに衝撃的なものであったかを示すものになるだろう。」と語っています。

■水星の風景
水星レーザー高度計(MLA)の観測により、これまでとは比べものにならないほど高精度な、水星の北半球の地形が明らかになりました。同時に、地形の傾斜や荒さなどについての情報も得ることができました。メッセンジャーは極軌道に近い楕円軌道をとっており、このため、MLAの水平方向での測定領域は15〜100メートルほどとなっており、また、測定領域は約400メートルほどの間隔となっています。

測定によると、標高差は火星や月などと比べると非常に小さいということです。この発見を論文として発表しているマサチューセッツ工科大学のマリア・ズーバー教授は、もっともはっきりした地形は、北半球の高緯度地域にある低地で、火山性の平原が広がっているということです。この平原の中に、おそらくは火山性と思われる高みがあるとのことです。

水星の中緯度地域には、水星の中でももっとも目立つ地形である、直径1500キロメートルにも及ぶ巨大なカロリス盆地があります。このカロリス盆地について、MLAの詳細な観測の結果、盆地内部の一部は周辺の盆地の縁の領域より標高が高いことが明らかになりました。ズーバー教授によると、「このカロリス盆地の一部の隆起領域は、準線形の隆起領域であり、水星の中緯度地域のほぼ半分の領域に広がっている。全体的に考えると、こういった地形の特徴は非常に長波長の(編集長注: 地形の変動がゆるい尺度になっている)変化であり、これは水星の地質過程の中で最も早い時期に起きたものと推測される。」とのことです。

■水星のコア
今回の探査では、地形データ、及びあらかじめ得られていた水星の自転速度データを使って、はじめて水星の詳細な重力場モデルを作り上げることに成功しました。このモデルにより、水星の内部構造、例えば地殻の厚さや、コアの大きさ、及びその状態、さらには水星全体の熱史(平たくいえば、天体がどのように冷えてきたかの歴史)を明らかにすることができます。

この推定から、水星のコアは、惑星の半径に対しておおよそ85パーセントもの大きさがあることがわかりました。もともと水星はコアが大きな天体であることはわかっていましたが、今回の内部構造モデルでは、その推定よりもコアがさらに大きいことが明らかにされたのです。
科学者たちはこれまで、水星は小さい天体なので、コアも含めて天体内部は全体に冷えて、固体になっていると考えてきました。しかし、重力場モデルに加え、地球からのレーダーによる探査によって、水星自体にも何らかの動きがあることがわかりました。このことは、水星に磁場が存在する(つまり、内部に溶けたコアが存在することを示唆する)ことからも確かめられています。おそらく、水星のコアは少なくとも部分的に溶けているのでしょう。

水星のコアの大きさ、そしてその状態は、科学者にとって長年の謎でした。それを知るためには、長波長の重力場変動を調べることが必要でした。今回の探査で、このデータから明らかにされた水星の内部が、これまで考えられてきたものとはだいぶ異なることがわかってきました。(編集長注: 長波長の変動とは、距離的な意味で長いスケールの重力場の変動のことです。短距離で現れる変動とは異なり、こういう長距離の重力場の変動は、天体内部の構造に関係していると考えられています。)
その結果、水星のコアは他の地球型天体とはおよそ異なる構造をもっていることがわかってきました。今回の論文の共著者の1人である、ケース・ウェスタン・リザーブ大学のスティーブン・ホークII世氏は、「水星の内部構造とは明らかに地球のものとは異なる。地球の場合には固体の内核の外に液体の外核があるという二層構造になっているが、水星の場合、上から順番に、まずケイ酸塩(通常の岩石)からなる地殻及びマントル、そしてその下に硫化鉄を主成分とする外核、さらに液体の核、そしていちばん内側は固体の核、という五層構造になっている。」と述べています。

このような発見は、水星の磁場がどのようにして生まれているのか、また水星が熱的にどのように進化を遂げてきたのか(言い換えれば、どのように冷えてきたのか)を明らかにする重要な鍵となるでしょう。

■極地域の永久影
メッセンジャーの探査目標の1つに、地上からのレーダー観測で発見された、水星の極地域の反射率が高い場所の正体を探ることがあります。極地域にレーダーで明るく光る(すなわち、反射率が高い)場所がみつかって以来、科学者はその正体を、氷(水の氷)の堆積物だと考えてきました。

これまで、このレーダー高反射率の領域の画像はなかったため、その正体はわかっていませんでした。今回、メッセンジャーに搭載された水星撮像システム(MDIS)が撮影した画像から、水星の南極地域にある高反射率地点は全て永久影の領域にあり、北極側の高反射率地域についても日陰域の中にあることがわかりました。これは、これまで考えられてきた氷であるという仮説とも整合性がある結果といえます。
(編集長注: 永久影とは、クレーターの壁などによって太陽光が遮られることによって、主に極地域にできる影、及びその領域のことを指します。極地域では太陽光は地面すれすれの高さで入射してくるので、クレーターの壁のような低い高さの障害物でも太陽の光を通すことができません。また、クレーターの壁は円状なので、太陽光がどの方向から射してきても、クレーター内部には光が射さない領域ができる場合があります。このような領域を永久影、あるいは永久影領域と呼びます。月でも極地域のクレーターにはこのような領域があり、同様に氷が存在するとされていますが、こちらの方は依然論争が続いています。)

ただ、今回のこの結果だけをもって、この堆積物、さらにはレーダーで明るくみえる物質が水の氷であると断定することはできません。実際、明るい物質は、氷だと考えるとかなり存在が困難な場所にも分布しています。その点については、例えば氷の上に薄い土の層があり、断熱材の役割を果たして、氷の層を低温に保っているという考え方もあります。
現在、MDISのデータに加え、水星レーザー高度計のデータも組み合わせた詳細な解析が進行中であり、この堆積物についてより詳細な結果が今後明らかにできると期待されます。

■延長探査が決定
メッセンジャーの2年目の延長探査期間は、いま述べてきたような成果をもとにスタートします。メッセンジャーの探査科学者であるジョンズホプキンス大学応用物理学研究所のラルフ・マクナット・ジュニア氏は、「延長探査は、単に基本探査期間と同じ周回をそのまま続けるようなミッションとはならない。太陽活動がより活発になる時期に磁場及び外圏をより詳細に調査し、探査機の高度を下げて地表の様子をより詳しく調べ、さらにいくつか興味深いポイントを集中的に調べることになるだろう。」と述べています。

・メッセンジャーチームの記事 (英語)
  http://messenger.jhuapl.edu/news_room/details.php?id=198

・メッセンジャー (月探査情報ステーション)
  http://moonstation.jp/ja/pex_world/MESSENGER/