「便りがないのはよい知らせ」ということがもありますが、こと宇宙開発では、そのことがより強くいえるのではないかと思います。
中国が2014年12月に打ち上げた月着陸機、嫦娥3号が、このほど月面における最長稼働時間記録を更新した、というニュースが、人民網日本語版に掲載されました。なお現記事は人民日報です。

嫦娥3号着陸機から撮影したローバー「玉兎」

嫦娥3号着陸機から撮影したローバー「玉兎」。出典: http://news.xinhuanet.com/english/photo/2013-12/15/c_132968376.htm

さて、人民網日本語版の記事では、嫦娥3号は「月の33日目の夜に入った」とのことです。月の夜は光が当たらず、最低でマイナス100度以下にもなるため、探査機を動作させるわけにはいきません。そのため、探査機は「スリープ状態」、つまり最低限の機能だけを維持し、電力の消費を最小限にして生き延びることになります(冬眠といってもいいかも知れません)。
さて、では「33日しか生き延びていないのか」というとそういうわけではありません。月の夜は地球の14日半、昼も同じく14日半あります。つまり、嫦娥3号は33×29=957日にもわたって月の上で活動を続けていることになります。
(もちろん、数値には若干のズレがあることはご承知おきください。)
2013年12月に月に着陸してからの日数をカウントするとやはりだいたい上で述べたくらいの数値になります。
これは明らかに、月面で活動を続けた探査機としては最長日数であることは間違いないでしょう。

記事によると、嫦娥3号はこれまで、月の表面及び浅い地下の部分の探査を行い、搭載している地下探査用レーダーによって、深さ330メートル部分までの構造を明らかにしたとのことです。また、搭載されている月面天文台実証用の機器ではすでに18万7000枚以上もの写真を撮影しています。
これらの成果は、「ネイチャー』や『サイエンス』といった第一級の科学雑誌などにも掲載され、これまでに発行された嫦娥3号関連の論文は100を超えると、人民網日本語版は述べています。

こうなりますと、もう間もなく月面での活動日数が1000日を超える日もやって来るのではないでしょうか。
嫦娥3号が果たしてどこまで月面での活動時間を伸ばせるか、それは将来的に月面で長時間働ける機器を作る上でも大いに役立つノウハウを提供してくれます。嫦娥3号の健闘を期待するとともに、それらの成果が論文として出版され、世界の役に立つことを期待したいと思います。