月面基地の居住性

月面基地想像図 滞在・居住のための施設は、軽量で丈夫な素材で作られた直径5m×長さ15mほどの円筒形のモジュールになる。シャトルに搭載し易い形状のこのモジュールを1つずつ打ち上げ、月面上でタテヨコに連結し段階的に基地の規模を大きくしていくわけだ。
また、モジュールの大部分は地中に埋め込まれる。安定のためだけでなく、月の砂によって、太陽から降り注ぐ宇宙線から人体をガードする意味がある。

モジュールの役目は、居住・実験・生産などにわけられるだろう。居住用のモジュールにはベッドルームのある個室、トイレ、バスルームなども完備。個室寝台列車の趣だ。ただし宇宙線の影響を避けるために、窓は厚いガラスを何重にもした、かなり小さなものに限られるだろう。月の地平線に浮かぶ地球、という景色を眺めるのは少し難しいかも知れない。
小さなモジュールを連結するという方法には、地球からの運搬のしやすさのほかに、安全面での有利性がある。月では台風や洪水、金属の腐食といった危険はないが、実験中の事故や火災、隕石の落下などは十分に考えられる。大規模な建物で事故が起これば、建物すべてを廃棄しなければならないケースも生じるだろうが、モジュール連結方式なら被災した部分だけを隔離(モジュール間にあるハッチを締め切る)して、そこだけを切り離してしまえばすむわけだ。
もちろんモジュールの内部は、人間が呼吸するのに適した空気で満たされ、1気圧に保たれることになる。

住むために必要なもの

モジュール内の与圧と生活のためには、エネルギー、酸素、食料、そして水が不可欠だ。これらは主として地球から運搬・補給されることになるが、実験・研究もかねて、月面上での生産とリサイクルも考えられる。

エネルギーは太陽光を利用し、酸素は月面に存在する酸化物質を分解することで作ることができる。もやしなどの植物の栽培、魚の飼育も比較的簡単だ。問題は、水。月の極地域に氷を発見というニュースが伝えられたが、いまだ確実とはいえない。月面には水素がほとんど存在しないため、その希薄な水素を集めて水を作るにしろ、地球から液体水素を運ぶにしろ、かなり効率の悪い方法を取らざるを得ないのだ。
今後の技術革新に期待したい要素といえる。

月で人間が行うこと

月面基地に滞在する人員は、どのような人たちになるだろうか。基地建設はかなり規模の大きな計画だから、国際協力の体制を取り、送り込むスタッフも国際的になるだろう。
研究者、技術者、科学者、それらをまとめるリーダー格の人物。滞在が長期化するようなら、医師や調理師の存在も欠かせないし、広報担当も必要だろう。
彼らは、研究や実験、建設、保守・管理など、それぞれの役割を果たしながら月で過ごし、数か月後に到着する交代人員を待つ。南極基地を思い浮かべていただければいいだろう。

参考文献:岩田 勉著
2020年 日本人の月移住計画は もう始まっている

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このページは、1997年4月から1998年3月まで宇宙開発事業団(当時)の機関紙「NASDA NEWS」に連載された、「月がふるさとになる日」を移設したものです。記述内容に当時の状況を反映したものがありますが、オリジナル性を重視し、そのまま掲載しています。