最近の中国の宇宙開発の勢いは目を見張るものがありますが、それを象徴するような記事が、3月4日付のチャイナ・デイリー紙に掲載されていました。それによりますと、中国は「少なくとも1回の」小惑星探査を2025年までに計画していると、中国空間技術科学院(CAST: Chinese Academy of Science Technology)の深宇宙探査部門のYe Peijian氏が(漢字記述不明)述べたとのことです。
Ye氏によると、この小惑星探査は中国初の独自火星探査(2020年に打ち上げ予定)のあと、2025年までに実施されるとのことです。詳細(スケジュールや目標の小惑星など)についてはまだ決まっていないものの、それらについて現在検討を行っているとのことでした。

また、小惑星探査の目的として、小惑星の資源が人類にとって有用だからだ、ということを述べています。これは重要なことです。
月探査情報ステーションでも、アメリカを中心とした小惑星の(民間)資源開発についてずっと追いかけてきていますが、中国でも同じような動きがあるということも念頭に置かなければならなくなってきました。中国は、特に月探査については「エネルギー源確保(ヘリウム3)のため」と公言していますし、もともと宇宙開発は資源開発であるという側面を持っていたことは間違いありませんが、中国が小惑星の資源開発に乗り込んでくるとなると、アメリカの民間企業にとっては強力なライバルとなるでしょう。

さらに記事内では興味深いことに、木星探査についての基本的な検討も行っているということでした。インドが月、火星探査の次の目標を金星に定めている可能性が高いのに対し、中国はストレートに外(月→火星→木星)と進んでいくようです。
12月に公開された政府白書では、中国国家航天局は2017年〜2021年にかけて、木星及び小惑星の探査についての基礎的な検討、及び要素技術の開発を行うとしています。この場合、小惑星はいわゆる火星と木星の間の「小惑星帯」であるという可能性もありますが、記事ではその点には触れていません。

また、中国科学アカデミー会員で、南京の紫金山天文台の Ji Jianghui 氏は(同じく漢字読み不明)、中国の最初の小惑星探査は、フライバイ方(そばを通り過ぎる形)になるのではないかと、新華社のインタビューに対して述べています。この形は、嫦娥2号が小惑星トータティスのそばを通り過ぎた際に写真を撮影した探査と同様ですから、一応「実績」はあることにはなります。
おそらく、中国は最初は堅実にフライバイでの小惑星探査を目指し、その後ある程度まで技術が成熟してきた時点で着陸、さらにはサンプルリターンまでを行うのではないかと思います。サンプルリターンについては、現在開発中の月サンプルリターン探査機「嫦娥5号」の成否が大きく影響するのではないでしょうか。

大変注目すべき情報で、こちらは今後も注視していきたいと思います。