「月の科学」の第一歩として、
すでに分かっている「月」に関するデータをまとめてみました。

月の位置 月は、太陽系の第3惑星、地球の唯一の天然衛星です。
地球からは約38万キロメートル(平均距離)離れた距離にあります。いま、太陽の直径を60センチメートルほどの球と考えると、太陽系の惑星のうちいちばん内側にある水星は、中心の球の周りを平均距離25メートルで回っている小さな粒となります。 太陽系2番めの惑星である金星は約47メートル離れた豆粒ほどの大きさになります。そして地球は約65メートルのところを回っています。月はその地球から16センチメートル離れたところを地球を中心に回っていることになります。
月の大きさ 月の直径は約3476キロメートルで、地球の直径の約4分の1になります。質量で比較すると、地球の約81分の1です。
これは、例えば土星の最大の衛星、タイタンについてみてみると、タイタンの直径が土星の約20分の1、質量は約4700分の1に過ぎません。
このことと比べると、地球の大きさに対して、衛星としての月は相当に大きいことがわかります。
この地球と月との大きさの不釣り合いは月の起源と密接に関連していると考えられており、いまだに説けていない月の謎の一つでもあります。
月の特徴 月は公転周期と自転周期が同じ(約27.32日)なので、常に地球に同じ側を向けています。この面を月の表側(Near side)といいます。
月の表側はその表面積の約35パーセントが暗く見えます。この部分は「海」と呼ばれており、大昔、隕石が衝突した後に、月の内部から溶岩がしみ出してつくられた地形です。地球から普段は見えない面を月の裏側(Far side)といいます。
裏側には海がほとんどみられません。これらは、約38~32億年前、月の形成初期に激しい隕石落下が収まったあと、地下のマグマ層から溶岩が湧き出し、 月の低地に流れ込むことによって、それまであったクレーターを消し去る、というような過程を経たためと考えられています。
また、月の裏側は「高地」と呼ばれる険しい地形が多く存在することが分かっています。これらは「海」が形成されたよりも古い、44~40億年前の月が形成されて間もない頃に、 隕石の衝突によって生じたものと考えられています。
月の環境 月の一日は29.53地球日で、地球の約15日にわたる昼と夜が交互にやってきます。
月にはほとんど大気がなく、そのために昼夜の温度差は非常に大きくなります。月の赤道付近の観測では、昼間で摂氏約110度、夜の場合摂氏約マイナス170度であり、 温度差は200度以上もあります。
月の地震(月震)は地球のように大きなものはほとんど発生しません。
アポロ計画によって設置された地震計ネットワークの作動期間(1969年~1977年)において得られた月震計の8年間の観測データによれば、年平均500回ほどの月震が観測されましたが、 ほとんどがマグニチュード3以下でした。
その意味では、月面は地球上より安定した地盤であるといえるでしょう。
月の表面は、レゴリスという大変細かい砂で覆われています。レゴリスは、月に隕石が衝突した際に岩石が溶けて飛び散ったものが冷えて固まってできたと考えられています。
これまでの
月探査
1950年代終盤から、アメリカと旧ソ連による月探査衛星の打ち上げが活発に行われました。その後、アメリカとソ連が、人間を月に送り込む競争を繰り広げました。最終的に1969~72年に行われたアメリカのアポロ計画ではじめて月に人類が降り立ち、地質調査を行い、月の石や砂のサンプルを持ち帰りました。
その後しばらく月探査はありませんでしたが、1994年になってアメリカがクレメンタイン衛星を打ち上げました。この探査機の観測により、月の極地域に水(氷)が存在する可能性が示唆されました。
その後、1998年に打上げられたルナープロスペクター衛星は、極地方で氷の存在を特徴付けるデータを得ました。
2000年代に入ってからは世界各国による月探査が活発化し、日本、中国、インド、ヨーロッパ、アメリカが月周回探査機を打ち上げました。
2010年代は着陸探査が主流となり、中国は2013年に嫦娥3号、2018年に嫦娥4号を月に着陸させました。
2020年には中国は嫦娥5号により、無人での月からのサンプルリターンに成功しました。2023年にはインドがチャンドラヤーン3で月面着陸に成功、日本も2024年、SLIMで初の月面軟着陸に成功しました。

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