これまで情報がほとんどといっていいほどなかった「嫦娥6号」の名前がついに出てきました。

中国国家航天局の呉艶華副局長が先月27日に記者会見し、中国の第3次五カ年計画(2016〜2020年)の期間内に、中国の月探査計画を第4期に進めると発表しました。この期間内に嫦娥6号を打ち上げるというのです。

人民網日本語版の記事から要点を抜き出すと、

  • 2017年中にサンプルリターン機「嫦娥5号」を打ち上げる
  • 2018年には着陸機「嫦娥4号」を打ち上げる。それと共に、月のラグランジュ点(L2)に通信衛星を打ち上げる(おそらくこれは、月の裏側からも地球への通信が行えることを狙っているのではないかと思われます)
  • 2020年頃にサンプルリターン機「嫦娥6号」を打ち上げる。中国の月探査の例に倣い、これは嫦娥5号の予備機(中国の月探査は必ず2機体制で、1機を予備にします。例えば上記の嫦娥4号はそもそも嫦娥3号の予備機です)で、月の裏側からのサンプルリターンを目指す(おそらく、上の項で述べたL2の通信衛星が役立つのでしょう)

というものです。記事自体は短いのですが、実に野心的な月探査計画です。

嫦娥4号の打ち上げは、おそらくは嫦娥6号における月の裏側(当然、地球からはみることもできませんし、直接通信もできません)に備えたリハーサルのような形になるのでしょう。嫦娥4号で月の裏側との通信や時間差のある環境での探査機運用に習熟したあと、嫦娥6号で、これまた史上初となる月の裏側からのサンプルリターンに挑むという形になりそうです。中国は月探査でも、特に予備機を打ち上げる際にはかなりリスクの多い探査を積極的に実行しています。例えば嫦娥2号は月を周回したあと深宇宙探査に挑み、月から実に1億キロも離れたところを現在も飛行しています。このような探査によって、新しい技術を積極的に得るという姿勢なのでしょう。

さらに記事では、「今後5年と10年に、ロボットを中心とする月の南極・北極の探査を想定」していると述べています。これはおそらく5年〜10年後ではないかと思いますが、アメリカも月の南極探査を目指しているだけに、これはアメリカと正面からぶつかる探査になる可能性があります。

おそらく、無人探査はこの4期までで、そのあとは月の有人探査を目指す第5期に入るのではないかと想定されます。